出題の趣旨
Ａに採石をやめさせる処分の可能性
当該採取計画に係る採取場の周辺に森林を所有し林業を営むＤによる義務付け訴訟の可能性
設問１ 要綱どおりの保証を受けずになされた認可申請に対する拒否処分の可能性
法第３３条の４が採石認可に関して都道府県知事に裁量をどの範囲で認めているか
採石認可に係る法及び法施行規則の規定並びに採石認可の性質を踏まえて論じること
法第３３条の２第４号・第３３条の３第２項・法施行規則第８条の１５第２項第１０号 はいずれも跡地防災保証については明示していない
法第３３条の４が「公共の福祉に反すると認めるとき」という抽象的な要件を規定している
跡地防災保証の必要性が認められ得るが，その必要性の有無や程度は地域の実情によって異なり得る
跡地防災保証を考慮に入れて認可の許否を決する裁量が都道府県知事に認められないか，検討すること
本件要綱の法的性質及び効果について
裁量を前提とした裁量基準（行政手続法上の審査基準）に当たると解することが可能
裁量基準としての合理性が認められれば，必要な書類の添付を求めることも適法といえないか，検討すること
岩石採取に当たり跡地防災保証を求め，さらにＣ組合という地元の特定の事業者団体を保証人とする要綱の定めがどの程度合理性を有し，逆にどの程度例外を認める趣旨か
Ｃ組合による跡地防災保証をＡに対する採石認可の要件とすることの適法性を論じること
設問２
採点実感
設問１
行政法規にいう行政処分の「条件」の意味を誤解してつまずき，的外れな方向に論述を進めてしまう答案
処分要件を十分検討しないまま行政裁量を援用し，論述が粗雑になる答案
本件要綱の関係する規定」が採石法第３３条の７第１項の「条件」に該当するという答案が続出
条例論の枠組みで要綱の許容性を論じている答案
要綱を附款あるいは附款の一種である条件として，採石法第３３条の７第２項の要件を検討する答案
附款の概念の理解に欠けている
本件要綱の法的性格を検討することなく，それが採石法及び採石法施行規則の趣旨に合致するものであれば，国民に対する法的拘束力を有するとした答案
審査基準の一般的な合理性の問題と，個別の申請に対してＢ県知事がいかなる判断をすべきかの問題との区別が十分に理解できていないように思われる
設問２
法令上の明文の根拠によらない撤回について，法令上の根拠の点だけでなく，授益的行政処分である以上，撤回は制限を受けることまで検討が至っている答案は少なかった
設問３
特筆すべきものなし
要綱と付款と通達と裁量と
設問１は、
本件要綱の関係する規定が法的にどのような性質及び効果をもつかを明らかにしながら
Ｂ県知事がＡに対し採石認可拒否処分をすることは適法か
を論じさせている。
普通に考えると、要綱が条件に該当するような印象を受けそうだが。完全に間違っていた。
通達と付款 早速訂正せねば(笑)
まず要綱は詰まる所内部の事務処理規定。通達と同じようなものと言っていい。
付款とはれっきとした行政行為。条件と要綱が混乱してしまったのは、付款の概念が間違っているのも勿論だが、付款が裁量の範囲内でつけたりつけられなかったりするのがあるのかもしれない。
本問の場合はそもそも裁量があるように読めるので要綱に規定されていることでも付款としてつけられるとも言える。
そうなれば、それは立派な条件ではなかろうか。そう考えても何ら不思議はない。
もっとも、採点実感にあるように要綱はあくまで要綱であり、条件とは違うものであるという前提はあるので、条件の一内容として要件の中に取り込んでしまうのはロジックでおかしいという指摘は正論だろう。
しかし、それを踏まえた上で条件の一つとして要綱の規定を考慮する、ということもロジックとしてあり得なくもない。
要綱は審査基準になるのか
本問では認可処分につき裁量があるので、要綱に規定されている保証をつけないと認可拒否してよさそうである。
そうなると、要綱は裁量についての基準、審査基準として機能するのか。参考答案
審査基準となる場合は行手法が適用になるな。
しかし、この要綱はB県の要綱なので行手法は適用されないが、そもそも採石法という国の法律についての認可について自治体に裁量があるのか。
33条に「当該岩石採取場の所在地を管轄する都道府県知事の認可を受けなければならない。」とあり、
33条の4では「他人に危害を及ぼし，公共の用に供する施設を損傷し ～ 公共の福祉に反すると認めるときは，同条の認可をしてはならない。」と、認可してはならないときのみを定めており、認可基準については要件が定まっていないように読めることから、認可する場合には自治体に裁量があると言っていい。
