旧法下では、そもそも法文上追完請求権の規定はない。
仮に受け取った物の品質が悪かったり、数量が不足していた場合は、債務不履行や履行遅滞などの問題となる。
一見するとそれで事足りそうだが現実はそうではない。
特定物、不特定物で考え方が違い、債務不履行だと帰責性が原則として必要なのでそれを証明する必要もある。
契約内容にきちんとそれらを明記してあれば別かもしれないが、原理原則として法分上明確にされていないので、曖昧な部分やイレギュラーな場合は最終的に裁判で決着をつけるしかなくなる。
しかし、裁判の結論は当該事案のみの判断であり、世の中の様々な事象に必ずしも一般化できるものでもない。
原理原則として機能させるために理論が構築されても、それは結局一般化できるように体系づけられていない場当たり的な論理なので不都合が露呈される。
その不都合に目を瞑ってきた、あるいは判例でその事案ごとに場当たり的に妥当な結論をだしてきたのがこれまでの民法だと言えよう。
旧民法条文
改正法の解釈については新債権法の論点と解釈
解除するには
旧法下では履行不能などを除いて原則として催告が必要→改正法では541催告による場合と542催告によらない場合が規定
特定物に関する規定
旧483 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
新483 債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない。
特定物の規定という事が明確になり、かつ、現状で引き渡さなければならないときが限定されているので、原則として品質を定めることとなり、結果として特定物にも債務不履行が考えられるようになった。
旧570の瑕疵担保責任削除
数量不足など追完
旧565の担保責任は特定物に関しての規定だったが、新562の追完請求563の代金減額請求の規定は特定、不特定を問わない規定となった。そもそも追完という概念自体がなかったが、仮に数量に不足していれば追完請求できるようになった。
これまでもそうだったかもしれないが、法分上ではそういう規定はなかった。
一部履行遅滞とも考えられるが、旧法下での履行遅滞の規定は解除がゴールである。
また、旧565は買主が善意でなければ563の代金減額請求が行えなかったが、新562、563では当事者の善悪は不問となっている。
さらに、564により415の損害賠償や541、542の解除も行えると明確に規定されている。
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