平成20年の採点実感で明確性の原則について表現の自由と31条の関係性についての理解が触れられていた。
正直さっぱり分からない。
そもそも明確性もしくは広汎性の原則とはなんぞや。なんとなくわかった気になっているだけだった。
31条で定める法律の手続きという意味が適正手続きと適正実体の法定であり、適正実体に罪刑法定主義の原則が含まれるという。さらに、実体的適正が要求するものとして、①犯罪構成要件の明確性の原則、②罪刑の均衡の原則があげられる。基本法コンメンタール憲法第四版P186
31条の解説だけを見ると表現の自由との関連は分からない。
21条の表現の自由の解説には①明白かつ現在の危険の基準②LRAの基準③明確性の原則④過度の広汎性の理論⑤事前抑制禁止の原則、とあり、これらの基準は、表現の自由への具体的な制限の態様や制限法令の種類に応じて適切なものが使い分けられると説明されている。基本法コンメンタール憲法第四版P126
これは違憲審査基準であり、文面審査にあたると言えるだろう。
要するに31条の場合は適正実体から導き出されるものであり、21条の場合は「制約の対象や範囲が不明確であると、何が禁止される行為であるかの理解を困難にし、この自由の行使に萎縮的な効果を生むので、明確性を欠く制限立法はそれだけで違憲とされる。」と、同じことを言っているに過ぎない。これは全ての法令について言えることである。
この関係性につきわざわざ論述で触れる必要はないかもしれない、と思ったが、採点実感に「論ずる必要がある」としっかり書いてあった(笑)
31条と第三者所有物没収事件 第三者の権利主張
平成20年の採点実感に第三者所有物没収事件についての言及があった。また、第三者の権利侵害をなぜ主張できるのか ※訴えの利益ではない、とある。
第三者所有物没収事件を判例百選だけ読むと、第三者に告知、聴聞の機会を与えていないから違憲とだけ理解しがちである。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/954/056954_hanrei.pdf
「かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべきである。」
この判例は実は地味に判例変更されていた。以前は第三者の権利侵害について上告は云々かんぬん。
さて、ここで採点実感では訴えの利益ではないとある。ん?どういうことだ(笑)
採点実感にヒントがあった。
「Aの表現の自由」の制約の違憲性が,実際には,Aの発信情報を受ける者の知る自由の制約であるという意識が明確化されないままに混同して記述しており」
「本来の訴訟要件の問題と混同して,訴えの利益を論ずるなど,的外れな論述が少なからず見られた」
なるほど、つまり表現の自由を制約することは結果的に情報の受け取り手の知る自由、知る権利の侵害にもつながるということだろうか。
しかし、そうだとしても第三者所有物没収事件のロジックからは、その第三者から訴えられたりする危険があるから利害関係ありという事で原告適格があるということだろう。
すると、平成20年の事案だと結局原告適格はない(知る権利を侵害されたとして情報の発信者がその者たちから訴えられるということは少なくともないはずだ)、ということか?それともあるのか?
また、平成23年でも第三者の違憲主張についての言及がある。
主張適格
やはり表現の自由を制約する場合は同時に知る権利も制約することになる。そういう意味で表現の自由を制限されていなくても知る権利を制約された者に代わって違憲主張できるかどうか、できるとしたらどういう場合か、などについての議論があるのだろう。
行政訴訟の場合と違って、憲法訴訟において第三者が違憲主張した例は?
H22-11
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