ま、AV好きなんで(笑)
他人事ではありません。しかし、e-govでもヒットしない。
全文ありましたぜ、旦那https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/208/pdf/s0902080432080.pdf
素人が撮影した個人撮影のエロい動画はAV新法の対象ですか?
第二条
5 この法律において「制作公表」とは、撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これらの行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部又は一部を行うことをいう。
6 この法律において「出演契約」とは、出演者が、性行為映像制作物への出演をして、その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約をいう。
7 この法律において「制作公表者」とは、性行為映像制作物の制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者をいう。
出演契約を結ぶ者が対象
この定義だと制作公表を行う者が制作公表者ではなく、
制作公表を行う者とは
撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これらの行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部又は一部を行う者
なので撮影だけを行う場合や、公衆送信だけを行う者であっても制作公表を行う者に該当するが、
制作公表者とは
出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者に該当する場合が制作公表者であり、
単にエロ動画を配信するだけの場合は制作公表者にあたらないので、配信するだけの場合まで出演者との契約は必要ではないことになりそうである。
出演者の人権を守るという趣旨の法律なので出演に直接関わらない場合は対象外という、当たり前か。
しかし、屁理屈を言うと、制作公表は編集する場合だけでも該当するので、仮にこの編集する者が出演者と出演契約を結ぶという事もできそうである(制作公表者とは制作公表を行う者として、出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者と規定されている)。
制作公表を行う者のうち出演者と出演契約を締結し、又は締結しようとする者が制作公表者ということになる。
そう考えると、制作公表を行う者であれば誰でも出演契約が結べることになってしまう(出演させるという権限がなければ意味がないが)。通常はビデオを制作する制作者でしょうけど。
いずれにしろ「性行為映像制作物の制作公表」を行う場合は出演者と出演契約を締結する事が必要になるので、業者であろうが個人であろうが出演者との出演契約を結ぶ必要があることになる。
個人撮影であっても動画を配信する場合は対象となる
さて、とするならば個人撮影であってもネット上で動画をアップして配信したりダウンロードさせて収入を得るような場合はまさにこれに該当するので、契約書をちゃんと交わした上で、かつそれから1か月後でなければ撮影はできず、かつ契約から4か月経過しないと少なくとも配信したりするなど流通にはのせられない。
違反すると懲役もあり得る。この点、被写体が同意済みであったとしてもこの期間制限に引っかかる場合があるので要注意だろう。
また、有償無償の区別をしていないので無料であっても対象になるようですが、制作だけを行って公表しないという事もあると思います。個人的趣味で制作する場合などですがこのような場合はどうか。
公表(頒布、公衆送信(公衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これらの行為に関するあっせんを含む。)
撮影、編集、流通、と、公表を列記して、公表の定義について頒布、公衆送信を規定していますが、この部分は撮影編集にかかっておらず、公表する目的で撮影、編集をする必要はないと読めるので、結局個人的に撮影するだけであっても契約は必要になってきそうです。
この法律において「制作公表」とは、撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公
衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又
は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これら
の行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部又は一部を行うことをいう
外部に公表しないのであれば規制の対象外のようです。
業界の人たちが営業の自由に反すると主張してましたね。憲法違反だとなかなか提訴しても勝てそうにないと思っていましたが、この法律運用次第で適用違憲にもなりそうです。
つづく。。。
罰則について
罰則がある規定を拾いあげてみよう。
第五章 罰則
第二十条 第十三条第五項又は第六項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、
三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下
の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第五条第一項の規定に違反して、説明書面等を交付せず若しくは提供せず、又は同
項各号に掲げる事項が記載され若しくは記録されていない説明書面等若しくは虚偽の
記載若しくは記録のある説明書面等を交付し若しくは提供したとき。
二 第六条の規定に違反して、出演契約書等を交付せず若しくは提供せず、又は出演契
約事項が記載され若しくは記録されていない出演契約書等若しくは虚偽の記載若しく
は記録のある出演契約書等を交付し若しくは提供したとき。
第二十二条 法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の
従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたとき
は、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対し
て各本条の罰金刑を科する。
一 第二十条 一億円以下の罰金刑
二 前条 同条の罰金刑
2 人格のない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は
管理人が、その訴訟行為につきその人格のない社団又は財団を代表するほか、法人を被
告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
13⑤⑥
5 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
6 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威迫して困惑させてはならない。
5①
第五条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、あらかじめ、その出演者に対し、前条第三項に規定する事項(同項各号に掲げる事項については、当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る。次条及び第二十一条第二号において「出演契約事項」という。)について出演契約書等の案を示して説明するとともに、次に掲げる事項についてこれらの事項を記載し又は記録した書面又は電磁的記録(以下「説明書面等」という。)を交付し又は提供して説明しなければならない。
一 第七条から第十六条までに規定する事項
二 第十一条の取消権については追認をすることができる時から、第十二条第一項の解除権については出演者が当該解除権を行使することができることを知った時から、そ
れぞれ、時効によって消滅するまで、五年間行使することができること。
三 撮影された映像により出演者が特定される可能性があること。
四 第十七条第一項の規定により国が整備した体制における同項に規定する相談に応じる機関(同条第二項の規定により都道府県が整備した体制における当該相談に応じる機関があるときは、当該機関を含む。)の名称及び連絡先
五 その他内閣府令で定める事項
6
第六条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結したときは、速やかに、当該出演者に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し、又は提供しなければならない。
現場の人たちからの批判の多い1か月4か月ルールに罰則はありませんね。
取消と法定解除と任意解除
(出演契約の取消し)
第十一条 制作公表者が第五条第一項又は第六条の規定に違反したときは、出演者は、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができる。制作公表従事者が第五条第三項の規定に違反したときも、同様とする。
5条の(出演契約に係る説明義務)又は6条の(出演契約書等の交付等義務)に違反した場合は出演契約の取消ができるとなっています。
(出演契約の法定義務違反による解除)
第十二条 次に掲げるときは、出演者は、民法第五百四十一条の催告をすることなく、直ちにその出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の解除をすることができる。
一 第七条第一項又は第三項の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影(同条第四項の規定により出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなされる撮影を含む。)が行われたとき。
二 第八条の規定に違反して、その出演者に対し、撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与えることなく、性行為映像制作物の公表が行われたとき。
三 第九条の規定に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行われたとき。
2 前項の解除があった場合においては、制作公表者は、当該解除に伴う損害賠償を請求することができない。
次の規定に違反する場合は無催告解除できると規定。取消ではなく解除であり、無効というわけでもないようです。
(性行為映像制作物の撮影)
第七条 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影は、当該出演者が出演契約書等の交付若しくは提供を受けた日又は説明書面等の交付若しくは提供を受けた日のいずれか遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない。
3 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に当たっては、出演者の健康の保護(生殖機能の保護を含む。)その他の安全及び衛生並びに出演者が性行為に係る姿態の
撮影を拒絶することができるようにすることその他その債務の履行の任意性が確保されるよう、特に配慮して必要な措置を講じなければならない。
いわゆる1か月ルールがでてきます。
(撮影された映像の確認)
第八条 制作公表者は、性行為映像制作物の公表が行われるまでの間に、出演者に対し、出演契約に基づいて撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うもの(当該制作公表者が当該公表に関する権原を有するものに限る。)を確認する機会を与えなければならない。
(性行為映像制作物の公表の制限)
第九条 性行為映像制作物の公表は、当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない。
ここで4か月ルールがでてきます。
取消と解除を書き分けている意図はよく分かりませんが(取消は意思表示に対して)、いずれにしろ無効ではないので出演者側から取り消しなり解除をしない場合はそのまま有効ということで良さそうです。とは言え、各規定に違反した場合は取消やら解除やらいつまででもできいるのか?また、既に撮影も公表も終わっている場合、出演契約を解除すると要するに販売や配信が停止されるだけ、ということでいいのか。
次にみるように公表後1年はこういう言わば解除権が発生しなくても任意に解除できるので、公表後1年で言えばあまり意味のない規定のような気がしないでもないです。
(出演契約の任意解除等)
第十三条 出演者は、任意に、書面又は電磁的記録により、その出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込みの撤回又は当該出演契約の解除(以下この条において「出演契約の任意解除等」という。)をすることができる。ただし、当該出演者に係る性行為映像制作物の公表が行われた日から一年を経過したとき(出演者が、制作公表者若しくは制作公表従事者が第五項の規定に違反して出演契約の任意解除等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことによりその告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は制作公表者若しくは制作公表従事者が第六項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでにその出演契約の任意解除等をしなかった場合には、当該出演者が、当該制作公表者又は制作公表従事者が内閣府令で定めるところによりその出演契約の任意解除等をすることができる旨を記載して交付した書面を受領した日から一年を経過したとき)は、この限りでない。
2 出演契約の任意解除等は、出演契約の任意解除等に係る書面又は電磁的記録による通知を発した時に、その効力を生ずる。
3 出演契約の任意解除等があった場合においては、制作公表者は、当該出演契約の任意解除等に伴う損害賠償を請求することができない。
4 前三項の規定に反する特約で出演者に不利なものは、無効とする。
5 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
6 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威迫して困惑させてはならない。
原則として公表後1年間は特になんの条件もなく任意に出演契約を解除できるとなっています。
そうすると、なぜ法定解除権のようなものがあるのか?わざわざそんなもの規定しなくてもよさそうですが、いずれにしろこうなるともはや契約とは言えないような気もしますが。
解除権はいつまで行使できるのか
5条1項に次の規定があります。
二 第十一条の取消権については追認をすることができる時から、
第十二条第一項の解除権については出演者が当該解除権を行使することができることを知った時から、
それぞれ、時効によって消滅するまで、五年間行使することができること。
取消権については追認できるときから
解除権については行使できることを知ったときから
5年間は行使できるとなっています。
法定解除の場合は違反していることを知っているだけでも該当するのか?それとも解除権を行使できるということまで認識している必要があるのか?
このあたりは判例に委ねられるのでしょうか。
1か月4か月ルールはルールではなく解除権発生の要件
ツイッターを見ていたら、この無催告解除は罰則がないから出演者が無催告解除しませんという契約をすればいいのではないかという問題提起がありましたが、そういう事が許されると法律の意味がなくなりますので多分それは無理だと思われます。
いずれにしろ、契約自体が無効だとはしていないので出演者本人が別に1か月ルールにせよ4か月ルールにせよどうでもいいですよ、と考えていればそもそも訴えたりすることもないわけですから。
出演契約を結ぶ際にこれら法の規定などが説明されて、その上で両者納得ずくで仮に撮影後1か月で公表したとしてもその事自体は別にルール違反ではなく、あくまで出演契約を解除できる権利が発生しただけだとも言えます。
現場の方たちが危惧しているのは簡単に契約を解除でき、それが頻発するとメーカーは立ち行かなくなるという点のようです。
それは1か月4か月ルールがなくても、公表後1年は任意に解除できるので変わらない点ですね。
でも逆に言うと1年経過後はどうなるのか?
本当に女優さんの人権などを考えるならば、本人が権利を主張しなくても一定期間経過後は販売配信が停止されるとかのほうがいいような気もします。
1本1本個別に契約するので、その契約自体を解除する意味ってなんなのか?というと販売や配信ができなくなるということだと思われますが、だとすると契約解除ではなく販売停止権みたいなのでよさそうですが。
2次使用料なども主張しなくても配分するようにするとか。
そもそもAV新法は必要だったのか問題
適正AVとは女優の人権に配慮した過程を経て制作され正規の審査団体の審査を受けたAV作品
適正AVに出演するにはプロダクションに所属
適正AVに出演するAV女優はJPGかSPAのどちらかに加盟している約80社のプロダクション(芸能事務所)のどこかに所属する必要があります。
※フリーの場合はフリー女優連盟面接段階から録画
プロダクションにはAV出演に関する説明責任があり、その責任を果たしている証拠を残すために面接段階からカメラで対話風景を録画します。
AV女優としてデビューするためにはIPPAに加盟するメーカーに撮影の契約を結んでもらう必要があります。メーカーの面接・契約時もずっとその様子をカメラで録画します。
現在はAV女優過多
メーカーはAV女優を選べる立場
嫌がる女性をリスクを背負ってまで無理やり出演させる意義が適正AVには存在していない
なるほど。既に業界で自主的なルール作りを行っていたということで、AVばっかり見ている私も(笑)この事は知りませんでした。
IPPAってテロップをよく目にしていましたが、著作権関連の事だろうくらいにしか思っていなかったので、FANZAあたりでもうちは適正AVしか扱いまへんで!と大々的にアピールしたほうがよいのではないでしょうか(知らないだけかもしれませんが)。
もっとも、これはあくまで業界の自主的なルールであり、これに違反してもあるいは加盟していなくてもアダルトビデオは制作販売できるのできちんと法整備する事は良い事だと思われます。
とは言え、その法律がなんだかざっくりした突貫工事で作られた代物のようだと話は違ってきます。
むしろ、業界が自主的に作ったこのルールをベースとして法律を作ればよかったのではないかとさえ思います。
そもそも、既に仕事をしている女優さんについては1か月ルールはなくても良さそうですよね。従って、一定の基準を満たしているプロダクションに所属している女優さんについては1か月ルールは適用除外でいいのではないでしょうか。
また、4か月ルールは一体なんのためにあるのかよく分かりません。
業界には組合や業界団体のようなものがなかったのでAV新法が出来上がってしまったと思っていました。
しかし、これだけ業界が集まって団体を作っているにも関わらずAV新法がスピード成立してしまったのは政治的にはなんの力もなかったということのようです。
もっと関係各所からの天下りを受け入れたり、それこそ監督官庁に規制権限を持たせた方が逆にいいのかもしれません。
例えばAV制作会社やプロダクションは一定の犯罪を犯した者は役員になれないとか、風営法の規制下において届け出制にするなど。
私も日本のAVが衰退するのは死活問題なので署名&1000円カンパしました。
女優・男優・スタッフが働きやすい「AV新法」にしてください
・AV人権倫理機構
・AV人権倫理機構 外局 (AVAN)
・NPO法人知的財産振興協会(IPPA)
・一般社団法人日本プロダクション協会(JPG)
・一般社団法人日本映像制作・販売倫理機構(制販倫)
・一般社団法人コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)
・第二プロダクション協会(SPA)
AV新法改正案について
いわゆるAV新法について、現時点で我々が考えている改正の方向性は添付の通りです。出席者の方から様々な意見が出ましたので、それを踏まえてブラッシュアップを進めていきます。お気づきの点があれば引き続きご意見をいただければ幸いです。 pic.twitter.com/UtopobM2w1
— 音喜多 駿(日本維新の会 政調会長・参議院議員) (@otokita) October 4, 2022
AV新法の適用除外規定についての創設
同一当事者間で2回目以降に締結される契約で
直近の出演契約が取り消されていないか解除されずに制作物が公表されている
かつ
1か月ルールや4か月ルールなどの適用除外についての承諾がある
この場合はAV新法そのものが適用除外されるとする。
思うに、現在活躍中のプロのAV女優さんにとってはAV新法というのは迷惑以外の何物でもないかもしれない。
しかし、そういうプロの方ばかりではない。プロ目線から言えばそうかもしれないが、まったくAVに出演する気がない人のほうが圧倒的多数であろう。
そのような人たちにとってみればやはり何らかの規制があって然るべきだろう。これは業界が自主規制しているからいいではないかというのは次元の違う話である。
仮に自主規制していても問題が起こった場合どうするのか。
そのように考えればこのAV新法は問題があるにせよ一定の意味はあるというべきだろう。
そうすると、上記改正案のように、本人が承諾していれば適用除外を認めてもよい、という考え方も理解できる。
しかし、そうなれば要は本人が承諾していればなんでもオッケーとなり、その場の雰囲気でサインさせられた、とならなくもない。そういうことを防ぐための法律なのに本末転倒となる。
そこで、同一当事者間で問題がなかった場合に限定しているとも言えよう。そもそも論として自ら望んでAVに出演するのなら、特に1か月ルールはまったく意味がない。1か月ルールは要するに本当は嫌だったのにその場の雰囲気や強要されて撮影を許してしまったような場合などを想定するものであろう。
そのような観点からは既にプロダクションに所属し、何本も出演しているような俳優にまで1か月ルールを適用するのは問題がある。
業者の届け出登録義務
業界関係者的にAV新法で一番問題なのはどうやら1か月4か月ルールのようなので、まず適用除外は1か月4か月ルールと、1年間の無催告解除に限定するのが妥当ではないか。
他の規定、例えば事前説明とは違う事までやらされた、などはプロの俳優さんでもありうるし、同一当事者間でもありうるのでこの部分まで適用除外にする必要はないと思われる。
また、この改正案だと同一当事者間でない場合は適用除外にならないが、適正プロダクションに在籍していて適正AVメーカーの作品に出演する場合には適用除外とするほうがよいのではないか。
もっとも適正AVとは何ぞやという話になるのでAV新法タスクフォースにもあるように、AV制作会社やAVに出演する俳優の在籍するプロダクションは監督官庁に登録制とし、経営陣に暴力団関係者や性犯罪者による前科がある者などがいる場合など一定の場合は登録できないとし、登録していない業者は勿論適正団体とすることはできないし、そもそもAVの制作自体にかかわれないとする。
そうすると、いわゆる同人AVを制作している個人も、作品を公表配信する場合は当局に登録届け出を必要とすることになり、一定の管理下におけることになる。
AV新法全文
法律第七十八号(令四・六・二二)
◎性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物
への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関
する特則等に関する法律
目次
第一章 総則(第一条-第三条)
第二章 出演契約等に関する特則
第一節 締結に関する特則(第四条-第六条)
第二節 履行等に関する特則(第七条-第九条)
第三節 無効、取消し及び解除等に関する特則(第十条-第十四条)
第四節 差止請求権(第十五条)
第三章 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する
法律の特例(第十六条)
第四章 相談体制の整備等(第十七条-第十九条)
第五章 罰則(第二十条-第二十二条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来
にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じてい
ることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並
びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者
の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益
を保護するために不可欠であるとの認識の下に、性行為の強制の禁止並びに他の法令に
よる契約の無効及び性行為その他の行為の禁止又は制限をいささかも変更するものでは
ないとのこの法律の実施及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結及び
履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請
求権の創設等の厳格な規制を定める特則並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任
の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)の特例を定
めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定め、もって出演者の性を
めぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「性行為」とは、性交若しくは性交類似行為又は他人が人の露
出された性器等(性器又は肛
こう
門をいう。以下この項において同じ。)を触る行為若しく
は人が自己若しくは他人の露出された性器等を触る行為をいう。
2 この法律において「性行為映像制作物」とは、性行為に係る人の姿態を撮影した映像
並びにこれに関連する映像及び音声によって構成され、社会通念上一体の内容を有する
ものとして制作された電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては
認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用
に供されるものをいう。以下同じ。)又はこれに係る記録媒体であって、その全体とし
て専ら性欲を興奮させ又は刺激するものをいう。
3 この法律において「性行為映像制作物への出演」とは、性行為映像制作物において性
行為に係る姿態の撮影の対象となることをいう。
4 この法律において「出演者」とは、性行為映像制作物への出演をし、又はしようとす
る者をいう。
5 この法律において「制作公表」とは、撮影、編集、流通、公表(頒布、公衆送信(公
衆(特定かつ多数の者を含む。)によって直接受信されることを目的として無線通信又
は有線電気通信の送信を行うことをいう。)又は上映をいう。以下同じ。)等(これら
の行為に関するあっせんを含む。)の一連の過程の全部又は一部を行うことをいう。
6 この法律において「出演契約」とは、出演者が、性行為映像制作物への出演をして、
その性行為映像制作物の制作公表を行うことを承諾することを内容とする契約をいう。
7 この法律において「制作公表者」とは、性行為映像制作物の制作公表を行う者として、
出演者との間で出演契約を締結し、又は締結しようとする者をいう。
8 この法律において「制作公表従事者」とは、制作公表者以外の者であって、制作公表
者との間の雇用、請負、委任その他の契約に基づき性行為映像制作物の制作公表に従事
する者をいう。
(実施及び解釈の基本原則)
第三条 制作公表者及び制作公表従事者は、その行う性行為映像制作物の制作公表により
出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそ
れがあり、また、現に生じていることを深く自覚して、出演者の個人としての人格を尊
重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護し、もってその性
をめぐる個人の尊厳が重んぜられるようにしなければならない。
2 制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物に係る撮影に当たっては、出演
者に対して性行為を強制してはならない。
3 この法律のいかなる規定も、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為を無効とする
民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十条の規定その他の法令の規定により無効と
される契約を有効とするものと解釈してはならない。
4 制作公表者及び制作公表従事者は、性行為映像制作物の制作公表に当たっては、この
法律により刑法(明治四十年法律第四十五号)、売春防止法(昭和三十一年法律第百十
八号)その他の法令において禁止され又は制限されている性行為その他の行為を行うこ
とができることとなるものではないことに留意するとともに、出演者の権利及び自由を
侵害することがないようにしなければならない。
第二章 出演契約等に関する特則
第一節 締結に関する特則
(出演契約)
第四条 出演契約は、性行為映像制作物ごとに締結しなければならない。
2 出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ、その効力を生じない。
3 前項の出演契約に係る書面又は電磁的記録(以下「出演契約書等」という。)には、
制作公表者及び出演者の氏名又は名称その他制作公表者及び出演者を特定するために必
要な事項並びに当該出演契約の締結の日時及び場所のほか、次に掲げる事項(当該制作
公表者に係る部分に関する事項に限る。)を記載し、又は記録しなければならない。
一 当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること。
二 当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時及び場所
三 前号の撮影の対象となる当該出演者の性行為に係る姿態の具体的内容
四 前号の性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項
五 当該性行為映像制作物の公表の具体的方法及び期間
六 当該性行為映像制作物の公表を行う者が制作公表者以外の者であるときは、その旨
及び当該公表を行う者の氏名又は名称その他当該公表を行う者を特定するために必要
な事項
七 当該出演者が受けるべき報酬の額及び支払の時期
八 その他内閣府令で定める事項
(出演契約に係る説明義務)
第五条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結しようとするときは、あらかじめ、
その出演者に対し、前条第三項に規定する事項(同項各号に掲げる事項については、当
該制作公表者に係る部分に関する事項に限る。次条及び第二十一条第二号において「出
演契約事項」という。)について出演契約書等の案を示して説明するとともに、次に掲
げる事項についてこれらの事項を記載し又は記録した書面又は電磁的記録(以下「説明
書面等」という。)を交付し又は提供して説明しなければならない。
一 第七条から第十六条までに規定する事項
二 第十一条の取消権については追認をすることができる時から、第十二条第一項の解
除権については出演者が当該解除権を行使することができることを知った時から、そ
れぞれ、時効によって消滅するまで、五年間行使することができること。
三 撮影された映像により出演者が特定される可能性があること。
四 第十七条第一項の規定により国が整備した体制における同項に規定する相談に応じ
る機関(同条第二項の規定により都道府県が整備した体制における当該相談に応じる
機関があるときは、当該機関を含む。)の名称及び連絡先
五 その他内閣府令で定める事項
2 制作公表者は、前項の規定による説明を行うに当たっては、出演者がその内容を容易
かつ正確に理解することができるよう、丁寧に、かつ、分かりやすく、これを行わなけ
ればならない。
3 制作公表者以外の者は、出演契約の内容又は第一項各号に掲げる事項に関し、出演者
を誤認させるような説明その他の行為をしてはならない。
(出演契約書等の交付等義務)
第六条 制作公表者は、出演者との間で出演契約を締結したときは、速やかに、当該出演
者に対し、出演契約事項が記載され又は記録された出演契約書等を交付し、又は提供し
なければならない。
第二節 履行等に関する特則
(性行為映像制作物の撮影)
第七条 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影は、当該出演者が出演契約書等の
交付若しくは提供を受けた日又は説明書面等の交付若しくは提供を受けた日のいずれか
遅い日から一月を経過した後でなければ、行ってはならない。
2 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影において、出演者は、出演契約におい
て定められている性行為に係る姿態の撮影であっても、その全部又は一部を拒絶するこ
とができる。これによって制作公表者又は第三者に損害が生じたときであっても、当該
出演者は、その賠償の責任を負わない。
3 出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に当たっては、出演者の健康の保護
(生殖機能の保護を含む。)その他の安全及び衛生並びに出演者が性行為に係る姿態の
撮影を拒絶することができるようにすることその他その債務の履行の任意性が確保され
るよう、特に配慮して必要な措置を講じなければならない。
4 いかなる名称によるかを問わず、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影に密
接に関連する出演者の撮影(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(平成二十六年法律第百二十六号)第二条第一項各号のいずれかに掲げる人の姿態の撮
影に限る。)は、出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影とみなして前三項の規
定を適用する。この場合において、前二項中「性行為に係る姿態」とあるのは、「私事
性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律第二条第一項各号のいずれかに掲
げる人の姿態」とする。
(撮影された映像の確認)
第八条 制作公表者は、性行為映像制作物の公表が行われるまでの間に、出演者に対し、
出演契約に基づいて撮影された映像のうち当該出演者の性行為映像制作物への出演に係
る映像であって公表を行うもの(当該制作公表者が当該公表に関する権原を有するもの
に限る。)を確認する機会を与えなければならない。
(性行為映像制作物の公表の制限)
第九条 性行為映像制作物の公表は、当該性行為映像制作物に係る全ての撮影が終了した
日から四月を経過した後でなければ、行ってはならない。
第三節 無効、取消し及び解除等に関する特則
(出演契約等の条項の無効)
第十条 性行為映像制作物を特定しないで、出演者に契約の相手方その他の者が指定する
性行為映像制作物への出演をする義務を課す契約の条項は、無効とする。
2 次に掲げる出演契約の条項は、無効とする。
一 出演者の債務不履行について損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項
二 制作公表者の債務不履行により出演者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは
一部を免除し、又は制作公表者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与
する条項
三 制作公表者の債務の履行に際してされたその制作公表者の不法行為により出演者に
生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を免除し、又は制作公表者にその責任
の有無若しくは限度を決定する権限を付与する条項
四 出演者の権利を制限し又はその義務を加重する条項であって、民法第一条第二項に
規定する基本原則に反して出演者の利益を一方的に害するものと認められるもの
(出演契約の取消し)
第十一条 制作公表者が第五条第一項又は第六条の規定に違反したときは、出演者は、そ
の出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の申込み又はその承諾の意思表示
を取り消すことができる。制作公表従事者が第五条第三項の規定に違反したときも、同
様とする。
(出演契約の法定義務違反による解除)
第十二条 次に掲げるときは、出演者は、民法第五百四十一条の催告をすることなく、直
ちにその出演者の性行為映像制作物への出演に係る出演契約の解除をすることができる。
一 第七条第一項又は第三項の規定に違反して、その出演者の性行為映像制作物への出
演に係る撮影(同条第四項の規定により出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮
影とみなされる撮影を含む。)が行われたとき。
二 第八条の規定に違反して、その出演者に対し、撮影された映像のうち当該出演者の
性行為映像制作物への出演に係る映像であって公表を行うものを確認する機会を与え
ることなく、性行為映像制作物の公表が行われたとき。
三 第九条の規定に違反して、同条の期間を経過する前に性行為映像制作物の公表が行
われたとき。
2 前項の解除があった場合においては、制作公表者は、当該解除に伴う損害賠償を請求
することができない。
(出演契約の任意解除等)
第十三条 出演者は、任意に、書面又は電磁的記録により、その出演者の性行為映像制作
物への出演に係る出演契約の申込みの撤回又は当該出演契約の解除(以下この条におい
て「出演契約の任意解除等」という。)をすることができる。ただし、当該出演者に係
る性行為映像制作物の公表が行われた日から一年を経過したとき(出演者が、制作公表
者若しくは制作公表従事者が第五項の規定に違反して出演契約の任意解除等に関する事
項につき不実のことを告げる行為をしたことによりその告げられた内容が事実であると
の誤認をし、又は制作公表者若しくは制作公表従事者が第六項の規定に違反して威迫し
たことにより困惑し、これらによって当該期間を経過するまでにその出演契約の任意解
除等をしなかった場合には、当該出演者が、当該制作公表者又は制作公表従事者が内閣
府令で定めるところによりその出演契約の任意解除等をすることができる旨を記載して
交付した書面を受領した日から一年を経過したとき)は、この限りでない。
2 出演契約の任意解除等は、出演契約の任意解除等に係る書面又は電磁的記録による通
知を発した時に、その効力を生ずる。
3 出演契約の任意解除等があった場合においては、制作公表者は、当該出演契約の任意
解除等に伴う損害賠償を請求することができない。
4 前三項の規定に反する特約で出演者に不利なものは、無効とする。
5 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者に対
し、出演契約の任意解除等に関する事項(第一項から第三項までの規定に関する事項を
含む。)その他その出演契約に関する事項であって出演者の判断に影響を及ぼすことと
なる重要なものにつき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
6 制作公表者及び制作公表従事者は、出演契約の任意解除等を妨げるため、出演者を威
迫して困惑させてはならない。
(解除の効果)
第十四条 出演契約が解除されたときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務
を負う。
第四節 差止請求権
第十五条 出演者は、出演契約に基づくことなく性行為映像制作物の制作公表が行われた
とき又は出演契約の取消し若しくは解除をしたときは、当該性行為映像制作物の制作公
表を行い又は行うおそれがある者に対し、当該制作公表の停止又は予防を請求すること
ができる。
2 出演者は、前項の規定による請求をするに際し、その制作公表の停止又は予防に必要
な措置を請求することができる。
3 制作公表者は、出演者が第一項の規定による請求をしようとするときは、当該出演者
に対し、その性行為映像制作物の制作公表を行い又は行うおそれがある者に関する情報
の提供、当該者に対する制作公表の停止又は予防に関する通知その他必要な協力を行わ
なければならない。
第三章 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関
する法律の特例
第十六条 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する
法律第三条第二項及び第四条(第一号に係る部分に限る。)並びに私事性的画像記録の
提供等による被害の防止に関する法律第四条の場合のほか、特定電気通信役務提供者
(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第
二条第三号の特定電気通信役務提供者をいう。第一号及び第二号において同じ。)は、
特定電気通信(同法第二条第一号の特定電気通信をいう。第一号において同じ。)によ
る情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された
情報の発信者(同法第二条第四号の発信者をいう。第二号及び第三号において同じ。)
に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するた
めに必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれにも該当
するときは、賠償の責めに任じない。
一 特定電気通信による情報であって性行為映像制作物に係るものの流通によって自己
の権利を侵害されたとする者(当該性行為映像制作物の出演者に限る。)から、当該
権利を侵害したとする情報(以下この号及び次号において「性行為映像制作物侵害情
報」という。)、当該権利が侵害された旨、当該権利が侵害されたとする理由及び当
該性行為映像制作物侵害情報が性行為映像制作物に係るものである旨(同号において
「性行為映像制作物侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に
対し性行為映像制作物侵害情報の送信を防止する措置(同号及び第三号において「性
行為映像制作物侵害情報送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があったとき。
二 当該特定電気通信役務提供者が、当該性行為映像制作物侵害情報の発信者に対し当
該性行為映像制作物侵害情報等を示して当該性行為映像制作物侵害情報送信防止措置
を講ずることに同意するかどうかを照会したとき。
三 当該発信者が当該照会を受けた日から二日を経過しても当該発信者から当該性行為
映像制作物侵害情報送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。
第四章 相談体制の整備等
(相談体制の整備)
第十七条 国は、性行為映像制作物への出演に係る勧誘、出演契約等の締結及びその履行
等、性行為映像制作物の制作公表の各段階において、出演者の個人としての人格を尊重
し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護し、もってその性を
めぐる個人の尊厳が重んぜられるようにする観点から、性行為映像制作物への出演に係
る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資すると
ともに、その被害の背景にある貧困、性犯罪及び性暴力等の問題の根本的な解決に資す
るよう、出演者その他の者からの相談に応じ、その心身の状態及び生活の状況その他の
事情を勘案して適切に対応するために必要な体制を整備するものとする。
2 都道府県は、その地域の実情を踏まえつつ、前項の国の体制の整備に準じた体制の整
備をするよう努めるものとする。
(その他の支援措置等)
第十八条 国及び地方公共団体は、前条に定めるもののほか、性行為映像制作物への出演
に係る被害の背景にある貧困、性犯罪及び性暴力等の問題の根本的な解決に資するよう、
社会福祉に関する施策、性犯罪及び性暴力の被害者への支援に関する施策その他の関連
する施策との連携を図りつつ、出演者その他の者への支援その他必要な措置を講ずるも
のとする。
(被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発)
第十九条 国及び地方公共団体は、性行為映像制作物への出演に係る被害が一度発生した
場合においてはその被害の回復を図ることが著しく困難となることに鑑み、学校をはじ
め、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、性行為映像制作物への出演に係る被
害の発生を未然に防止するために必要な事項に関する国民の十分な理解と関心を深める
ために必要な教育活動及び啓発活動の充実を図るものとする。
第五章 罰則
第二十条 第十三条第五項又は第六項の規定に違反したときは、その違反行為をした者は、
三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下
の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第五条第一項の規定に違反して、説明書面等を交付せず若しくは提供せず、又は同
項各号に掲げる事項が記載され若しくは記録されていない説明書面等若しくは虚偽の
記載若しくは記録のある説明書面等を交付し若しくは提供したとき。
二 第六条の規定に違反して、出演契約書等を交付せず若しくは提供せず、又は出演契
約事項が記載され若しくは記録されていない出演契約書等若しくは虚偽の記載若しく
は記録のある出演契約書等を交付し若しくは提供したとき。
第二十二条 法人の代表者若しくは管理人又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の
従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたとき
は、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対し
て各本条の罰金刑を科する。
一 第二十条 一億円以下の罰金刑
二 前条 同条の罰金刑
2 人格のない社団又は財団について前項の規定の適用がある場合には、その代表者又は
管理人が、その訴訟行為につきその人格のない社団又は財団を代表するほか、法人を被
告人又は被疑者とする場合の刑事訴訟に関する法律の規定を準用する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日の翌日から施行する。ただし、第五章の規定は、公布の日
から起算して二十日を経過した日から施行する。
(経過措置)
第二条 第二章(第十条第一項及び第四節を除く。)の規定は、この法律の施行前に締結
された出演契約並びにこれに基づく出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影、そ
の撮影された映像の確認及びその性行為映像制作物の公表については、適用しない。
2 第十条第一項の規定は、この法律の施行前に締結された契約については、適用しない。
第三条 この法律の施行の日から起算して二年を経過する日(次項において「二年経過
日」という。)までの間にされた出演契約の出演者からの申込み若しくはその申込みに
係る出演契約又はその間に締結された出演契約についての第十三条第一項の規定の適用
については、同項中「一年」とあるのは、「二年」とする。
2 二年経過日の翌日から起算して一年を経過する日までの間にされた出演契約の出演者
からの申込み若しくはその申込みに係る出演契約又はその間に締結された出演契約(前
項の規定の適用があるものを除く。)についての第十三条第一項の規定の適用について
は、同項中「経過した」とあるのは、「経過し、かつ、この法律の施行の日から起算し
て四年六月を経過した」とする。
3 前二項の規定の適用がある場合における第五条第一項(第一号に係る部分に限る。)
の規定の適用については、同号中「事項」とあるのは、「事項(附則第三条第一項又は
第二項の規定により読み替えられた第十三条第一項に規定する事項を含む。)」とする。
(検討)
第四条 この法律の規定については、この法律の施行後二年以内に、この法律の施行状況
等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
2 前項の検討に当たっては、性行為映像制作物の公表期間の制限及び無効とする出演契
約等の条項の範囲その他の出演契約等に関する特則の在り方についても、検討を行うよ
うにするものとする。
(調整規定)
第五条 この法律の施行の日から特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信
者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律(令和三年法律第二十七号)の施行の
日の前日までの間における第十六条の規定の適用については、同条中「及び第四条」と
あるのは、「及び第三条の二」とする。
(刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律の一部改
正)
第六条 刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律(令和
四年法律第六十八号)の一部を次のように改正する。
第八十条に次の一号を加える。
十七 性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制
作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等
に関する特則等に関する法律(令和四年法律第七十八号)第二十条及び第二十一条
(内閣総理大臣署名)
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