行政事件訴訟法で各訴えの規定を準用するものしないもの

今年の予備試験短答式公法系

〔第21問〕(配点:3)
行政事件訴訟法上の仮の救済に関する次のアからエまでの各記述について,同法に照らし,それ
ぞれ正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№4
5]から[№48])
ア.仮の差止めの申立ては,処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を
避けるため緊急の必要がある場合にされるものであり,本案訴訟を提起せずに申し立てるこ
とができる。[№45]
イ.仮の差止めの申立てがあった場合には,内閣総理大臣は,裁判所に対し,異議を述べること
ができるが,仮の差止めを認める決定があった後には,もはやこれを述べることができない。
[№46]
ウ.執行停止を認める決定は,第三者に対しても効力を有するが,仮の差止め及び仮の義務付け
を認める決定は,いずれも第三者に対しては効力を有しない。[№47]
エ.裁判所がした仮の義務付けを認める決定が確定し,当該決定に基づいて行政庁が処分をした
場合でも,裁判所は,当該決定確定後に事情が変更したときは,当該決定における相手方の
申立てにより,当該決定を取り消すことができる。[№48]

準用という言葉は直接書かれていないが準用規定を知らないと解けない。他にも同様の問題ががあったので準用関連の条文を確認しよう。
まずは行政事件訴訟法に規定されているもので、本問の仮の救済についてみる。
と思ったが38条に準用の総則的なものが置かれているので、こちらをみないと話にならない。個別の条文に準用が規定されていなくても38条で規定されている場合があるからである。

38条では取消訴訟の規定を他の抗告訴訟に準用
41条では抗告訴訟の規定を当事者訴訟に準用
43条では抗告訴訟、当事者訴訟の規定を民衆訴訟及び機関訴訟に準用

ア×イ×ウ〇エ〇

取消訴訟の規定が共通して準用されるもの

取消訴訟以外への準用規定 無効確認 準用規定 参照

準用されないものまとめ

8条 審査請求との関係
9条 原告適格
10条 理由の制限
14条 出訴期間
15条 被告を誤った場合の救済
20条 処分取り消しとその裁決の取り消しの併合
25条 執行停止
26条 執行停止の取り消し
27条 総理大臣の異議
28条 執行停止の管轄
29条 執行停止規定の準用
30条 裁量処分の取り消し
31条 事情判決
32条 判決の効力

特に準用規定を置いているもの無効と不作為の違法確認に準用されるもの

また、38条2項以下で個別の準用が規定されているので確認する。

無効確認と抗告訴訟が提起できる場合について10②取消理由の制限
無効確認と抗告訴訟を併合提起する場合について20請求の追加的併合
無効確認の訴えについて23の2釈明処分,25~29執行停止関係、32②※②のみが準用されているが要するに第三者項があるという理解でいいようだ。
不作為の違法確認について8、10②

その他個別に準用するもの

執行停止などに準用されるもの

32条取消判決の第三者効は32②で執行停止の決定又はこれを取り消す決定に準用
33条処分又は裁決の取り消し判決は行政庁を拘束する規定は32④で執行停止の決定に準用

義務付けの訴えと差止の訴えに準用されるもの

9条②の法律上の利益の有無の判断は37の2④で義務付けの訴え、37の4④で差止の訴えに準用

仮の救済に準用されるもの

37の5④ 以下仮の義務付け、仮の差止めに準用
 主に執行停止関連が準用されている
25
 ⑤
 ⑥
 ⑦
 ⑧
26(事情変更による執行停止の取消し)
27(内閣総理大臣の異議)
28(執行停止等の管轄裁判所)
33① 行政庁その他の関係行政庁を拘束

当事者訴訟に準用されるもの

以下41①で当事者訴訟に準用 39、40は形式的当事者訴訟のみ適用

23(行政庁の訴訟参加)
24(職権証拠調べ)
33①行政庁その他の関係行政庁を拘束
35(訴訟費用の裁判の効力)

民衆訴訟、機関訴訟に準用されるもの

処分又は裁決の取り消しを求めるもの

43①で民衆訴訟または機関訴訟で処分又は裁決の取り消しを求めるものに準用
9、10①を除き取消訴訟に関する規定
9(原告適格)除外
10①(取消しの理由の制限)自己の法律上の利益 除外

処分又は裁決の無効の確認を求めるもの

43②で民衆訴訟、機関訴訟で処分又は裁決の無効の確認を求めるものに準用
36を除き無効等確認の訴えに関する規定
36(無効等確認の訴えの原告適格)除外

上記以外の民衆訴訟、機関訴訟

43③で上記以外の民衆訴訟、機関訴訟に準用
39,40①を除き当事者訴訟に関する規定
39(出訴の通知)除外
40①(出訴期間の定めがある当事者訴訟)期間経過後の出訴除外

短答問題への当てはめ

これを問題についてみると
肢イは仮の差止めに対する執行停止はそもそも準用されていないので×となる。
肢ウは第三者効があるかないかという問題で、執行停止については32条2項で準用されているが、仮の救済については32条が準用されていないので〇。
肢エも仮の救済は26条事情変更を準用しているので〇となる。
さて、肢アであるが、これは準用関連の話ではないが、37の5①及び②初めの部分で義務付けや差止めの訴えの提起があった場合としているので仮の救済単独で提起できるものではないと読み取れる。従って×となる。
結果、ウとエを誤答し華麗にゼロ点だろう(笑)

仮の救済が準用している規定
仮の救済については個別に37の5④で準用規定が置かれている。
25⑤~⑧、26~28、33①
準用されていなかった執行停止の大部分が準用されている点に注意が必要。
第三者効は準用されていないが関係行政庁の拘束力は準用されている。この点38条で33条も規定されており、どういう位置づけなのか分からないが。

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