Contents
出題の趣旨
設問①前段
本件自己株式取得
㋐市場価格を超えているので「市場価格のある株式の取得の特則」(会社法第161条)の適用がなく,
公開会社であるため「相続人等からの取得の特則」の適用がない(同法第162条第1号)にもかかわらず
売主追加請求の通知(同法第160条第2項)を怠ったこと
㋑第1号議案の採決に際して議決権行使が禁止される特定の株主(同条第4項)であるBが議決権を行使したこと
決議の方法が法令に違反している(同法第831条第1項第1号)と見るか,自己の株式の取得に関
する手続違反の一つと見るかによって,株主総会決議取消しの訴えを提起する必要があるかど
うかに違いが生ずることにも留意する必要
これらの手続的瑕疵と本件自己株式取得の効力との関係について論述すること
㋐について
自己の株式の取得に関する手続違反
㋑について
決議の方法が法令に違反している(同法第831条第1項第1号)と見るか,
自己の株式の取得に関する手続違反の一つと見るか
によって,株主総会決議取消しの訴えを提起する必要があるかどうかに違いが生ずることにも留意する必要
㋒本件自己株式取得が財源規制(同法第461条第1項第3号)に違反することを記述した上
これと本件自己株式取得の効力との関係について論述することが求められる
設問①後段
甲社とBとの間の法律関係については,まず,財源規制違反との関係で,会社法第462条の責任について記述すること
設問①前段の結論を踏まえ,Bが受け取った金銭の扱いや本件自己株式取得の対象となった株式の帰属等について,その根拠と併せて検討すること
Bから取得した自己株式を乙社に処分し,乙社がその一部を市場で売却していることから,Bが主張するであろう同時履行の抗弁権をどのように考えるか
設問②
本件自己株式処分の効力について
㋐第2号議案の審議に際して説明義務(会社法第314条)の違反があるか
㋑第2号議案の採決に際して特別利害関係人(乙社)が議決権を行使したことが同法第831条第1項第3号に掲げる場合に該当するかどうか
これらが肯定されるとした場合に,それらが自己株式処分無効の訴え(同法第828条第1項第3号)の無効原因となるか
㋒設問①前段との関連において本件自己株式処分の対象となった自己株式がそもそも有効に取得されたものとはいえないといった瑕疵との関係についても,同様に,無効原因となるかどうかを検討すること
設問③
Cの甲社に対する会社法上の責任について
㋐同法第462条(第1項柱書又は第1項第2号)の責任
㋑同法第465条第1項第3号の欠損塡補責任について記述すること
これらの責任の成否に関しては,Cが「その職務を行うについて注意を怠らなかった」(同法第462条第2項,第465条第1項ただし書)かどうかを検討すること
自己株式取得及び本件自己株式処分に関して,
㋒同法第423条の任務懈怠責任も問題になる
検討に当たっては,設問①②における論述との整合性を意識しながら,何が任務懈怠に当たるのかを分析すること
採点の実感
設問①前段
㋐売主追加請求の通知(会社法第160条第2項)を怠ったこと,
㋑特定の株主(同条第4項)であるBが議決権を行使したこと,
という二つの手続的瑕疵,
㋒財源規制(同法第461条第1項第3号)に違反すること,
という併せて三つの瑕疵がある
㋐の瑕疵は,自己の株式の取得に関する手続違反であって株主総会の決議の瑕疵ではないにもかかわらず,株主総会の招集手続の法令違反であり株主総会決議取消事由にとどまるとする答案が多く見られた
㋑同法第160条第4項本文違反を知らず,特別利害関係人の議決権行使による決議取消しの問題(同法第831条第1項第3号)として論じた答案も少なからず見られた
株主総会の決議方法の法令違反(同項第1号)と見る見解と自己の株式の取得に関する手続違反の一つと見る見解とがあり得るが,採点では,どちらの見解を採っても,その理由等が適切に述べられていれば,同等に評価した
㋒の財源規制違反の瑕疵については,全く検討していない答案が多く,
触れている答案でも,分配可能額を誤っている答案や適用される条項を正しく理解していない答案(同法第461条第1
項第3号ではなく,同項第2号を根拠とするもの,同号には該当しないので財源規制違反とならないとするもの等)がかなり見られた
㋒の瑕疵と本件自己株式取得の効力との関係については,無効説と有効説とがあるが,採点では,どちらの見解を採っても,その理由等が適切に述べられていれば,同等に評価した
㋐,㋑,㋒のそれぞれの瑕疵と本件自己株式取得の効力について検討した結果,その結論が有効と無効とに分かれることがあり得るが,全体として本件自己株式取得の効力をどのように考えるかにつき論理的整合性を意識しながら記述した答案には,高い評価を与えた
㋒の瑕疵について有効説を採った上で,これに加えて㋐又は㋑の瑕疵があったとしても本件自己株式取得は有効であると特に理由を述べないで誤った解答
設問①後段
㋒の瑕疵と本件自己株式取得の効力との関係について無効説・有効説いずれを採る場合であっても,Bは甲社に対して受け取った25億円を支払う義務を負うが(会社法第462条第1項),この点を理解していない答案が多く見られた
本件自己株式取得の効力が無効であるとした場合に,Bの株式の帰すう(Bは依然として当該株式に係る株主であるか等),
甲社とBとの間の不当利得関係,両者が請求権を有するとした場合の同時履行関係等について,論理的整合性をもって論じた答案は,多くは見られなかった
甲社は取得した自己株式をその後処分したから,本件自己株式取得に瑕疵があったとしても本件自己株式取得は有効となるとだけ(それ以上の理由を述べないで)記述した答案も見られた
本件自己株式取得の効力が無効であるとする答案においては,無効を主張することができるのは甲社だけであるか,甲社はBが善意又は善意・無重過失であった場合であっても無効を主張することができるか等,これまで裁判例や学説で議論されてきた点に触れることが求められる(記載箇所としては,設問①前段の解答として触れることでもよい。)が,これに触れていない答案が多かった
設問②
いわゆる有利発行(有利処分)に当たることを前提に,資料①の株主総会参考書類の第2号議案に関する記載において,会社法第199条第3項に基づく説明義務は尽くされていることが示唆されており,株主総会における第2号議案の審議に際して説明義務(同法第314条)の違反があったかどうかが主として論じられるべき事例である
同法第199条第3項に基づく説明義務と株主から説明を求められた場合に取締役等が負う一般的な説明義務(同法第314条)との区別を理解しない答案
前者の違反があったと解答し後者に全く触れない答案も相当見られた
第2号議案の採決に際して乙社が議決権を行使したことが同法第831条第1項第3号の株主総会決議取消事由に該当するかどうか
特に理由を論ずることをしないまま,著しく不当な決議がされたとの結論だけを述べる答案も見られた
これらの瑕疵が肯定される場合に,それらが自己株式処分無効の訴え(同法第828条第1項第3号)の無効原因となるかどうかについて論述することが求められる
自己株式の処分の無効は自己株式処分無効の訴えによってしか主張することができない(同項柱書)ということに触れていない答案がかなり見られた
説明義務違反や特別利害関係人による議決権行使が株主総会決議取消事由となることと自己株式処分無効の訴えとの関係を論じた答案は少なかった
株主総会の特別決議を欠く新株の有利発行は有効であると判示した著名な最高裁昭和46年7月16日第二小法廷判決(判例時報641号97頁)の考え方との関係について論じた答案は更に少なかった
設問①前段との関連で本件自己株式処分の対象となった自己株式がそもそも有効に取得されたものではないという問題点との関係を論理的に記述した答案は高く評価
設問③
本件自己株式取得が財源規制違反であったことを見落とした答案が多く,会社法第462条(第1項柱書又は第1項第2号)の責任をきちんと論じた答案は多くはなかった
同法第465条第1項第3号の欠損塡補責任についても,これを論じた答案は少なく,これに触れた答案であっても,責任を負うべき金額まで正確に示した答案は更に少なかった
同法第423条の任務懈怠責任の検討に当たっては,設問①②における論述との整合性を意識しながら,任務懈怠の内容の分析と,損害額及び因果関係について論理的な記述をすることが求められ,このような記述をした答案には高い評価を与えた
問題
前提事実
甲社(種類株式発行会社ではない、大会社である) 創業者A 1000万株分のうち250万株保有しH21/12死亡
唯一の相続人Bが相続
1号議案(ア)Bが甲社へ市場価格の25%上乗せで全株売却し、2号議案(イ)甲は乙社へ市場価格の80%でそれを売却することに合意
H22/6/1取締役開催し同29日臨時株主総会において上記を議案にすることを決定
※議決権の基準日は年度末の3/31
第1号議案の「取得する相手方」の株主に自己をも加えたものを株主総会の議案とすることを請求することができる旨を通知しなかった
同月29日,定時株主総会を開催
議長であるCは,出席した株主の議決権の3分の2をかろうじて上回る賛成が得られたと判断して,第1号議案が可決されたと宣言
乙社に特に有利な金額で自己株式の処分をすることの理由説明を拒絶
Cは,出席した株主の議決権の3分の2をかろうじて上回る賛成が得られたと判断して,第2号議案が可決されたと宣言
同日,取締役会を開催
1株800円であったため,この価格を25%上回る1株当たり1000円をその取得価格とすることなどを決定
甲社は,Bから,同月30日,甲社株式250万株を総額25億円で取得
甲社は,同年7月20日,乙社に対し,250万株の自己株式の処分を行い,その対価として合計16億円を得た
乙社は,同年8月31日までに,50万株の甲社株式を市場にて売却
平成22年3月31日時点における正しい貸借対照表(【資料③】
粉飾決算は,西日本事業部の従業員が会計監査人ですら見抜けないような巧妙な手口で行ったもので,甲社の内部統制の体制には問題がなく,Cが架空売上げの計上を見抜けなかったことに過失はなかった
甲社の平成23年3月31日時点における貸借対照表を取締役会で承認した時点で,30億円の欠損が生じた
①本件自己株式取得の効力及び本件自己株式取得に関する甲社とBとの間の法律関係
②本件自己株式処分の効力
③本件自己株式取得及び本件自己株式処分に関するCの甲社に対する会社法上の責任
分配可能額の計算
条文を見ると複雑すぎて頭痛がする(笑)
しかし、どうやらこれは覚える必要がなさそうだ。出題の趣旨や採点の実感でかなり罵倒されている理由も分かる。
分配可能額の計算と言っても資料に提示されている情報がそれに必要な最低限の情報しかないので、他の事項についてはそもそも考慮する必要がないからである。
自己株式取得にかかる制限
「その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額」
(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
(
株式の取得に関する事項の決定)
第百五十六条 株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
二 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等(当該株式会社の株式等を除く。以下この款において同じ。)の内容及びその総額
三 株式を取得することができる期間
2 前項の規定は、前条第一号及び第二号並びに第四号から第十三号までに掲げる場合には、適用しない。
そもそも自己株式取得の手続きとか制限とか
今まで20年以上勉強してきてまさに初見(笑)会社法はこういうのが約8割くらいだろう。よくこれで5割くらいとれていたものである。
会社法第四節155条から自己株式の取得について規定されている。
売り主追加請求の通知とは
160②③で特定の株主から自己株式を取得しようとする場合は他の株主に対して自分も加えろと請求できますよという通知をしなければならない。が、
市場価格を超えないなら160③は排除される。161
また、公開会社でなく、当該一般承継人がmだ掃海で議決権を行使していない場合も当該相続人などから自己株式を取得する場合は160③は排除される。162
これを本問についてみると、161および162には該当しないので原則通り160②の通知を行う必要がある。
つまり161と162の規定は160②③の例外規定である。※特則としてある。
もっとも、160③の請求ができないように株主全員の同意でこの規定を排除できるように定款で定めることができる。164
自己株式取得の手続き概観
自己株式を取得できる枠組み決定 156① ※株主総会 定款で剰余金分配についての決定権限を取締役会に与えれば取会でも可
具体的にどれだけ株式を取得するか決定 157① ※取締役or取締役会
決定事項を株主に通知 158① ※取締役 ②公告
159①譲渡申込
申し込みを受けると157①の申込期日で承諾とみなされる 159②
自己株式有利処分はどのような処理になるのか
本問では自己株式処分の効力という形できかれている。
そもそも有利発行、有利処分はどのような要件で認められるのか。
募集事項の決定
199の取締役の説明義務
第百九十九条
3 第一項第二号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
自己株式の処分でも株式を買う人を募集するから募集株式でいいのでしょうね。
募集事項の決定は株主総会ではあるものの、決議方法はどうなるかここには書かれていない。会社法お決まりの形式的に共通するものを見つけ出してグルーピングして余計わからなくする作戦である(笑)
309②5の特別決議らしい。
細かい規定もあるが、書くと余計混乱するので該当箇所参照。リーガルクエスト会社法P295 ※公開会社は取締役会
本問は199③の説明責任は果たしたとなっている。しかし、314条についてはどうなんだと。
314の取締役の説明義務
(取締役等の説明義務)
第三百十四条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。
なんとでも言えそうな規定である。保留しておこう。
自己株式処分の無効とは
昭和46.7.16判決紹介判例にはまったく理由が記載されておらず判決をさらに紹介されていたのでどこのたらいまわしだよなどと思いながら以下の判例を参照。
昭和40.10.8判決
新株発行は、むしろ、会社の業務執行に準ずるものとして、
取り扱つているものと解するのを相当とすべく、右株主総会の特別決議の要件も、
取締役会の権限行使についての内部的要件であつて、取締役会の決議に基づき代表
権を有する取締役により既に発行された新株の効力については、会社内部の手続の
欠缺を理由にその効力を否定するよりは右新株の取得者および会社債権者の保護等
の外部取引の安全に重点を置いてこれを決するのが妥当であり、従つて新株発行に
つき株主総会の決議のなかつた欠缺があつても、これをもつて新株の発行を無効と
すべきではなく、取締役の責任問題等として処理するのが相当である
ということで、そこにどのような高尚な理屈があるのかはよく分かりませんが新株発行につき取締役会の決議がなくても発行無効にはならず、別途取締役などの責任問題となるという事らしいです。
自己株式取得の際の財源規制違反という責任
本問ではCの甲社に対する会社法上の責任という形できかれている。
462 465 及び423任務懈怠責任
462条の責任は、自己株式の取得が仮に有効であっても発生する責任だということに注意を要する。採点の実感で知った(笑)
無効にしなくても分配可能額を超える部分は返還させる事ができるとも考えられるが、それはそれでまた別問題が発生しそうだ。
第六節 剰余金の配当等に関する責任
(配当等の制限)
第四百六十一条 次に掲げる行為により株主に対して交付する金銭等(当該株式会社の株式を除く。以下この節において同じ。)の帳簿価額の総額は、当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。
一 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求に応じて行う当該株式会社の株式の買取り
二 第百五十六条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得(第百六十三条に規定する場合又は第百六十五条第一項に規定する場合における当該株式会社による株式の取得に限る。)
三 第百五十七条第一項の規定による決定に基づく当該株式会社の株式の取得
四 第百七十三条第一項の規定による当該株式会社の株式の取得
五 第百七十六条第一項の規定による請求に基づく当該株式会社の株式の買取り
六 第百九十七条第三項の規定による当該株式会社の株式の買取り
七 第二百三十四条第四項(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による当該株式会社の株式の買取り
八 剰余金の配当
2 前項に規定する「分配可能額」とは、第一号及び第二号に掲げる額の合計額から第三号から第六号までに掲げる額の合計額を減じて得た額をいう(以下この節において同じ。)。
一 剰余金の額
二 臨時計算書類につき第四百四十一条第四項の承認(同項ただし書に規定する場合にあっては、同条第三項の承認)を受けた場合における次に掲げる額
イ 第四百四十一条第一項第二号の期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ 第四百四十一条第一項第二号の期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
三 自己株式の帳簿価額
四 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
五 第二号に規定する場合における第四百四十一条第一項第二号の期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
六 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
(剰余金の配当等に関する責任)
第四百六十二条 前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。
一 前条第一項第二号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役(当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)
ロ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役(当該取締役会に議案を提案した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)
二 前条第一項第三号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
三 前条第一項第四号に掲げる行為 第百七十一条第一項の株主総会(当該株主総会の決議によって定められた同項第一号に規定する取得対価の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合における当該株主総会に限る。)に係る総会議案提案取締役
四 前条第一項第六号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
五 前条第一項第七号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
六 前条第一項第八号に掲げる行為 次に掲げる者
イ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役
ロ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役
2 前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。
3 第一項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。
(特定の株主からの取得)
第百六十条 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。
4 第一項の特定の株主は、第百五十六条第一項の株主総会において議決権を行使することができない。ただし、第一項の特定の株主以外の株主の全部が当該株主総会において議決権を行使することができない場合は、この限りでない。
5 第一項の特定の株主を定めた場合における第百五十八条第一項の規定の適用については、同項中「株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)」とあるのは、「第百六十条第一項の特定の株主」とする。
自己株式処分無効と株主総会決議取消
828①3で自己株式処分無効の訴えができるが、総会特別決議がないことは無効事由にあたらないという判例がでていることは前述。しかし、これは特別決議がない場合のはなしであり、本問の場合は160④に違反したり、特定の株主が議決に参加したりしているので無効という結論を導いてもよさそうだ。
とは言え、無効にするとこれはこれで厄介である。そもそも無効にしなくても462①でお金を返還させることができる。もっともこの場合株だけで不本意な金額で譲渡させられてしまいかねないので株主Bは大損したと思い損害賠償を請求するかもしれない。
他方株主総会決議取消権はどうか。
株主総会決議取消の訴えとは
〇取消
手続き決議方法 法令定款違反
決議内容 定款違反
〇無効
決議の内容 法令違反
〇不存在
解釈 ※開催されていないとか
判決の効力
第三者効あり
遡及効 834条13~17 他将来効
(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第八百三十八条 会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。
(無効又は取消しの判決の効力)
第八百三十九条 会社の組織に関する訴え(第八百三十四条第一号から第十二号の二まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。
(被告)
第八百三十四条 次の各号に掲げる訴え(以下この節において「会社の組織に関する訴え」と総称する。)については、当該各号に定める者を被告とする。
一 会社の設立の無効の訴え 設立する会社
二 株式会社の成立後における株式の発行の無効の訴え(第八百四十条第一項において「新株発行の無効の訴え」という。) 株式の発行をした株式会社
三 自己株式の処分の無効の訴え 自己株式の処分をした株式会社
四 新株予約権の発行の無効の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
五 株式会社における資本金の額の減少の無効の訴え 当該株式会社
六 会社の組織変更の無効の訴え 組織変更後の会社
七 会社の吸収合併の無効の訴え 吸収合併後存続する会社
八 会社の新設合併の無効の訴え 新設合併により設立する会社
九 会社の吸収分割の無効の訴え 吸収分割契約をした会社
十 会社の新設分割の無効の訴え 新設分割をする会社及び新設分割により設立する会社
十一 株式会社の株式交換の無効の訴え 株式交換契約をした会社
十二 株式会社の株式移転の無効の訴え 株式移転をする株式会社及び株式移転により設立する株式会社
十二の二 株式会社の株式交付の無効の訴え 株式交付親会社
十三 株式会社の成立後における株式の発行が存在しないことの確認の訴え 株式の発行をした株式会社
十四 自己株式の処分が存在しないことの確認の訴え 自己株式の処分をした株式会社
十五 新株予約権の発行が存在しないことの確認の訴え 新株予約権の発行をした株式会社
十六 株主総会等の決議が存在しないこと又は株主総会等の決議の内容が法令に違反することを理由として当該決議が無効であることの確認の訴え 当該株式会社
十七 株主総会等の決議の取消しの訴え 当該株式会社
十八 第八百三十二条第一号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社
十九 第八百三十二条第二号の規定による持分会社の設立の取消しの訴え 当該持分会社及び同号の社員
二十 株式会社の解散の訴え 当該株式会社
二十一 持分会社の解散の訴え 当該持分会社
条文マップ
第二章 訴訟
第一節 828 以下に会社の組織に関する訴えなどが規定されている。
(会社の組織に関する行為の無効の訴え)
第八百二十八条
(新株発行等の不存在の確認の訴え)
第八百二十九条
(株主総会等の決議の不存在又は無効の確認の訴え)
第八百三十条
(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条
(持分会社の設立の取消しの訴え)
第八百三十二条
(会社の解散の訴え)
第八百三十三条