安田純平さん「なぜトルコ入国禁止で、全世界に渡航できなくなるのか」パスポート発給しない国を批判
安田さんは2018年10月に解放されて帰国した。2019年1月、拘束中に没収された旅券の再発行を申請したところ、同年7月、外務省から旅券法にもとづいて拒否された。そのため、2020年1月、旅券法の条項は違憲だとして、国を相手取った裁判を東京地裁に起こした。安田さんの代理人をつとめる岩井信弁護士によると、(1)旅券法13条1項1号(※)に該当する事実がない、(2)旅券法13条1項1号は憲法違反である、(3)仮にこの条項が憲法違反でなくても、今回のケースに適用する処分は違憲である、(4)裁量権を逸脱して違法な処分である――と主張している。
(一般旅券の発給等の制限)
第十三条 外務大臣又は領事官は、一般旅券の発給又は渡航先の追加を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合には、一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる。
一 渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者
二 死刑、無期若しくは長期二年以上の刑に当たる罪につき訴追されている者又はこれらの罪を犯した疑いにより逮捕状、勾引状、勾留状若しくは鑑定留置状が発せられている旨が関係機関から外務大臣に通報されている者
三 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者
四 第二十三条の規定により刑に処せられた者
五 旅券若しくは渡航書を偽造し、又は旅券若しくは渡航書として偽造された文書を行使し、若しくはその未遂罪を犯し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百五十五条第一項又は第百五十八条の規定により刑に処せられた者
六 国の援助等を必要とする帰国者に関する領事官の職務等に関する法律(昭和二十八年法律第二百三十六号)第一条に規定する帰国者で、同法第二条第一項の措置の対象となつたもの又は同法第三条第一項若しくは第四条の規定による貸付けを受けたもののうち、外国に渡航したときに公共の負担となるおそれがあるもの
七 前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
2 外務大臣は、前項第七号の認定をしようとするときは、あらかじめ法務大臣と協議しなければならない。
確かに13条1項1号で発給拒否処分というのは解せない。本当に13条1項1号が根拠なのか?もしかすると7号ではないのか?
現在訴訟が継続中でその中で国の主張が7号ということでもなさそうだ。
仮に理由を7号差し替えられたらあっさり負けてしまいそうだが(笑)
そもそも本当に13条1項1号での処分なのか?こんなの発見
「移動の自由が重要なのは、経験の機会を増やすから」
拘束中にパスポートを取り上げられていた安田さんは、帰国からしばらく経った2019年1月、インドやヨーロッパ各国への家族旅行を計画して、パスポートの発給を申請した。
ところがそれから半年後の7月に届いたのは、「トルコ共和国から5年間の入国禁止措置を受けている」という理由でパスポートの発給自体を拒否する外務大臣の通知書だった。
明確に13条1項1号とは書かれていないが、おそらく13条1項1号を根拠とするような理由である。トルコから入国禁止措置を受けているという事実が日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由という解釈も成り立つ。この場合はもちろん7号を根拠とすることになるが、いずれにせよ理由の差し替えは認められているので「13条1項1号」に固執してもあまり意味がないのではないか、などと思った次第である。
※追記
よくよく考えるとこの処分自体は19年1月の7か月後なので当時の処分としては確かに13条1項1号なのだろう。
法律ではたった1か国でも該当すれば発給拒否できてしまうので確かにそうだとすると行き過ぎの感がある。
法律自体を合憲的に解釈すると、「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」には「発給しない」か「渡航先の追加をしない」のではなく
「当該国への渡航先の追加をしない」と限定解釈すべきなのではないか。
※追記
安田純平さん旅券拒否、国敗訴 東京地裁「裁量権逸脱か乱用」
内戦下のシリアで約3年4カ月拘束された後、2018年10月に解放されたフリージャーナリストの安田純平さんが、外務省からパスポートの発給を拒否されたのは違法だとして、国に発給拒否処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁(品田幸男裁判長)は25日、発給拒否は裁量権の逸脱か乱用に当たり、違法だとして処分を取り消した。訴状などによると、安田さんはシリアでの拘束中にパスポートを奪われ、帰国後の19年1月に再発行を申請。外務省は同年7月、解放時にトルコから5年間の入国禁止措置を受けたことを理由に発給を拒否した。
地裁の判断なのでまだ何とも言えないが、裁量権での構成も少し解せないが。
法規をそのまま適用すると国の運用自体がおかしいとは必ずしも言えない。裁量権の逸脱乱用の論理構成にしてしまうと法律自体は当然有効であり限定解釈なども必要なく、適用違憲というわけでもなくなる。
今後似たような事案が起きた場合国の裁量次第では発給自体の拒否ができてしまう。そうすると、今回の事案では裁量の基準のようなものが示されているはず?で、その裁量の基準や要件みたいなものが重要になってくるが。。。
続報 追記
シリアで拘束・安田純平さんへのパスポート発給拒否… 勝訴判決も「大きな後退」「国会の怠慢だ」
旅券法は「渡航先の国の法規により入国拒否されている者には、発給しないことができる」とあり、国側はこれを元にした形だ。そのため安田さんは、トルコ1カ国の入国禁止を理由に、どこの国にも行けない状況を強いられたため、国を相手取って処分取り消しを求める訴訟を起こした。裁判では、「すべての国」に渡航できるパスポートを求める一方で、予備的請求として「入国禁止となっているトルコ以外のすべての国」といういわゆる譲歩案も盛り込んだ。
2024年1月、一審の東京地裁判決では、発給そのものの拒否は違法とする判決を下した。判決では、旅券法の制限は「二国間の信頼関係」を主な目的にしており、トルコとその周辺国以外まで渡航を禁じるのは、裁量権の逸脱・乱用とする一方で、憲法違反にはあたらないとした。
一審判決後、安田さんは「外務省の好きなようにやっている。いつでもそういう扱いになる可能性が皆さんにもある」とコメント。判決を不服として控訴し、国も発券拒否は妥当として控訴した。
2025年1月の東京高裁判決では、一審と同様に、旅券発給拒否を「違法」としたが、制限は「二国間」だけでなく「全世界との信頼関係」に広げられた。トルコと、その周辺国・関係国だけでなく、それ以外のすべての国も制限対象となり、判断材料として安田さんの地位や経歴、人柄、これまでの渡航目的、取材内容なども考慮するという文言が追加された。
この記事だけ読むとなんのこっちゃよくわからない
一審
「判決では、旅券法の制限は「二国間の信頼関係」を主な目的にしており、トルコとその周辺国以外まで渡航を禁じるのは、裁量権の逸脱・乱用とする一方で、憲法違反にはあたらないとした」
高裁
「旅券発給拒否を「違法」としたが、制限は「二国間」だけでなく「全世界との信頼関係」に広げられた。トルコと、その周辺国・関係国だけでなく、それ以外のすべての国も制限対象となり、判断材料として安田さんの地位や経歴、人柄、これまでの渡航目的、取材内容なども考慮するという文言が追加された」
そもそも論として、制限をするというのが何を制限するかというと渡航先の事を言いたいのだろうが、「制限は「二国間」だけでなく「全世界との信頼関係」に広げられた」という書き方だとそれは制限の根拠の事を言っていることになる。
いずれにしろ、発給拒否そのものは違法と言っているので実質的に安田さんの勝ちなのだが、安田さんは一体何を求めているのか見えてこない。
トルコとその周辺国以外には渡航できるようだが、要は安田さんとしてはトルコはしょうがない(どうせ入国できない)としてその周辺国に行きたいということなのだろう。つまり、パスポートは発給されても渡航先の制限のついたパスポートになる事が想定され、それだと意味ないのだよ、ということなのだろう。
また、「判断材料として安田さんの地位や経歴、人柄、これまでの渡航目的、取材内容なども考慮する」という点についていだろうか、拡大解釈だとして批判しているようだが、逆に言えば至極当然な裁量だと思われるのだが。。。
旅券法の13条1項7号にはこうある
七 前各号に掲げる者を除くほか、外務大臣において、著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
明らかに日本国の利益をそこないそうなんだよな(笑)やはり、1号だけだとトルコ以外はOKになるし、かといって7号も含めて考慮してもパスポートそのもの発給拒否はやり過ぎだろという言わば常識的な判決だと思えてきた。
コメント