意思表示の効力発生と契約の成立時期 改正

隔地者間の契約成立時期

今般地味に97条なども改正されている。
以前は、隔地者に対する意思表示という表題が便宜上つけられていた。

今は効力発生時期と言うらしい。これはあくまで意思表示が効力を発生する時期はいつかという問題である。

(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。
3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

以前の規定は要するに隔地者間においての意思表示についての規定だったわけで、改正では隔地者に限っていない。そもそも隔地者に限る意味があったのか疑問だが。
ある意味当然のことを定めた規定だったわけだが、それが当然ではなくなっていたのが旧526だった。承諾通知を発すると契約は成立すると。しかし、ここでもまた、じゃあ効力はどうなるなどのいわゆる教科書問題で我々受験生を愚弄していた試験委員会(笑)
そもそも97と526は別の規定であるにもかかわらず、まるで特則扱いのようにしていたので本質を見失っていたのだが、97条はあくまで意思表示の効力発生時期で、526は契約の成立時期の規定。

今回の改正でも意思表示の効力発生時期は変わっていない。が、526がきれいに削除されている。従って契約の成立時期も承諾通知が到達したときになるようだ。
もっとも、97条はあくまで意思表示の効力発生時期を定めるものだから、契約の成立とは違うという考え方も成り立たないではない。対話者間なら別だが、離れた場所にいる者同士の場合、意思表示が合致するにはタイムラグがある。そういう意味もあって契約の成立時期を別に考えたのだろう。
そもそも意思表示が到達したというのはいつの時点を言うのか。ネット広告を見て申し込んで、それに対する承諾通知なのか。逆に申込が承諾なのか。

この点について522①に規定がある。

(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

隔地者間に限っていない。
承諾したときとはいつか。これを一般的には承諾が到達した時としているようだが、こんな言い回しもいかようにも解釈できる。承諾したときを文字通り承諾をした今と解釈することだってできそうである。

いずれにしろ、隔地者間であっても承諾通知が到達したときに契約が成立するということでいいようだ。

申込者死亡の場合

以前は 申込者が反対の意思表示をしているか死亡の事実を知ったら97②を適用しないとしていた。要するに到達前に死亡か到達前に死亡を知っていたら無効になる。
別の見方からは、到達後に死亡or到達後に死亡を知ったら有効。 新債権法の論点と解釈P272

改正526は
 A 死亡、意思無能力、行為無能力の場合は無効になるという意思表示をしていた
 OR
 B 相手が承諾を発するまでにその事実を知った                以上の場合無効

(申込者の死亡等)
第五百二十六条 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

Aの場合、承諾を発してそれが到達したとしてもAの事実が判明すれば無効ということだろうか。
Bに言うその事実とは死亡、意思無能力、行為無能力の事実なのか、それともAの事実なのか。
重箱の隅をつつこうと思えばいくらでもつつけそうだが。

 

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