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出題の趣旨
設問1
捜索差押許可状に基づき,捜索実行中に同事務所社長室に届いた従業員乙宛ての宅配便荷物を開封したこと(捜査①)
その荷物の中から覚せい剤を発見し,乙を現行犯逮捕した後に同事務所更衣室に設置された乙の使用するロッカー内を捜索したこと(捜査②)
捜査①の事例への適用に当たっては,
(有効期間)捜索場所に捜索実行中に届いた荷物であることと有効期間内における捜索が許可されたこととの関係,
(T会社の管理権)乙宛ての荷物であることとT株式会社の管理する場所内の捜索が許可されたこととの関係,
(覚せい剤が存在する蓋然性)平成23年10月5日に捜索場所に新たに持ち込まれた乙宛ての物であることと被疑事実(同月2日の甲による覚せい剤の営利目的所持)に関連する覚せい剤等の捜索が許可された
こととの関係に分けて論ずることが必要
有効期間との関係
令状発付後捜索開始前に持ち込まれた物であってもその捜索差押えは適法であること
裁判官がどの時点における捜索する正当な理由を審査しているのか,各自の見解を説得的に論ずる必要
最高裁判例(最決平成19年2月8日刑集61巻1号1頁)※理由なし
T株式会社の管理権との関係
被疑事実は代表者甲に対するもの
荷物の宛名は乙であるが,送付先はT株式会社であること
裁判官にとっても同社事務所に従業員がいると当然予想されたところ,現に令状発付前から同社事務所で従業員が働いていることが判明していたこと
乙は同社の従業員であること
携帯電話に残されたメール内容等によれば,甲と乙は共同して覚せい剤を密売しており,丙から甲が乙宛ての荷物の中身を分けるように指示されていて甲が乙宛ての荷物の管理・支配を委ねられているとうかがえること
乙宛ての荷物にT株式会社の管理権が及んでいるかどうか論ずる必要
被疑事実と関連する覚せい剤が存在する蓋然性との関係
被疑事実の中に営利目的が含まれていること,
甲が同社事務所社長室で覚せい剤取締法違反の検挙歴ある者に覚せい剤を売ろうとし,同社事務所に同検挙歴のある者数名が出入りしていて被疑事実についても常習的犯行の一環であると推測されること
甲が同社事務所社長室で覚せい剤を売ろうとし,
同社事務所に同検挙歴のある者数名が出入りしていて被疑事実についても常習的犯行の一環であると推測されること
前記メール内容等から甲,乙が覚せい剤を共同して密売していることがうかがえ,被疑事実についても乙が共犯者である可能性があること,
このメール内容等と符合するように指定された日時場所に甲宛てと乙宛ての2つの荷物が同時に届き,それぞれの伝票の筆跡が酷似し,記載された内容物はいずれも書籍であるだけでなく,同一の差出人名でその所在地の地番が実在せず電話番号も未使用であること
荷物が届いた際の甲,乙の会話内容が不審であり,司法警察員Kから荷物の開披を求められても乙は拒絶したこと等
捜査②のうち捜索差押許可状に基づく捜索
乙使用のロッカーであることとT株式会社の管理権との関係
乙使用のロッカーであることと被疑事実と関連する乙の携帯電話や手帳等が存在する蓋然性との関係に分けて論ずることが必要
T株式会社の管理権との関係
通常,裁判官は捜索すべき場所に存在する備品等の物や会社事務所に従業員がいることを含めて当該場所を捜索する正当な理由を判断している乙は同社の従業員であること
同ロッカーは同社が管理しており同事務所社長室にマスターキーがあったこと等
同ロッカー内にT株式会社の管理権が及んでいるかどうか,同社から貸与された乙による事実上のロッカーの使用がT株式会社の管理権とは別に独立して保護に値するものかどうか論ずる必要がある
被疑事実と関連する乙の携帯電話や手帳等が存在する蓋然性との関係
現に乙宛ての荷物の中から覚せい剤が発見されたこと
甲が「隣の更衣室のロッカーにでも入っているんじゃないの。」と答えたこと
同ロッカーの中を見せるように求められても乙は拒絶したこと等
捜査②のうち現行犯逮捕に伴う捜索
なぜ「逮捕する場合において」令状なくして捜索を行うことができるのかという制度の趣旨
「逮捕の現場で」の解釈を明確にした上で,各自の見解とは異なる立場を意識して事例中に現れた具体的事実を的確に抽出,分析しながら論ずる
更衣室は同じT株式会社事務所にあるだけでなく,社長室の隣室であること,同じ同社の管理権が及んでいること,逮捕された被疑者は乙であり,ロッカーも乙以外の他人が使用するものではなかったこと等を検討し,逮捕の現場といえるかどうか論ずる必要がある
現行犯逮捕の被疑事実との関連性についても触れるべき
設問2
格別の手続的な手当てを講じないまま判決で公訴事実に記載されていない丙との共謀を認定したこと
被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし,被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ,かつ,判決で認定される事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとって不利益であるとはいえない場合には,訴因変更をせずに訴因と異なる認定をしてよいとする最高裁判例(最決平成13年4月11日刑集55巻3号127頁)
本事例が,同判例の事案と様々な点で異なるものであることは明らかであるから,本事例における具体的事実の分析,評価に関しては特に留意を要する
共同正犯と単独犯については構成要件が同一なのか異なるのか
処罰する際に適用すべき法条として刑法第60条が新たに加わること
検察官の主張する訴因には一切共謀に関する記載がないこと
裁判所が認定した事実は弁護人が第1回公判期日の罪状認否で主張した事実と同一であること
等を検討し,訴因変更を要するか否か論ずる必要がある
共謀の事実の存否については罪となるべき事実に属し厳格な証明を要するとした最高裁判例(最判昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁)が存在する
採点実感
設問1の捜査①
令状裁判官が捜索差押許可状により捜査機関にいかなる捜索を許可したのかについて意識し,
捜索場所に捜索実行中に届いた荷物であることと有効期間内における捜索が許可されたこととの関係,
乙宛ての荷物であることとT株式会社の管理する場所内の捜索が許可されたこととの関係,
平成23年10月5日に捜索場所に新たに持ち込まれた乙宛ての物であることと被疑事実(同月2日の甲による覚せい剤の営利目的所持)に関連する覚せい剤等の捜索が許可されたこととの関係
に分けて論ずる必要がある
乙宛ての荷物とT株式会社の管理権との関係及び被疑事実と対象物との関連性については全く言及しない答案が数多く見受
けられ,
特に証拠物(覚せい剤)が存在する蓋然性さえあれば,侵害することが許可された管理権(T株式会社の管理権)の範囲を超えて捜索できるといった誤った理解を前提としている
捜査②のうち令状に基づく捜索
乙使用のロッカーであることとT株式会社の管理権との関係,
乙使用のロッカーであることと被疑事実と関連する乙の携帯電話や手帳等が存在する蓋然性との関係に分けて論ずる必要がある
被疑事実と対象物との関連性について全く言及しない答案が数多く見受けられた
会社事務所という場所に対する令状の効力がその場所内に設置されている乙使用のロッカー内に及ぶかという捉え方をせず,被疑者甲に対する令状の効力が乙にも及ぶかという誤った捉え方をした答案
捜査①と同様に証拠物が存在する蓋然性さえあれば,T株式会社の管理権の範囲を超えて捜索できると考えているかのような答案も目立った
捜査①ではT株式会社の管理権の点を検討しないまま乙宛ての荷物を開封することについて適法とし,捜査②では乙による事実上のロッカーの使用を重視して乙使用のロッカーを開錠することについて違法とした答案が相当数見受けられた
捜査②のうち現行犯逮捕に伴う無令状捜索について
乙使用のロッカーが事務所更衣室にあることと「逮捕の現場で」との文言との関係,乙使用のロッカーであることと逮捕事実と関連する乙の携帯電話や手帳等が存在する蓋然性との関係に分けて論ずる必要がある
逮捕事実と対象物との関連性については全く言及しない答案が数多く見受けられた
捜索することが可能な場所はたとえ逮捕の現場に該当するとしてもT株式会社の管理権が及ぶ範囲に限定されると考えなければならないのに,乙の管理権が及ぶ範囲については捜索可能である,又は,T株式会社の管理権が及びさえすれば,逮捕の現場を超えてでも捜索できるといった誤った理解
設問2のうち判決の内容について
証拠上存否いずれとも確定できない事実を判決で認定してよいかが基本的な問題
有罪判決における犯罪の証明及び利益原則の意義を意識していかなる内容の判決をなすべきか各自の考えを明らかにして論ずる必要がある
有罪判決における犯罪の証明及び利益原則の意義などに発展させて論述している答案はごく僅か
判決に至る手続について
訴因変更の要否を論ずる必要
最高裁判例(最決平成13年4月11日刑集55巻3号127頁)は,審判対象を画定するのに必要な事項に変動があ
る場合には被告人の防御に不利益か否かにかかわらず訴因変更を要するとしているのに,
共謀の存否が審判対象を画定する事項に当たるとしながら,被告人の防御の利益を害しないから例外的に訴因変更は不要であるとする答案が少なからず見受けられた
犯罪の日時,場所及び方法等をもって構成要件に当てはまる具体的事実を記載したものが訴因であるという最も基本的
な事項についての理解が浅薄で,
共謀の存否に関し,極めて安易に審判対象を画定するのに必要な事実でない,罪となるべき事実でない,情状にすぎないなどとする答案が多数見受けられた
前記判例の事案は,審判対象を画定するのに必要ではない事項を検察官が訴因に明示した場合であり,本事例との間に極めて大きな違いがあるにもかかわらず,これを明確に意識して論じた答案はごく少数であった
甲と丙が共同正犯として同時に起訴された場合に判決で甲丙間の共謀が認められずに甲は単独犯,丙は無罪となるのが縮小認定(一部認定)
単独犯の縮小認定により共同正犯と認めることができるので訴因変更の手続は不要であるとの結論のみを記載した答案も相当数見受けられた
問題
被疑者を「甲」,犯罪事実の要旨を「被疑者は,営利の目的で,みだりに,平成23年10月2日,H県I市J町○丁目△番地所在のT株式会社において,覚せい剤若干量を所持した。」として捜索差押許可状の発付を請求
裁判官は,捜索すべき場所を「H県I市J町○丁目△番地T株式会社」,差し押さえるべき物を「本件に関連する覚せい剤,電子秤,ビニール袋,はさみ,注射器,手帳,メモ,ノート,携帯電話」とする捜索差押許可状を発付
甲に前記捜索差押許可状を呈示した上で,捜索に着手
同社長室内において,電子秤,チャック付きの小型ビニール袋100枚,注射器50本のほか甲の携帯電話を発見してこれらを差し押さえた
同日午後3時16分,T株式会社事務所に宅配便荷物2個が届き,Wがこれを受領した
1個が甲宛て,もう1個は乙宛てであったが,いずれも差出人は「U株式会社」,内容物については「書籍」と記載されていた上,伝票の筆跡は酷似し,外箱も同じ
甲宛ての荷物を甲に,乙宛ての荷物を乙に渡した
荷物を自分の足下に置いた
丙なる人物から送信された「ブツを送る。~ 10月5日午後3時過ぎには届く~」というメールを甲の携帯電話に発見した
甲から乙宛てに送信した「丙さんから連絡~ 10月5日午後3時過ぎには,新しいのが届く~」と記載されたメールを発見
伝票に記載されていた「U株式会社」の所在地等について部下に調べさせたところ,その地番は実在せず,また,電話番号も現在使用されていないものであることが判明
司法警察員Kは甲及び乙に対し,それぞれの荷物の開封を求めた
要請を拒否
説得を繰り返したが,甲及び乙は応じなかった
司法警察員Kは,同日午後3時45分,乙宛ての荷物を開封した[捜査①]
荷物の中から大量の白色粉末が発見された
甲宛ての荷物を開封
乙宛ての荷物の半分くらいの量の白色粉末が発見された
甲及び乙に覚せい剤かどうか調べさせてもらうぞと言った
甲は「調べるなり何なり好きにしていい」
乙は「俺宛てのものも調べてもいい」
いずれも覚せい剤である旨の結果が出た
同日午後3時55分,甲及び乙を,いずれも営利目的での覚せい剤所持の事実で現行犯逮捕
それぞれに伴う差押えとして,各覚せい剤を差し押さえた
覚せい剤密売の全容を明らかにするためには,乙の携帯電話や手帳等を押収する必要があると考え
同日午後4時20分,社長室の壁に掛かっていたマスターキーを使って同ロッカーを解錠し,捜索を実施した[捜査②
乙のロッカーであることは確認できたものの,差し押さえるべき物は発見できず
甲について,営利の目的で,単独で,覚せい剤100グラムを所持した事実(公訴事実の第1事実),
営利の目的で,乙と共謀して,覚せい剤200グラムを所持した事実(公訴事実の第2事実)
乙についても,営利の目的で,甲と共謀して,覚せい剤200グラムを所持した事実で,H地方裁判所に起訴
弁護人Bは公訴事実の第1事実及び第2事実いずれについても,丙との共謀が成立することを主張
裁判所は
①甲らが,営利の目的で,同日同所において,各分量の覚せい剤を所持した事実自体は認められる
②各覚せい剤の所持が,丙との共謀に基づくものである可能性はあるものの,共謀の存否はいずれとも確定できない
③仮に甲らと丙との間に共謀があるとした場合,甲らは従属的立場にあることになるから,甲らと丙との間に共謀がない場合よりは犯情が軽くなる,と考えた
参考答案
家宅捜索中に配達された荷物を捜索、開封できるのか問題
捜索差押については細かい論点とも言えないような条文に現れていない規範とも言うべきものが多い。
これらを断片的に丸暗記しようとするとドツボにハマる。とは言え、それでも合格できてしまうのが新司法試験と言えるが。
捜索、差押ってナンデスカ?
捜索は要するに証拠を探す、差押は証拠を押収する。
捜査機関がこれらを好き勝手にやったらたまったものではないから裁判所官の発付する許可状が必要になる。
結局、裁判所が一体どこからどこまでを許可しているのか?あるいは許可状の文言通りなのか?とか、実際に現場で捜索をしている場合に許可状に想定されていないような事態が起こった場合にどこまでが適法でどこから違法になるのかが問題となっている。
これまでの判例の積み上げの結論だけ覚えられる人はそれでいいが、そう覚えきれるものではないし、判例そのままの事案が問題にでるとも限らない。
本問も紹介判例とは事案が違うし、そもそも理由が書かれていないので結論だけ論述してもほぼ点数はもらえないだろう。
判例を理解するというのは判例のロジックを理解して、事案にどのように法律を適用するかということになる。
判例を知らなければそのロジックを知らないから問題が解けないでは実務では役に立たない。法律を解釈適用する際のロジックは結局のところその法律の制度趣旨的なものから導き出すしかない。
そこから各事案に当てはめていく作業をして妥当と思われる説得的な議論を展開していけば判例と違う結論であろうとも論理的整合性があれば文句は言えないはずだ。
問題に判例に触れろ、などと書かれていれば別だが、判例に触れなかったからと言って不合格にすることはできないだろう。
被告人(被疑者)以外の物や場所の捜索
102条に捜索の対象や要件が規定されている。これによれば被疑者以外の者の物や場所でも押収しようとする物があるだろうという蓋然性があれば捜索できることになるが、もとより捜査機関が行う場合は許可状への記載が必要だと思うが、102②にあたれば許可状に記載がなくても捜索が許されるということなのか。そうではないだろう。
この点採点実感には、「証拠物が存在する蓋然性さえあれば,T株式会社の管理権の範囲を超えて捜索できると考えているかのような答案も目立った」とあるので、この表現からすると証拠物が存在する蓋然性があるだけで管理権の範囲を超えて捜索できるわけではない、と考えていいだろう。
218捜査機関の行う捜索押収は222①③により以下準用
99 差し押え
100 郵便物
102 捜索
103 職務上の秘密
104 内閣の承諾
105 押収を拒むこと
110 提示
111 必要な処分
112 出入り
114 公務所内
115 女子の身体
116 夜間
117 賭博、富くじ
118 閉鎖
119 証明書
120 目録
121 不便な押収物
122 売却
123 還付
124 還付
第百二条 裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる。
② 被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。
許可された場所 管理権の及ぶ場所
107条には捜索状、差押状に記載すべき事項が規定されているが、これは言い換えればこれらの事項について許可されたということである。
憲法35条2項では「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」と規定され、一切の証拠物を押収するようないわゆる一般令状、1個の令状で数個の場所を捜索することや、同一場所を数回にわたって捜索することは禁止される。実例中心捜査法解説P186
従って格別の令状とは、捜索により侵害されることとなる場所の管理権ごとに令状を要する。実例中心捜査法解説P192
通常の感覚では、当該場所にあったとしても他人の物などは捜索できない。
しかし、当該場所の管理権が及んでいるとすれば可能というロジックである。
本問のように捜索場所に配達された物であっても当該場所の管理権が及んでいれば(変な表現だが)当然中身を開封したりして確認できる。必ずしも被疑者宛てである必要はないことになる。
出題の趣旨で、有効期間との関連が殊更言及されているのはよく分からないが、配達場所は会社で宛名は乙の場合にT会社の管理権が及ぶかどうかの事実認定の話だと、以上のようなことが書けていれば正直どっちでもよさそうだ。
被疑事実と対象物との関連性についての言及
出題の趣旨及び採点実感でも指摘があったが、正直これはいらないと思っていた。
なぜなら、乙宛ての荷物は被疑者以外の物だから、捜索するに押収する物があるという蓋然性があれば可能としても結局許可状に記載がないから、この点を書くだけ無駄だと思っていたからである。
しかし、よくよく考えるとそもそも許可状に配達されてくる荷物などという記載はない。勿論、記載されている物に含まれているという考え方もできるが。しかし、これは差押物件の話だし、その前段階の捜索の場合はやはり管理権が及んでいるだけでいいのじゃなかろうか。
ちょっとよくわからない。
第百七条 差押状、記録命令付差押状又は捜索状には、被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者又は捜索すべき場所、身体若しくは物、有効期間及びその期間経過後は執行に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判長が、これに記名押印しなければならない。
② 第九十九条第二項の規定による処分をするときは、前項の差押状に、同項に規定する事項のほか、差し押さえるべき電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、その電磁的記録を複写すべきものの範囲を記載しなければならない。
③ 第六十四条第二項の規定は、第一項の差押状、記録命令付差押状又は捜索状についてこれを準用する。
共謀は公訴事実に含まれていないと認定してはいけないのか
言い換えると共謀共同正犯として有罪にするには、共謀を公訴事実、訴因に含んでおかなければいないのか。
結論から言うと、当然そうなる。
もし、書き洩らしていれば訴因変更する必要がある。
しかし、不意打ちにならないような場合であれば訴因変更不要。これは共謀だけの話ではなく、訴因変更全般について言えることである。
本問がややこしいのは実は「証拠上存否いずれとも確定できない事実を判決で認定」している事である。
333①では「犯罪の証明があったときは」と規定している。「犯罪の証明とは通常人であればだれでも疑いをさしはさまない程度に真実らしいとの確信(最判昭23.8.5集2.9.1123)即ち、合理的な疑いを容れない程度の確信が得られたことをいう。」条解刑事訴訟法P924
従って、共謀がどうあれ333①に違反していることになる。
もっとも、これだけ書いても点数は貰えないだろう。
第三百三十三条 被告事件について犯罪の証明があつたときは、第三百三十四条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。
② 刑の執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない。猶予の期間中保護観察に付する場合も、同様とする。
また、問題は甲に対する判決で資料2の事実を認定しているが、資料1と資料2がまったく同じ形式で書かれており分かりにくい。当初検察官は甲と乙の共謀で起訴しているため、恐らくこれは訴因に含まれているはずである。となれば、公訴事実(資料1)にもその旨記載があるはずであるがないのは理由があってのことだろうか(略されている部分にあるのかもしれないが)。なくてもそもそも認定されていないし問題ないと言われればそれまでだが、だとすると問題文の詳細な説明は混乱を招くためだけのものなのか。
確かに、認定事実は丙との共謀であり、検察官はその点は主張していないが非常にわかりにくい問題構成になっている感は否めない。
実際は基本的な事が聞かれているのだが、出題の趣旨も採点実感も非常に回りくどく、無駄に難しく考えさせるような解説だし問題のつくりである。このあたりが受験生の点数が伸びなかった理由かもしれない。