接見指定についての勉強をしていて準抗告ってなんだっけ?
覚えていない(いや、しらないだけか)。民訴にも準抗告あったよなとか完全に混乱をきたす予備試験おじさん(笑)
以前、保釈請求却下の場合、抗告なのか準抗告なのかという問題をみて、司法試験ってこんなくだらない問題だすんだなと思ったことがあった。
今なら言える、これは単純知識問題のようにみえてそうではなく、刑訴に対する基本的考え方が身についているかどうかを聞いているんだと。
しかし、更に勉強を進めていたら、やっぱり単純知識問題だったことを知っておじさん失笑である。
不服申し立て
抗告419 裁判所の決定に対する不服申し立て
準抗告
〇429裁判官の裁判(命令)に対する不服 429で列挙
〇430検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に対する不服
(430は注意が必要だ。捜査機関の処分に対する不服申し立てだが、裁判所に対して申し立てる。
抗告は裁判所に対して、準抗告は裁判官、及び捜査機関の処分に対しての不服、と覚えてしまうと必ず間違う事必定(笑)
保釈を請求して許可するかしないかは裁判所が判断するので、それについての不服申し立ては抗告準抗告になる。
第一回公判期日までは裁判官が行うので準抗告。それ以降は裁判所なので抗告らしい(笑)
保釈請求についての不服申し立ては抗告か準抗告かという問題をなぜ出題するのか?
この問題原理原則を覚えていれば現場思考で解けそうな問題である。
429条を記憶し理解しており、第一回公判期日までは勾留に関しては裁判官が処分を行うと記憶し理解していれば解けるから、って結局覚えていなければしょうがないじゃないか(笑)
要するに紛らわしいから出題しているに過ぎないだろう。抗告と準抗告の違いも準抗告は捜査機関の処分に対する不服申し立てとだけしか説明がない予備校も存在するくらいなのできちんと理解していない受験生も多そうではあるが。
覚えていなければ実務で困るかと言えば、保釈だから抗告かと裁判所に申し立てて、いやこれ準抗告だから裁判官ですね、とか言われたりしたら恥ずかしいだろって老婆心から出題しているのだろうか。
こんなもんは教えてもらえば済む話のような気もするが。
第二百八十条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
② 第百九十九条若しくは第二百十条の規定により逮捕され、又は現行犯人として逮捕された被疑者でまだ勾留されていないものについて第二百四条又は第二百五条の時間の制限内に公訴の提起があつた場合には、裁判官は、速やかに、被告事件を告げ、これに関する陳述を聴き、勾留状を発しないときは、直ちにその釈放を命じなければならない。
③ 前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
※勾留とは、勾留、勾留更新、接見交通の制限、勾留の取り消し、交流の執行停止、保釈、保釈の取り消し、保証金の没取、勾留執行停止の取り消し、移送の同意、勾留理由開示など勾留に関するすべての処分。
これに対して例えば被疑者に対する接見指定に対しての不服申し立てはどうか?
接見指定(39③は検察官が行うので、これに対する不服申し立ては準抗告になる。とは言え、検察官に対して申し立てるのではない。さて、では裁判所に対してか?裁判官に対して申し立てるのか?さすがにここまで細かい問題は出ていないようだが。第一回公判期日までは勾留に関する処分は裁判官なので裁判官に対してになりそうだが、430条には裁判所と規定されているので裁判所でいいようだ。いずれにしろ準抗告で間違いない。
しかし、81条では裁判所は職権で弁護人以外の者との接見を禁じることができると規定されているので、この場合の不服申し立ては抗告ということになる。
要するに裁判官、検察官の処分に対して不服がある場合を準抗告と呼んでいるが、その不服申し立てを行う機関は裁判所である。
ここで被疑者および被告人ついての接見交通権をまとめておこう。
接見交通権
弁護人との接見
被告人+被疑者 弁護人とは立会人なく接見できる 39①
被疑者に対しては弁護人であっても接見指定できる 39③ 被告人に対して接見指定できる規定はない
弁護人以外の者との接見
被告人は法令の範囲内で弁護人以外の者と接見できる 80
被告人と弁護人以外の者との接見は裁判所の職権又は検察官の請求により禁じることができる。81
注意が必要なのは被疑者段階では弁護人以外の者との接見については何ら規定がない点である。逆に言えば捜査機関の胸三寸か?
また、39③の被疑者段階での接見指定ができるものは「検察官、検察事務官又は司法警察職員」の三者であり、裁判所は入っていない。しかし、弁護人以外の者(81との接見禁止は請求するのは検察官のみ、禁止を行う主体は裁判所となっているので、この場合の不服申し立ては抗告になる。
一般抗告の許される通則規定
第四百十九条 抗告は、特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合の外、裁判所のした決定に対してこれをすることができる。但し、この法律に特別の定のある場合は、この限りでない。
第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
② 第四百二十条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。
③ 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
④ 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
⑤ 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。
第四百三十条 検察官又は検察事務官のした第三十九条第三項の処分又は押収若しくは押収物の還付に関する処分に不服がある者は、その検察官又は検察事務官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
② 司法警察職員のした前項の処分に不服がある者は、司法警察職員の職務執行地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所にその処分の取消又は変更を請求することができる。
③ 前二項の請求については、行政事件訴訟に関する法令の規定は、これを適用しない。
そもそも抗告と準抗告はなにがちがうのか?
一般抗告は決定に対する上訴裁判所への不服申し立て、すなわち上訴の一種。即時抗告と通常抗告がある。
一般抗告の抗告裁判所は高等裁判所になる。 条解刑訴P1101
準抗告は要するに上訴ではないということらしい。とは言え抗告審の規定が基本的に準用される(432)。
準抗告に2種類あるが、そのうち裁判官に対する準抗告が間違えやすいので問題に出題されやすいのかもしれない。
①忌避の申し立てを却下する裁判
②勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
③鑑定のため留置を命ずる裁判
④承認、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
⑤身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
429には上記の5つが列挙されているが、紛らわしいのは裁判所に対して行う場合と裁判官に対して行う場合が混在しており、まずここで混乱するのは裁判所に対しての場合は抗告になるのか?それとも列挙されているものはすべて準抗告でいいのか?という点である。この点、429にわざわざ裁判官として規定されているので特に裁判官が行う場合のみが準抗告ということである。※と言うか、例えば保釈は第一回公判期日までは裁判官が行うのでこの場合は準抗告になる。
通常抗告は実際はほとんどできない。
短答過去問
H18 〔第39問〕(配点:3)
次のアからオまでの場合における不服申立ての可否・方法について,それぞれ正しいものを後記
1から3までのうちから選びなさい (解答欄は,アからオの順に から ) 。 [№61] [№65]
ア. 被疑者甲は,任意同行後の取調べで犯行を自白して緊急逮捕され,逮捕状が発付されたが,
緊急逮捕に先行する任意同行の過程に違法があったことを理由に,逮捕状発付の取消しを求め
たい。[№61]
イ. 被疑者甲は,逮捕後,検察官の勾留請求に基づいて発付された勾留状により勾留されたが,
先行する逮捕手続に違法があったことを理由に,勾留状発付の取消しを求めたい。[№62]
ウ. 逮捕後の留置中に起訴され,起訴当日発付された勾留状により勾留された被告人甲は,逃亡
のおそれを認めた判断に誤りがあるとして,勾留状発付の取消しを求めたい。[№63]
エ. 被告人甲は,第1回公判期日後,保釈の請求をしたところ,請求が却下されたため,その取
消しと請求認容の裁判を求めたい。[№64]
オ. 被告人甲は 第1回公判期日後 逃亡のおそれがあるとして勾留状が発付され勾留されたが ,, ,
犯罪の嫌疑がないことを理由に,勾留状発付の取消しを求めたい。[№65]
1. 準抗告が可能である。
2. 抗告が可能である。
3. 現行法上不服申立ては許されない。
ア 逮捕に関する裁判には準抗告はそもそも許されない 判例通説
勾留に対しては犯罪の嫌疑がないことを理由として不服申し立てできない
ウ. 逮捕後の留置中に起訴され,起訴当日発付された勾留状により勾留された被告人甲は,逃亡
のおそれを認めた判断に誤りがあるとして,勾留状発付の取消しを求めたい。
公判前までは裁判官が処分を行うというのは刑訴の基本的なルールだそうです。ということは勾留に限らないということでしょうね。準抗告を申し立てることができる裁判官の処分は、原則として、初公判「前」の処分になります
H21 〔第28問〕(配点:2)
弁護人の権限に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1か
ら5までのうちどれか。(解答欄は,[№54])
ア.弁護人は,身体の拘束を受けている被疑者と立会人なくして接見することができるが,裁判
官からその接見を禁じられたときには,被疑者と接見することができない。
イ.弁護人は,裁判官が勾留されている被疑者の勾留の期間を延長する裁判をした場合,「やむを
得ない事由」がないことを理由として,準抗告をすることができる。
ウ.弁護人は,公判期日において,被告人が証拠調べを請求する意思がない証拠についても,そ
の証拠調べを請求することができる。
エ.弁護人は,あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情が
あるときは,第一回の公判期日前に限り,裁判官に押収の処分を請求することができる。
オ.弁護人は,勾留されている被告人の勾留の期間を更新した裁判所の決定に対して,被告人に
犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることができる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
コメント