使用利益の返還について 不当利得 占有者

民法

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shiho1949/2003/65/2003_65_177/_pdf/-char/ja
703条では返還しろと言われ、189条1項では返還しなくてもいいと言われる(笑)
検索をしていたらこんな問題がヒット。
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/production.wp.s3.agaroot.jp/wp-content/uploads/2018/01/yobikako_H28_minpou.pdf

Dの主張
売買契約 解除

Bに対し支払代金500万の返還請求(機械返還済み)
Bに対し代替品の購入に540万かかったので40万請求
B及びCに対し修理によって価値が増加したとして50万請求

Bは500万は返還するがその他は理由がないと主張
Cも理由がないと主張
また、B及びCは機械の使用料25万を請求

他人物売買契約の解除
BがCのものを勝手に売っているので他人物売買
他人物売買も有効 権利が移転されないだろうということで解除 564により541 542
契約が解除され、かつ機械も返還されているので機械の代金500万の返還請求は妥当。
代替機械の購入費用
代替品購入費用請求の条文上の根拠が分からない。
実質的な損害とみるべきか。
415の債務不履行による損害賠償の請求だとして代替品購入に際しての過分な費用は通常損害か特別損害か。
代替品の購入は通常損害
代替品購入するとしても必ず過分な費用がかかるとは言えず、特別損害とも考えられるが、代替品は通常損害と考えるようだ。
判例の傾向としては商人間の転売利益も通常損害としていることから、Dにとって当該機械は商売道具であり、その商売道具がなくなれば別の機械が必要になることが想定できるため、通常損害と言えるだろう。
ここでちょっと疑問に感じた短答落ちおじさん
DはBに対して40万の請求をしているが、Bそのものは契約当事者ではない。Dはモノを占有しているわけではないので留置権を主張できない。単純な見間違い。やはり短答に毎回落ちるわけだ(笑)
この点解説ではまったく触れられていない。当たり前(笑)
悪意買主の損害賠償請求
本問は他人物売買であり、561条(旧)による損害賠償の請求が認められるか認められないかが論点となっている。判例(S41.9.8)は他人物売買であることを知っている悪意の買主であっても損害賠償の請求が可能であるとしているが561条(旧)は悪意の場合損害賠償請求はできないとしているので矛盾していると言われる。
しかし、これは他人物売買の場合は不可抗力で権利の移転ができなくても善意買主であれば損害賠償請求できると読むべきで、他人物売り主に何らかの過失などがあって権利の移転ができなくなった場合は通常の債務不履行責任の追及が可能ということだろう。
となると、本問のBはCに何の確認もせずに売却しているようなので過失があると言え、損害賠償請求は可能であろう。
損害はいくらになるのか
また、解説ではもともと修理代30万は出費想定をしているのだから実損害は10万だとする。この考え方によれば本来530万で購入する機械を修理代30万値引きして貰い500万にしてもらったということになるだろう。
従って実際の余分な出費は10万であるという認定のようだ。しかしDが返金請求しているのは500万であり、この考え方からすると戻ってくるお金は総額510万になる。当初支払った金額は500万、修理代30万、代替機械代540万を支払っている。総額1070万の支払いで、戻ってくるお金は510万で差し引き560万の支払い。いずれにしろ50万は支払い超過であり、修理代30万が自腹(戻ってこない=戻ってくるお金に含まれる)としても20万は足りないことになる。解説の考え方だと仮に修理代が100万かかっていたら40-100=-60万となり何も得られない、下手をすると支払い?になってしまうのではないか。
要するに何を損害とみるかという事に帰着するが、500万円の機械を30万円かけて修理して、結果540万円の機械を購入しなければならなくなったと考えると修理代云々ではなく代替機械の購入費用が実損害であり、そのうち500万は返金されるということなので40万が妥当だろう。

価値の増加分請求
条文上の根拠は何か?不当利得か?占有者による費用の償還請求か。この点解説は不当利得だが価値が増加している点を重視して196.2をとりたい。
この点Cに対しては不当利得は使えない。またBも利得があるとは言いづらい。
機械を修理した(改良)ことによる価値増加分があるとしても結局代替機械が540万で買えていることから50万もないのではないかとも言えるが、まったく同じ機械でもないから50万の価値が増加することもあるだろう。
とは言え、Bは所有者ではなく占有もしていない。従って請求できるのはCに対してのみ。

機械の使用料請求
Dは当該機械を使い商売をしていたと推察され利益を得ていたと思われる。が、契約は解除されており機械使用の法的根拠を失ったと言え、となるとすくなくとも機械の使用につき法律上の根拠がないこととなるため使用料を支払わなければならない。この点不当利得を採用したが解説のように悪意の占有者を使ったほうがいいだろう(190)。
もっとも、Bについては当該機械の所有権者ではないため使用料の請求はできない。が、判例によれば他人物売買の買主は売り主に使用利益の返還義務があるという。勿論初耳である。

改正

(他人の権利の売買における売主の義務)
第五百六十一条 他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

地味に旧561条がそっくり削除されている。悪意の買主の損害賠償ありませんよ規定はどうなったのだろうか。

http://blog.livedoor.jp/kosekeito/archives/minpou561jou.html
今回の大改正で、他人の権利の売買における売主の担保責任を定めていた改正前の民法561条~564条は、まるごと姿を消します。

 これが何を意味するのかというと、第一に、売主の帰責事由を問わずに損害賠償請求ができるという仕組みではなくなります。

 第二に、売主が瑕疵の有無を知っていたかどうかは、問題になりません。

ということで、他人物売買の悪意買主であっても損害賠償請求できる場合があるわけですね。
そこでいっそのこと損害賠償関係の改正を再確認しておこう。

民法415条(債務不履行による損害賠償)民法改正勉強ノート60

債務の本旨に従った履行をしないとき
債務の履行が不能であるとき      →損害賠償を求めることが可能

※ただし債務者に帰責事由がない場合には、損害賠償責任が免責される 415但し

「債務の本旨に従った履行をしないとき」、履行遅滞、不完全履行、安全配慮義務違反、説明義務違反など
このような場合以前は帰責事由が必要かどうか不明だった

415②填補賠償
履行不能
債務の履行を拒絶する意思を明確に表示
契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生した

以上のようなときは債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる

他人物担保責任など

民法561条(他人物売買における売主の義務)民法改正勉強ノート227
旧560条
買い主への移転義務明記

全部他人物の売買は買い主へ目的物を移転できなかったら単純な履行不能→415損賠、541催告解除、542無催告解除の問題
一部他人物は565条で562追完、563代金減額、564損賠及び解除ができる

民法562条(買主の追完請求権)民法改正勉強ノート228

目的物の不完全履行に対する追完562
買い主に帰責性がある場合は追完請求不可

民法563条(買主の代金減額請求権)民法改正勉強ノート229

催告による代金減額請求563
563①履行の追完の催告後追完なき場合代金減額請求ができる
563②次の場合無催告減額請求可能 ※542無催告解除
①履行の追完が不能である(1号)
②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した(2号)
③いわゆる定期行為について、履行の時期を経過した(3号)
④その他、催告をしても追完を受ける見込みがないことが明らかである(4号)
買い主に帰責事由がある場合はできない

民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)民法改正勉強ノート230

562追完563減額を行っても415損賠、541、542の解除もできる

民法565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)民法改正勉強ノート231

562~564は物
565は権利についてだが内容は562~564を準用しているが結局権利の一部が他人に属する場合を規定している

民法566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)民法改正勉強ノート232

不適合を知った時から一年以内に不適合を売主に通知する必要がある
通知をしなかった場合、買主は、原則として、その不適合を理由とする①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除をすることができない※売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときには、種類又は品質に関する契約不適合を知ってから1年が経った後でも、①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除できる

民法567条(目的物の滅失等についての危険の移転)民法改正勉強ノート233
旧534 債権者主義削除

567①引き渡し後の双方の帰責事由なしでの目的物滅失損傷
買主は追完減額損賠解除をできない、また代金の支払いが拒めない ※旧534は引き渡し前の滅失でも代金支払い義務があった
567②受領遅滞中の々 
受領遅滞中も①と同様

旧571売り主の担保責任と同時履行削除

利得とは何か?転売した利益は入らない。
39年46
AはBと通謀してA所有の時価100万円の不動産をBに仮装譲渡し、移転登記を完了した。その後Bはこれをほしいままに善意のCに150万円で売ってしまい代金は受領したが登記はそのままにしておいた。そのうちBは代金の全額を盗まれてしまった。この場合AのBに対する不当利得返還請求権について次のうちで正しいのはどれか。

⑴AはBに対して150万円の不当利得返還請求ができる。
⑵AはBに対して100万円の不当利得返還請求ができる。
⑶Bには利得が現存しないから、AのBに対する不当利得返還請求はない。
⑷Cが売買という法律上の原因に基づいて不動産を取得したのであるから、AのBに対する不当利得返還請求権はない。
⑸AはCより先に登記をすれば不動産の所有権を確保することができるのであるから、Bに対する不当利得返還請求権はない。

正解は2

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