混同

所有権と物権

第百七十九条 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
2 所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属したときは、当該他の権利は、消滅する。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。
3 前二項の規定は、占有権については、適用しない。

S43-7
肢2 B所有の土地にAが抵当権を有しCがその後地上権を設定した後、Aがその土地の所有権を取得した場合Aの抵当権は消滅しない。

正解 〇

※追記 改めて解く
B土地 A抵当権 C地上権 AがB地を取得したため抵当権が消滅するのが原則 しかし、B地にはCの地上権が設定されているため179②及び①但しにより消滅しない

S47-6
肢2 甲所有の土地に、丁の債務を担保するために乙が第一順位の抵当権、丙が第二順位の抵当権をそれぞれ有している場合、乙が甲よりその土地を相続したときは乙の抵当権は消滅する。

肢4 2の場合において丙がその土地を買い受けたときは丙の抵当権は消滅する。

正解 肢2 × 肢4 〇

※追記 改めて解く
甲土地 1番抵当乙 2番抵当丙 乙が甲土地を取得  この時、1番抵当が消滅すると2番丙が1番になり乙は無担保で乙が不利益を被る。このような不公平を避けるため消滅しないと説明される。基本法コンメンタール物権P179
しかし、条文を形式的に適用すると、2番抵当丙が混同により消滅する場合でも甲地には他の制限物権である1番抵当が存在しているため但し書きにより消滅しないとなるはずであるがこの場合は消滅する。

混同により消滅するのは「他の物権」である。また、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的となっている場合は消滅しないとされる。従ってこの場合は消滅する2番抵当が第三者の権利の目的となっていれば消滅しないが、2番抵当自体は第三者の権利の目的となっていないので原則通り消滅する。
要するに1番抵当が消滅しないのは条文上の理由ではなく、あくまで不都合を回避するという実際上の利益衡量を考えているからのようである。
しかし、後述のように仮に1番抵当乙が債権者で甲が債務者で、乙が甲を相続した場合は債権と債務が同一人に帰したので1番抵当は消滅するらしい。

単なる物上保証人の場合
本問の場合は土地所有者は債務者ではないので債権と債務が混同しない。1番抵当は混同の例外ではなく、利益衡量によって消滅しないとされる。

債権者と債務者の場合
後述の場合、債務者保有の土地と1番抵当権者は債権者という関係。相続によって債権者と債務者が混同により債権が消滅するので1番抵当も消滅する。単なる物上保証人の場合は確かに1番抵当が消滅してしまうと1番抵当権者は2番抵当をダイレクトにうけて不利益を被るようにみえるので消滅しないのは理解できる。一方債権者と債務者が同一人に帰した場合に1番抵当は消滅する。この場合は1番抵当権者は不利益を被らないのか?不利益を被らないと考えているからこそ1番抵当は消滅するという結論なのだろう。しかし、1番抵当が消滅することによって2番抵当をダイレクトにうけるという状況は物上保証の場合と異ならないが。

よくよく考えてみると、物上保証の場合、利益衡量するまでもなく、土地そのものが2番抵当権の目的となっているので179①但し書きにそのまま該当する。
コンメンタールでも「その物が第三者の権利の目的となっている」場合の例として挙げられている。
もっともこのように考えると2番抵当が混同した場合であっても1番抵当がその物を目的としているため但し書きに該当して2番抵当が消滅しなくなってしまう。
そうすると債権者と債務者の場合であっても179①に該当して消滅しないが、債権債務が混同し債権は消滅する。520但し書きでは債権が第三者の権利の目的となっている場合は消滅しないと規定されているので本問の場合は消滅することになる。

債権と債務

第五百二十条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

H8-25
イ 債務者Aが所有する土地について,債権者Bが第1順位の,債権者Cが第2順位の抵当権の設定を受けている場合,BがAを単独で相続すると,Bの抵当権は消滅する。

正解 〇

物権の混同理論でいくと、所有者と他物権が同一になって混同により消滅するが、2番抵当権者がいるので消滅しないことになる。

しかし、債権と債務が同一になることにより被担保債権が消滅し、抵当権の付従性により抵当権は消滅する、ということらしい。年度別体系別択一過去問民法P642

もっとも、債権の混同理論でいくと同様に債権と債務が同一になって債権は消滅する。2番抵当権者がいることによって債権は消滅しないとも考えられるが、消滅する債権自体が2番抵当の目的になっているわけではない。
従って、抵当権の付従性ではなく混同によって消滅するとも考えられる。

※追記 改めて解く

債務者Aの土地  1番目 債権者B 2番目 債権者c
BがAを相続すると179条の混同によってBの抵当権は消滅するのが但し書きにより消滅しない
次に相続によって債権と債務が同一人に帰する。520条によってBの債権が消滅するのが原則。もっとも、但し書きによって当該債権が第三者の目的となっていれば消滅しないが、この事案では該当しない。
債権が消滅したため抵当権も消滅する。

※相続による場合は同一人に帰するが、単なる買受や譲受の場合は債権と債務が同一人に帰するわけではない点に注意が必要である。

S37-52
債務者甲所有の土地 債権者乙1番抵当 債権者丙2番抵当
肢3 丙が甲から土地を買った場合、丙の第二順位の抵当権は消滅する。

正解〇

短答問題

H11〔No.31〕 次のアからオまでの記述のうち,正しいものを2個組み合わせたものは,後記1か
ら5までのうちどれか。
ア Aが,B所有の甲土地の上に第2順位の抵当権を有し,Cが甲土地の上に第1順位の抵当権を有していた場合において,AがBから甲土地を買い受けた。このとき,Aの抵当権は消滅する。

イ Aが,BからB所有の甲土地を賃借してその上に乙建物を建て,Cが乙建物を賃借していた場合において,BがAから乙建物を甲土地の賃借権とともに買い受けた。このとき,Aの土地賃借権は消滅しない。

ウ AとCが,B所有の甲土地に賃借権を共有していた場合において,Aが甲土地を買い受けた。このときAの賃借権もCの賃借権も共に消滅しない。

エ Aが,B所有の甲土地の上に地上権を有している場合において,AがBから甲土地を買い受けた。このとき,Aの地上権は消滅し,BA間の売買契約が債務不履行により解除された場合においてもAの地上権は復活しない。

オ Aが,BからB所有の甲土地を賃借し,その上に乙建物を建てて所有権保存登記を済ませ,Cが乙建物について抵当権を設定していた場合において,AがBから甲土地を買い受けた。このとき,Aの賃借権は消滅する。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

正解はアウ

肢ア Aの抵当権は消滅するか ?
B所有甲地  C1番 A2番 Aが甲地を購入
消滅しない

肢イ Aの土地賃借権は消滅するか?
B所有甲地 A甲地賃借 乙建物建築 C乙建物賃借 Bが乙建物と甲地賃借権を購入
土地所有権と土地賃借権が混同 土地賃借権自体は第三者の権利の目的とはなっていないので消滅
しかし、土地賃借権は乙建物の賃借権のベースとなっているため土地賃借権は間接的に第三者の権利の目的となっているとも言える。

肢ウ ACの賃借権は消滅しないか?
B所有甲地 AC甲地賃借権共有 A甲地購入
土地所有権とA賃借権が混同 但し、「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは」消滅しない。
Aの賃借権はCとの共有なので消滅しない
条文では「その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるとき」となっているから土地がCの賃借権の目的となっているから消滅しないと読める。
この時消滅するものは制限物権=Aの賃借権であり、権利の目的となっているものはその制限物権ではなくその物=土地である。

肢エ Aの地上権は消滅し、債務不履行解除されても復活しないか?
B所有甲地 A甲地に地上権 A甲地購入
所有権と地上権が混同 債務不履行解除は遡及するから消滅した地上権は復活する

肢オ Aの甲地賃借権は消滅するか?
B所有甲地 A甲地賃借 乙建物建築 C乙建物に抵当権 Aが甲地を購入
所有権と賃借権が混同 消滅する賃借権は乙建物の目的と言えるため消滅しない

H30〔第36問〕(配点:2)
混同に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせた
ものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№36])

ア.債権質に供されている債権を債務者が相続したときは,当該債権は消滅する。消滅しない

イ.賃貸人たる地位と転借人たる地位とが同一人に帰属した場合,転貸借関係は消滅する。消滅しない

ウ.連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは,当該連帯債務者は弁済をしたものとみなされ,他の連帯債務者に対して負担部分の割合に応じて求償することができる。

エ.甲土地の賃借権が対抗要件を具備した後に,甲土地に抵当権が設定された場合において,甲土地の所有権と賃借権が同一人に帰属するに至ったときは,賃借権は消滅する。

オ.保証人が債権者を相続したときは,保証債務は消滅する。

1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ

正解は5 ウオ
イとエにしたのは内緒です。

ウは条文知識なので、イとオの判断がつけば正解できる。条文知識もないような常連落ちはそもそも話にならない(笑)
オもある意味条文知識。債権と債務が同一にはなっていない。が、これは判例問題。しかもよく読むと保証債務は消滅となっている(笑)。

エは判例?土地の抵当権より先に対抗要件を備えた借地権付建物の所有者は抵当権実行による競落人に対抗できる。基本法コンメンタール物権P35→消滅しない
※というより、土地を目的とする権利=抵当権があるため賃借権は消滅しない

H29〔第8問〕(配点:2)
物権の消滅等に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを
組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№8])
ア.AとBが甲土地を共有している場合において,Aがその共有持分を放棄したときは,Aの
共有持分はBに帰属する。
イ.A所有の甲土地には,第一順位の抵当権を有しているBと第二順位の抵当権を有している
Cがおり,他には抵当権者がいない場合,CがAから甲土地を譲り受けたときでもCの抵当
権は消滅しない。
ウ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,
甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,甲土地にCのための抵当権
が設定され,その旨の登記がされた場合には,その後にAが単独でBを相続したときでも,
その地上権は消滅しない。
エ.AとBは,建物所有目的で,CからC所有の甲土地を賃借した。その後,Cが死亡してA
が単独で甲土地を相続した場合,Aの賃借権は消滅しない。
オ.A所有の甲土地についてBが建物所有目的で地上権の設定を受けてその旨の登記がされ,
甲土地上にBが乙建物を建築して所有権保存登記がされた後に,乙建物にCのための抵当権
が設定され,その旨の登記がされた。その後,Bは,Aに対し,その地上権を放棄する旨の
意思表示をした。この抵当権が実行され,Dが乙建物を取得した場合,Dは,Aに対し,地
上権を主張することができない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ

正解3

H24〔第12問〕(配点:2)
地上権に関する次の1から5までの各記述のうち,正しいものはどれか。(解答欄は,[№12])
1.甲土地を所有するAがBのために甲土地を目的とする地上権を設定してその旨の登記がされ,
Bの地上権を目的とする抵当権が設定されていた場合でも,その後,BがAから甲土地の所有
権を取得したときは,地上権は消滅する。
2.甲土地を所有するAがB及びCのために甲土地を目的とする地上権を設定してその旨の登記
がされ,その地上権をB及びCが準共有している場合でも,その後,BがAから甲土地の所有
権を取得したときは,地上権は消滅する。
3.既に抵当権が設定されている甲土地を所有するAがBのために甲土地を目的とする地上権を
設定してその旨の登記がされた場合,その後,BがAから甲土地の所有権を取得したときは,
地上権は消滅する。
4.甲土地を所有するAがBのために甲土地を目的とする地上権を設定してその旨の登記がされ
たが,BのAに対する地代支払債務について未払があった場合,その後,BがAから甲土地の
所有権を取得したときは,その未払債務は消滅する。
5.甲土地を所有するAがBのために甲土地を目的とする地上権を設定してその旨の登記がされ,
Bが甲土地上に乙建物を建ててCに賃貸したときは,その後,BがAから甲土地の所有権を取
得したときでも,地上権は消滅しない。

正解 3

混同の短答問題の考え方結論

存続させておく実益がないからとか、不公平だからとか、そういった観点から肢を分析してしまうと間違えやすい。
まずは条文を形式的に当てはめ、あとは判例があればそれで修正するほうがよい。

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