法定利息も改正されているがここはひとまずそれは置いておき、利息が発生する場合しない場合、いつから発生するのか、遅延損害金についてはどうなのか?など利息全般について記録しておきたい。
まず、旧司法試験で相殺の過去問を解いていたらこんな問題に手こずる(笑)
昭和37年2
甲は乙に1月1日ある物を代金120万円、その支払期1月末日の約束で売り渡し、即時その引き渡しをしたが、乙が甲に貸金50万円、返済期2月末日、無利息の債権を有していたので乙は3月末日両債権債務につき相殺した。正しいのはどれか。
⑴この相殺により代金債務につき1月1日から2月末日までの利息(遅延利息を含む。以下同じ)全部と代金債務の一部が消滅する。
⑵この相殺により、代金債務につき、3月1日から同月末日までの利息全部と代金債務の一部が消滅する。
⑶この相殺により1月1日から3月末日までの利息全部と代金債務の一部が消滅する。
⑷乙は相殺にあたり代金債務全部についてその利息を消滅させず代金債務50万円を消滅させ得る。
⑸乙がもし代金について3月1日から同月末日までの利息をすでに支払っている場合は相殺により返還を甲に請求できる。
ちなみには正解はゼロ。この当時は正答がゼロのこともある(笑)
⑴は1月1日から代金債務の利息が発生するとしているが、575条②によれば買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しないとされている。本問ではモノを即時引き渡してはいるが代金の支払期は1月末日なのでそれまでは利息は発生しないこととなり、間違っている。
⑵は代金債務につき3月1日からとしておりこれも誤り。
⑶も1月1日からの利息としているので誤りとなる。
⑷相殺に条件をつけることはできない?で誤り
⑸期限前弁済は返還請求できない?706条相殺適状以降は利息は発生しないし、発生しても消滅するとされていることからすると返還請求できそうだが試験的には×であることから、既に支払ったという事実は覆せないと読むべきなのか・・・いずれにしろこれは相殺のはなしであった。
解き方
甲売主 乙買主 支払期日1/末 代金120万
乙貸主 甲借主 返済期日2/末 貸金50万
3/末 乙が貸金と代金を相殺
代金については1/末から3/末までの遅延賠償が当然必要
肢5の利息がどういう意味かは分からないが、約定利息はないため遅延賠償の意味だとすると遅延賠償については1/末から発生し、そのうちの3/1からの分を払っており、その支払い済みのものを返還せよ、という意味だろう。
恐らく相殺適状時からの利息=遅延賠償は不要ではないのか?という観点からの肢だろうと思われる。ではなく、相殺に不足する場合は489によりまず費用や利息に充当するとあるので、返還は請求できない。
相殺適状以降利息は発生しないとしてもそれは50万円の部分についてのみであり、いずれにしろ返還請求できない。
次はこれ
昭和52年52
昭和52年2月1日甲は乙に対して月1分の利息を毎月末に支払う約束で100万円を貸し付ける契約を締結し、同日これを交付した。100万円の返還時期について特に定めなかった。この場合についての次の記述のうち誤りはどれか。
⑴乙が月末に利息を支払わなかったとしても、当然には遅延利息を生じない。
⑵乙は甲より100万円の請求を受けたときから履行遅滞となる。
⑶100万円の債務について乙が履行遅滞となった場合、乙は甲に対し月1分の遅延損害金を支払わなければならない。
⑷乙が交通不便のために期日に履行できなかったとしても履行遅滞の責を免れない。
⑸甲乙間の消費貸借が無効であったが乙は100万円を事業資金に使用した場合、甲からの請求に対して、乙は100万円に年5分の利息をつけて支払わなければならない。
正解は2
遅延損害金については約定していなければ法定利率を請求可能。だが、消費貸借で期限の定めのない場合は請求後相当期間経過後に遅滞となる。
また、利息に対しての遅延利息は1年以上利息を延滞し、催告しても未払いの場合に元本に組み入れる。そのうで元本組み入れ時から算出する。
昭和43年4
甲は割賦販売を業としない乙から昭和42年2月1日にタイプライターを5万円で買い、代金はその月の月末日を第一回として、その後5千円ずつ毎月月末支払う契約を結び1回でも支払いを怠れば期限の利益を失う旨特約した。そして当日タイプライターの引き渡しを受けたにもかかわらず甲はその後1回も代金を支払わず乙から3月31日に代金全額を支払うよう催告をうけた。正しいのはどれか。
⑴甲は5万円とそれに対する昭和42年2月1日からの遅延利息を支払わなければならない。
⑵甲は5万円とそれに対する昭和42年3月1日からの遅延利息を支払えばよい。
⑶甲は5万円と第1回支払分、5千円に対する昭和42年3月1日からの遅延利息と残代金4万5千円に対する昭和42年4月1日からの遅延利息を支払えばよい。
⑷甲は5万円とそれに対する昭和42年4月1日からの遅延利息を支払わなければならない。
⑸甲は利息支払の約束をしたわけではないから5万円を支払うだけでよい。
正解は3
この問題正直分からない。
※追記 改めて解く
解き方 まず事案を整理し、事案だけで導き出せる効果があればそれを前提としておく
2/1売買 乙売主 → 甲買主 代金5万を毎月5千円 2/末1回目
未払い 1回で期限の利益喪失 3/末全額請求
1回目5000円の遅延賠償 2/末から3/末までの分発生済み
肢1 2/1は支払期限ではない
肢2 3/1から発生する遅延利息は5000円に対してのものである
肢3 読み方に注意 5万円と5千円に対する遅延利息ではなく、5千円に対する遅延利息と残代金4万5千円に対する遅延利息と5万円を支払うので〇
この点最初(5万円と5千円)の合計5万5千円に対する遅延利息と読んでしまう。これが日本語の限界かもしれない。
肢4 1回目5000円未払い分の遅延利息も必要。しかし、この文章も4/1からのみを考えると確かに5万円に対しての遅延利息となるので実は必ずしも間違いではない。
ここで、「のみ」がついていれば正しいと言えるだろうが。
肢5 遅延利息=賠償は利息の約定がなくても請求できる。なぜなら賠償だから。
昭和43年17
甲は乙との間で昭和42年2月1日に10万円を返済期6か月後月1分の利息(この利息は利息制限法に違反しない)を毎月末日に支払う合意をし、同年3月1日に甲は乙に10万円を交付した。しかし乙は月末になっても利息を全然支払わず甲も何の催告もしなかった。10万円を交付してから6か月後に甲が乙に対して返還請求する場合、乙が甲に支払う金額として次の記述のうち正しいものはどれか。
⑴甲乙間の2月1日の合意は法的効果を生じないから、乙は元金10万円とこれに対する3月1日から年5分の法定利息を6か月分支払う。
⑵乙は元金10万円とこれに対する2月1日から月1分の利息を支払う。
⑶乙は元金10万円とこれに対する3月1日から月1分の利息を支払う。
⑷乙は元金10万円とこれに対する2月1日から月1分の利息と遅延利息を年5分の割合で支払う。
⑸乙は元金10万円とこれに対する3月1日から月1分の利息と遅延利息を年5分の割合で支払う。
正解は3
〇利息に対して遅延利息はつかない。