議案を否決する訴えの取消は不適法とはどういう意味ですか?

令和2〔第26問〕(配点:2)
最高裁判所平成28年3月4日第二小法廷判決(民集70巻3号827頁)は,ある議案を否決する
株主総会の決議の取消しを請求する訴えは不適法であるとする。次のアからオまでの各記述のうち,こ
の判決の論拠としてふさわしいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄
は,[№27])
ア.会社法は,取消事由のある株主総会の決議について,その決議の日から3か月以内に限って
訴えをもって取消しを請求することができる旨を定め,法律関係の早期安定を図っている。
イ.会社法は,株主は,原則として,株主総会において総株主の議決権の10分の1以上の賛成
を得られなかった日から3年を経過していない議案と実質的に同一の議案を提出することが
できない旨を定めている。
ウ.株主総会の決議は,定足数を満たし,かつ,議案に対する法定多数の賛成があることによっ
て成立するから,議案が否決され,決議が成立しなかったときは,当該議案を否決する株主
総会の決議の取消しを請求する訴えは,特段の事情が認められない限り,訴えの利益を欠く。
エ.会社法は,役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実
があったにもかかわらず,当該役員を解任する旨の議案が株主総会において否決されたとき
は,会社法所定の株主は,訴えをもって当該役員の解任を請求することができる旨を定めて
いる。
オ.会社法は,会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は,第三者に対してもそ
の効力を有する旨を定めており,株主総会の決議によって新たな法律関係が生ずることを前
提としている。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ オ 5.ウ エ

正解は2のアとオ
判例自体は知っていたものの、論拠は分からない。というか判決文を読んでもよく分からない。
「~株主総会等の決議によって,新たな法律関係が生ずることを前提とするものである。
しかるところ,一般に,ある議案を否決する株主総会等の決議によって新たな法律関係が生ずることはないし,当該決議を取り消すことによって新たな法律関係が生ずるものでもないから,ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求す
る訴えは不適法であると解するのが相当である。」
要するに否決の決議を取り消してもなんの意味もないでしょ。ということを言っているのだろう。
理屈としては株主総会の決議というものは新たな法律関係を生ずるものである。
決議の取消というのはそういう新たな法律関係を生ずるものを取り消すものであり、
否決の決議では新たな法律関係を生じないから否決の決議の取消訴訟は不適法という。

気になるのは、一旦否決されてしまうと同一の議案の提出ができないから否決の取消を提訴する、という肢が否定されている点である。判決でもこのロジックは採用されていない。
確かに否決の決議取消を求める、ある意味訴えの利益がありそうにも見えるが、仮に決議を取り消して再提出したからと言って必ずしも可決されるというものでもない。そう考えるといわゆる法的な利益ではなく事実上の間接的な利益にとどまるということなのだろう。

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