326条の同意とは

短答過去問

H26 〔第33問〕(配点:3)
次のⅠからⅢまでの【見解】は,刑事訴訟法第326条の同意(以下「同意」という。)の性質
に関する考え方を述べたものである。これらの【見解】について述べた後記アからオまでの【記
述】のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.60])
【見 解】
Ⅰ.同意は,公判において供述者に対し反対尋問を行う権利を放棄することである。
Ⅱ.同意は,公判において証拠能力を付与する訴訟行為である。
Ⅲ.同意は,原供述時において供述者に対し反対尋問を行うことができなかったこと,あるいは
原供述時において裁判所が供述者の供述態度を観察することができなかったことについて,責
問権を放棄することである。
【記 述】
ア.Ⅰの見解に対しては,検察官が請求した被告人以外の者の供述調書について,被告人側がこ
れを同意した上で,その証明力を争うために供述者の証人尋問を請求することができないこと
になるという批判がある。
イ.Ⅰの見解に対しては,捜索差押手続が違法であっても,同意をすれば,同手続の捜索差押調
書は証拠能力を有することになるという批判がある。
ウ.Ⅱの見解に対しては,伝聞法則を反対尋問権の保障の観点からしか理解しておらず,裁判所
による供述態度の観察という直接主義の観点が欠落しているという批判がある。
エ.Ⅱの見解に対しては,同意の性質が伝聞証拠が排除される趣旨と関連しなくなり,刑事訴訟
法第326条が同法第320条第1項で排除される伝聞証拠について証拠能力を認める規定と
なっていることとそぐわないという批判がある。
オ.Ⅲの見解に対しては,刑事訴訟法第326条第1項が被告人の供述調書についても規定して
いることを説明できないという批判がある。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ

正解は2

326の同意の本質は反対尋問権の放棄とみるのが通説だが、実務的には証拠能力の付与として扱われているようである。条解刑事訴訟法P891

見解に対する批判問題の解き方の視点

各説を知らなくても現場思考でなんとか正解できるかもしれない典型問題である。
とは言え、各説の見解からの帰結で変な結論になる場合もあるので(常識的に考えるとありえないような批判や結論が基本書などで堂々と述べられている場合があり、それを知らなければ現場ではそういう結論にはたどり着けないだろうという意味)やはり各説が何を言っているのか、どういう趣旨なのかは最低限押さえておくべきだろう。
正直肢オの責問権の放棄説に対する批判がまったく分からない。
肢のアとイとエが〇のようだが、選択肢から2となる。
ウが明らかに×というのは分かるが、エも?な部分がある。勉強している人ほどそう感じるかもしれない。
「同意の性質が伝聞証拠が排除される趣旨と関連しなくなり」というのは、伝聞証拠は反対尋問を経ていないため証拠から排除されるという趣旨からは同意の性質が証拠能力付与であると考えると関連しなくなるという意味だとして
「326条が同法第320条第1項で排除される伝聞証拠について証拠能力を認める規定となっていることとそぐわない」というのは、条文上確かに「321条乃至前条の規定にかかわらず」となっている点からの批判だと思われるが、326の同意って伝聞証拠だけについて適用されるわけではないのでは?という疑問が湧く。
もっとも、この疑問は各説に対する批判に対する、反論とでも言うべきものかもしれない。
つまり、各説に対して提示されている批判自体がおかしいからと言って、それがその説に対しての批判として成立しないとは必ずしも言えない。
あくまで、その説に対してこういう批判がなされているというだけである。従ってその批判がおかしいとしても(この場合のおかしいというのは論破できるという意味)当該説に対する批判としてまがりなりにも成立していればその組み合わせは適切な組み合わせということになる。
このあたりが現場思考の落とし穴となる。

続く

学説問題はやはり説を知らないと解けない

記事を書いて約2か月後に改めて肢を見ると、さっぱり分からない(笑)。否、分からないというより正解を見てから肢を見ても納得できない。
そこで本問の解説を見てみる。

刑訴法-326条の同意 司法試験平成26年 第33問
エ 正しい

伝聞証拠が排除されるのは、その過程に誤りが混入するおそれがあり、(反対尋問等により)真実性の担保ができないためであると解されます。これに対し、同意によって証拠能力を付与するというbの見解は、上記伝聞法則とは関連が無いことになります。そのため、同意(326条1項)が伝聞例外の一つとされている規定に適合的でないという批判が成り立ちます。

なるほど、やはり各説を知らないと(趣旨及び批判など)文章の論理だけでやろうとするとよくない。

伝聞法則と同意に関連が必要かどうかそもそも疑問だが、本問は当該見解に対しての批判として成立しているかというものだからあくまで批判になっていればいい。
それなのに関連性に引っかかっているのだからお話にならない。

スタディング 司法試験・予備試験講座

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