出会い系で知り合いトラブルか 逮捕のアルペン会長辞任
中署によると、水野容疑者は昨年11月29日、ホテルの客室で背後から女性の首を絞め、体に触るなどのわいせつな行為をして3週間のけがを負わせた疑いがある。女性から10万円と運転免許証を盗み、客室の外で女性の髪をつかむ暴行をした疑いもある。捜査関係者によると、水野容疑者は見知らぬ男女が知り合い、気が合えば一緒に店を出る「出会い系カフェ」で女性と知り合い、ホテルで性的な行為を求めたところ拒絶され、トラブルになったとみられるという。
アルペンの水野泰三会長が退任、強制わいせつ致傷・窃盗・暴行で逮捕
強盗ではなく窃盗であり、強姦=強制性交未遂ではなく強制わいせつであり、かつ致死傷であり、暴行容疑も加わって逮捕されている。
強盗強姦(以下同)と強盗殺人とか、色々と論点がある。
今回は強盗ではなく窃盗だと認定しているが、強制わいせつと時間的場所的に接着しているので強盗に認定されてもおかしくなさそうだがそもそも強盗強姦の要件とかうろ覚えだった(笑)
また、殺害についての故意があるとかないとか、罪数に関しても分かった気になっていざ思い出してみるとまったく覚えていないと言う(笑)
ということで振り返り
改正前と改正後の条文を比較してみよう
※追記以前の記事を改めてみて、分かりにくいことこの上ない。これでは直前期のまとめとしては役立たず(笑)
この件で気づいたのは結局はまず条文ありき、という事で改正される前の規定はそもそも不完全な条文であってそれを埋めるべく判例だったり学説で解釈していたので、無理がありまくりだった。
それを整理したのが改正である。旧法下での結論や解釈は無理ゲなのでこの際論理的整合性を気にしても仕方なく、改正された条文を基準にしてどのようになるかをみていったほうがよいようだ。
強姦→強制性交と殺人
旧177強姦は強制性交等に改正されているが、基本的部分は変更がない。
旧181強制わいせつ等致死傷は強制わいせつ等致死傷に改正されている、2項が追加されている。
第百八十一条 強制わいせつ等致死
1 第百七十六条、第百七十八条第一項若しくは第百七十九条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条、第百七十八条第二項若しくは第百七十九条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
1項 強制わいせつ、準強制わいせつ、監護者わいせつ よって人を死傷 無期又は3年以上
2項 強制性交、準強制性交 よって人を死傷 無期又は6年以上
旧181 強制わいせつ等致死傷 176~179 を犯しよって人を死傷させた者
殺害につき故意がある場合は殺人罪との観念的競合
基本的には変更がない。問題は殺害についての故意犯も含むのかであるが、判例は故意のある場合を含まず、本罪と殺人罪との観念的競合としている。最判昭31.10.25集10.10.1455
この部分についての改正はないようなので判例がそのまま生きると思われる。
強盗と殺人
旧240強盗致死傷 新240は短期の刑が7年以上から6年以上に短縮されたのみで他に変更はない。
殺害についての故意ある場合も含む
殺害についての故意がある場合も本罪が適用される。
未遂は殺害しようとして遂げなかった場合
財物奪取目的による暴行、脅迫に着手し、致死傷の結果を生じさせれば強盗致死傷罪は既遂となる。
財物奪取の有無は既遂、未遂に関係しない。
結果的加重犯である強盗致死傷罪では致死傷についての故意がないので未遂を考える余地はない。
従って、本罪の未遂は強盗犯人が故意に殺害しようとして遂げなかった場合のみ。
強盗が強姦、強姦が強盗、そして殺人
旧241 強盗が強姦したとき よって死亡
主体が強盗のみ 結果的加重犯の規定であり殺害についての故意ある場合を含まないとよめる
従って強姦犯人が強盗した場合、及び殺害について故意ある場合、さらに未遂の場合など議論があった
新241 強盗(未遂)が強姦(強制性交等)(未遂)をしたとき
強姦(未遂)が強盗(未遂)をしたとき 無期又は7年以上
2項 いずれも未遂のときが未遂減軽の対象 ※人の死傷の結果が発生したばあいは未遂減軽の対象にならない
3項 1項にあたる行為で人を死亡させた者は死刑又は無期
殺害についての故意ある場合も含む
主体に強制性交を犯した者が追加
3項はよってという文言が使われていないので殺害についての故意ある場合も本罪適用対象
未遂は強盗と強姦の未遂
未遂は殺害行為ではなく強盗と強姦の未遂の場合
強盗と殺人や強姦がからむ場合に成立する罪名
強盗が人を殺してしまった場合にそもそも殺意があったらどの罪名か?
強盗殺人として扱われる。罰条は240条強盗致死傷
強姦犯人がモノをとろうと思ったら罪名はどうなるのか?
まず旧法では
強盗が強姦を行うと241条強盗強姦一罪成立
強姦が強盗を行うと177条強姦と236条強盗の併合罪
新法では強盗強制性交
新法では強盗強姦の前後問わず同一機会に行われたら強盗強制性交
強姦時にモノを奪った場合は強盗なのか窃盗なのか
では強姦犯人が被害者のモノを奪う場合に強盗と評価される場合と窃盗として評価される場合の分水嶺はなにか。強盗の場合も被害者の処分行為は必ずしも必要とされないからである。
今回の事案は強制性交ではなく強制わいせつである。言い換えれば同じような考え方で強盗と窃盗を分けることができるのか。
この点死者の占有の論点も関連があるだろう。
最初からモノを奪うつもりで被害者を殺してモノを奪えば強盗殺人が成立するのは問題ない。
問題は殺人などを犯してモノの占有者が死亡した後で被害者のモノを領得する意思が生じてモノをとった場合はどんな犯罪が成立するのか?
判例は窃盗としている。
強盗の場合は被害者が気絶している間にモノを奪っても成立する。しかしこの場合は最初から強盗の意思があったから成立するわけである。
問題は例えば被害者を暴行し気絶させた後に財物を領得する意思を生じた場合であり、死者の占有の場合と似ている。
死者の占有の場合判例は犯人が被害者を殺した場合は窃盗としているが、殺した犯人ではない第三者が領得した場合は占有離脱物横領罪としている。
つまり殺した犯人が誰かで成立する罪が違っている。
となると、強姦犯人が強姦直後に財物を領得した場合も強姦における暴行脅迫行為を利用した強盗行為と評価できなくもない。
結局これは強盗における暴行脅迫とはなんぞやということになろう。
強姦(変更後の訴因強盗強姦)、傷害、恐喝、窃盗、贓物故買被告事件
走行中の自動車内において、わいせつ行為の目的で、婦女に暴行、脅迫を加えてその反抗を抑圧し、さらに反抗抑圧状態にある同女を姦淫しようと企て、ホテルの一室に連れ込んだ後、同所であらたに財物奪取の意思を生じ、右抑圧状態を維持利用して同女から財物を奪取した場合には、財物奪取それ自体のためにことさら暴行、脅迫を加えた事実がなく、また財物の奪取が被害者不知の間になされたものであつても強盗罪が成立する。
上記判例によれば強姦における暴行脅迫を利用した場合はあらたに暴行脅迫を行わなくても強盗が成立するとしている。この点なにを持って利用といっているのかはよく分からないがいずれにしろ、あらたに暴行脅迫を行わなくても強盗は成立するから、今回のような強制わいせつ事案であっても強盗と評価できるような暴行がわいせつ行為の際に行われたら、その後財物を領得したら強盗が成立する余地がある。
となれば今回の事案では強制わいせつの際の暴行または脅迫が強盗と評価できるほどのものでなかったのか?或いはその暴行脅迫を利用したと認められなかったので窃盗と評価したのであろう。しかし、強盗と強姦の暴行脅迫に違いはない。
強制わいせつの暴行脅迫
暴行・脅迫は、わいせつな行為の実現を可能にする程度で足りるため、完全に抗拒不能(こうきょふのう)にするほど身体を痛めつけたり、精神的に圧迫したりといった状況までは求められません
強盗罪における暴行脅迫
被害者の意思を制圧するに足りる程度,つまり人の反抗を抑圧する程度の強い態様で行う必要があります
強制わいせつ時の暴行脅迫を利用しても強盗とは評価されないようだ。
強姦犯人が殺害の故意をもって被害者を殺した場合成立する罪は?
殺意がある場合は殺人罪との観念的競合とされる。
新法では強制性交等致死罪と殺人の観念的競合
新法でも強制性交等致死罪と殺人の観念的競合
https://www.itojuku.co.jp/pdf/shihou/2A18RX01151.pdf
強盗強姦犯人が殺意をもって被害者を死なせた場合
旧法では強盗殺人と強盗強姦等致死傷の観念的競合
新法 強盗・強制性交等致死罪一罪
新法では241条3項がよってという文言を使っていないことから強盗・強制性交等致死罪一罪のみ成立
強盗と強姦で暴行脅迫の程度に違いはあるのか?
違いはない。
強制わいせつも同じ。従って本件窃盗は強制わいせつの前に行われたか、強制わいせつの際の暴行脅迫を利用していないと判断されたのか。もっとも財物奪取行為は被害者不知であっても強姦の際に行われたら強盗と言っているが。
強制わいせつの前に取り戻した場合には暴行脅迫を加えていないから窃盗になるのは当たり前であり(仮に暴行脅迫があったとしても強盗の要件である抗拒不能と評価される暴行脅迫にあたらない場合もある)、強制わいせつの際はともかく、強制わいせつが終わってある程度時間がたってから奪取するとどうなるのであろうか。
被害者不知でも強盗として処断できるにもかかわらず敢えて窃盗と判断されているのは自分が渡したお金を取り戻そうとした事案であることを多少なりとも考慮されているのではないかとみられなくもない。
だとするとわざわざ窃盗容疑を加えるのはやり過ぎではないだろうか。
そもそもこの事案はお互い納得づくでホテルまで行き、さらには10万円という高額なお金を渡しているのに(無理やり渡したのかもしれないがだとしたら猶更占有は移ってないとも言えるが)何もさせてもらえない(笑)というのはさすがに誰でも腹が立つだろう。確かにだからといって暴力をふるってしまうと負けなわけだが、自力救済は禁止とは言え自分のものを自力で取り返した場合は多少考慮させてもよさそうだ。
とは言え、10万円を取り返した際に一緒に免許証まで奪っているのでこの点やはりやり過ぎだろう。恐らくこの免許証を取得した行為が窃盗と認定されたに違いない。しかし、そうなるとこの免許証についての不法領得の意思がさらに問題となるが。
殺害の故意を持って殺害につき未遂だと罪名はどうなるのか?
強盗殺人未遂新では241②により未遂は人の死傷以外なので殺害の故意があって死亡の結果が生じなくても未遂減軽はない。
強姦致死で殺意があって殺害が未遂だと強姦致死と殺人未遂の観念的競合
強盗強姦の未遂はなにについての未遂の場合か?
(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
新241は殺意のある場合を規定していないが、3項で処罰されるようだ。
仮に強盗強姦犯人が殺人の故意をもって殺害のみ未遂だとどうなるか?
241条3項が殺意のある場合を含むとされているようなので241条3項の未遂?
241② いずれも未遂のとき※人を死傷させたときを除くとなっている
44条によれば未遂を罰する場合は各本条で定めるとなっているが、43条で未遂でいいようだ。https://avance-media.com/keiji/2017072601/3/
強盗殺人未遂なのか?強盗致傷なのか?実際の事件でみてみよう
「どこ走ってるかわかってるのか」と男子高校生に因縁、頭部叩きつけレンチなどで顔面殴りオートバイなど奪ったか 男3人逮捕
警察によりますと、3人は去年10月、常陸太田市内をオートバイで走行中の17歳の男子高校生を駐車場に連れ込み、頭部を地面に叩きつけるほか、レンチなどで顔面を複数回殴るなどしてケガをさせた上、オートバイなどおよそ51万円相当を奪い取った疑いが持たれています。男子高校生は全治およそ2週間のけがをしました。当時、男子高校生がオートバイのエンジンの空ぶかしをして走行していたところ、長山容疑者らが「どこ走ってるかわかってるのか」などと因縁をつけ、「ぶっ飛ばされるか、バイク置いていくかどっちにする」などと脅し犯行に及んだということです。
強盗の際に殺人を犯しても罪名は強盗殺人で罰条は241条3項で、殺意の有無は関係ない。
しかし、殺人と窃盗であれば殺害についての故意が必要となる。
240条では未遂については規定されていない。
仮に殺害についての故意を持ち強盗を犯した場合、被害者がケガを負ったが死ななかったとは強盗殺人未遂になるのか?それとも強盗致傷なのか?罪名と罰条はどうなるのか?
この点判例は債務の返済を免れる目的で殺害しようとして高次機能障害等の傷害を負わせたにとどまった事案で強盗殺人未遂と表現し、他方死刑に処断していることから未遂減軽は適用されていない。
このことからみると、強盗殺人未遂というのは単なる罪名で、適用されている罰条は240条になる。
ということは強盗殺人未遂というのは殺害という故意がある場合の罪名であって、殺害についての故意が必要だとも言える。
そうすると上記の事案では殺害についての故意がなければ強盗殺人未遂とはならない、はずである。このときの殺害の故意についていわゆる未必の故意でもいいのか未必の故意が認定できるのかによって罪名が異なる可能性があるが、いずれにせよ適用罰条は240条で違いはない。
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