ハウステンボスIR不認定、長崎県知事「十分な説明」国に求める…資金調達は「十分な確実性」
――資金調達の確実性が不十分などとする国の評価をどうとらえているか。「資金調達の確実性を証明する書類は、世界的な金融機関や専門家らの助言をいただきながら、商慣習にも照らして適切に提出し、十分な確実性をしっかりと証明できたと認識している」
「確実性を裏付ける客観的な資料の定義や要件、様式などが不明確で、国に問い合わせても明確な回答がなかった経緯もある。十分な説明を国に対して求める」
――今後の対応は。
「まずは今回の結果を精読する。我々の認識と国の結果に差がある。その差がはっきりしないと、次のことは考えられない。今後は何も決まっていない」
ヤフコメでは裏金不足とか(笑)谷川議員が失脚したから(笑)とか新幹線がつながっていないから(笑)とか、散々の言われようですが、記事にあるように、、確実性を裏付ける客観的な資料の定義要件様式が不明確なのに明確な回答がなかった、という点が気になりました。
これって行政手続き法などの出番なのか?
(国の機関等に対する処分等の適用除外)
第四条 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。
とは言え、実際にカジノ等を運営するのは民間の事業者なのでこの場合どうなるのか。選定されるであろう民間の事業者が行手法によって不利益処分を受けたと言って提訴できるのか?或いは定義や要件が不明確=審査基準がよく分からないなどの理由で行手法違反となるのか?
まず、IR法をみてみよう。
正式名称は特定複合観光施設区域整備法らしい。
第一節 区域整備計画の認定等(第五条―第十四条)
第二節 認定設置運営事業者等の義務等(第十五条―第十九条)
第三節 設置運営事業等の監査及び会計(第二十条―第二十八条)
第四節 認定設置運営事業者等の監督等(第二十九条―第三十四条)
第五節 区域整備計画の認定の取消し(第三十五条・第三十六条)
都道府県が区域整備計画を作成してそれを国土交通大臣が認定する、というのが大まかな流れのようである。
(区域整備計画の認定)
第九条 都道府県等は、設置運営事業等を行おうとする民間事業者と共同して、基本方針及び実施方針に即して、特定複合観光施設区域の整備に関する計画(以下「区域整備計画」という。)を作成し、国土交通大臣の認定を申請することができる。この場合において、当該民間事業者がまだ設立されていないときは、発起人その他の当該民間事業者を設立しようとする者と区域整備計画を共同して作成し国土交通大臣の認定を申請するものとする。
問題は国土交通大臣は何をもってして認定したり不認定などの判断を行うかである。
(基本方針)第五条 ②四に、「区域整備計画の認定に関する基本的な事項」を定めなければならないと規定されている。
特定複合観光施設区域整備法に係る説明会
説明資料
【区域整備計画に関する事項】
Q17:区域整備計画を国⼟交通⼤⾂に申請するに当たって、IR区域の⼟地の権原の確認や資⾦調
達の確実性の確認等はどの程度⾏われるのか。
⇒A:認定の具体的な⼿続・基準については今後検討することとなるが、区域整備計画の認定基準と
して、「設置運営事業等が円滑かつ確実に⾏われると認められること」(法第9条第11項第3
号ヘ)が定められていることから、区域の⼟地権原や、資⾦調達の確実性についての根拠資料の
提出を求めることを想定している。
特定複合観光施設(IR)
IR整備法に基づく基本方針(特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針)は、IRの区域整備計画の認定審査に係る基準等が定められており、依存症などの弊害防止対策に万全を期しながら、国際競争力があり、滞在型観光の促進に資する日本型IRを実現するものとなっています。
基本方針の概要
ありましたね(笑)これが明確かどうかはさておき、一応基準のようなものは公開されているわけです。
では、ハウステンボスのIR事業は具体的にどのようなものだったのでしょうか?
九州・長崎IR区域整備計画(案) 概 要
まず、気になるのがコンセプトであるが、抽象的すぎてよく分からない(笑)
認定基準には建物のデザインにまで言及があるが完成予想図のデザインは正直地域の象徴的なものは感じられなかった。
日本の魅力をこれまでにないクオリティで発信することという基準もあるが、そもそもハウステンボス自体が国外をコンセプトにするものだろう。
その他施設は国際競争力と高いクオリティを持ち、幅広い人々が楽しめることとあるが、そのようなものは見当たらないようだ。
(8) IR区域が整備される地域、関連する施策等についての基準もあり、
・国内外の主要都市との交通の利便性に優れていること
・交通アクセス改善やインフラ整備等の施策が効果的であること
これはかなり致命的に弱い印象を受ける。各交通機関のアクセスが説明されているが、海外からはほぼほぼ福岡空港に頼らざるを得ない。福岡空港からは車かJRだが、そもそも西九州新幹線がフル規格で開通していてもいずれにしても乗り換えが発生する。
では、今後インフラを整備するのかと言えばどれも決定的にアクセスが改善するものではないようだ。勿論、カジノが本格開業すれば長崎空港発着の海外便も増えそうではあるが、だとするなら長崎空港近くにつくってもよい。
いっその事長崎市内に作ったほうがまだマシなような気さえする。そのほうが新幹線の効果も倍増しよう。
そもそも論としてハウステンボスに作る意味が認定基準を見る限りほとんどない。既存の施設を活用するよりは新たな施設を作ることが前提になっているような認定基準でもあり、かつ、日本の魅力というものを発信し、海外からのインバウンドも増やすことに貢献する必要がある。
ハウステンボスに固執する必要性がまったく感じられない、実際に作るのはハウステンボスに隣接した土地だというから猶更なぜに交通アクセスの悪いところにつくるのか?というのが率直な感想である。
また、認定基準では国際競争力というワードが多用されていることから、どのような点が国際競争力があるのかをアピールする必要があるだろう。この点を具体的に基準として提示しろ、というのは分からないでもないが、仮に具体的な基準を提示したとしても認定区域は上限3であるから、基準を満たしているとしてもそことの競争に負ければ意味がない。要するにどれだけアピールできるかが勝負である。
そういう意味では基準が明確でないからこの程度でいいんじゃないかというざっくりしたプレゼンをされてもそれは相手の心を動かすまでに至らないだろうことは容易に想像がつく。もっとも認定された大阪IRの概要も似たり寄ったりと言えばそれまでだが、やはり資金調達が不安視されたのか。出資者の構成も気になる。
とは言え、行政法的にはIR事業者が行政訴訟などを起こせる可能性もなくはないと思う。勿論、提訴したとして国の処分が違法かどうかはまた別問題だが。
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