[38 – 34]
甲は乙からその所有のリンゴ畑を買い受けその引渡しを受けてリンゴの栽培に従事していたが,所有権の移転登記をしないうちに丙が乙からそのリンゴ畑を買い受けて所有権の移転登記をした。この場 合の甲丙間の権利関係に関する次の記述中,正しいものはどれか。
(1)甲はその収穫の時期を問わず,収穫したリンゴを全部内に引き渡さねばならない。
(2)甲はその収穫時期を問わず収穫したリンゴを全部丙に引き渡さねばならないが,栽培に要した費用の償還を受けるまで引渡しを拒み得る。
(3) 甲は、丙が登記する前に収穫したリンゴだけを取得できる。
(4) 甲は、丙の登記をした事実を知った時から以後,収穫したリンゴを取得できない。
(5) 甲は、丙が登記をした事実を知った後でも,丙から請求される時まで収穫したリンゴを取得で
きる。
リンゴ畑は二重譲渡されている。丙の登記が早いため丙は甲に対抗できる。
従ってそれ以前であれば収穫したリンゴは甲のものになる。
丙の登記の事実を知った場合は悪意占有者となる。この場合の果実
(悪意の占有者による果実の返還等)
第百九十条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
正解は4
3と4が紛らわしい。4を読まないで3と判断した。が、よくよく考えると登記の事実を知らなければ善意占有者となる。
(善意の占有者による果実の取得等)
第百八十九条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。
この条文を知っていても間違うのが短答落ち常連。
※追記 改めて解いてみると正解したが、なぜ間違っていたのか分析したい。
まず二重譲渡の事案で登記を先に得た方が優先する対抗要件の問題だと言うのはすぐ分かる。
しかし、当初3と即断してしまったのはまさにそう思ったためであろう。登記を得たものが優先するからそれまでは林檎を取得できると。
この場合、林檎は天然果実であり、土地の所有権を持つものが取得できるが、甲は自分の土地だと思っているわけで丙が登記を得たということを知らなければ果実を取得するのが当然である。
登記を得たという事実があれば即林檎が取得できなくなる、というわけではない。それが善意占有の制度なのだ・・・(笑)
盗品の場合
(盗品又は遺失物の回復)
第百九十三条 前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
第百九十四条 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
[48 – 20]
甲が占有していたその所有の自転車を乙が窃取し,これを丙に譲り渡した。この場合において,次の 記述のうち誤っているものはどれか。
(1) 甲は、丙が悪意の場合,窃取されたときより1年間は占有回収の訴ができる。
(2) 甲は、丙が悪意の場合であっても,丙が自転車を善意の丁に賃貸したときは、丙に対し占有回収の訴ができない。
(3) 甲は、丙が善意の場合でも, 2年間は窃取された自転車の返還を請求できる。
(4) 甲は,占有回収の訴が提起できるであっても、所有権に基づく返還請求をなしうる。
(5) 甲の占有回収の訴に対しては,丙は自転車の所有権が自己にあることを主張できない。
(占有回収の訴え)
第二百条 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
肢1は占有回収の訴えができるかどうかがテーマ。丙が悪意なのでOK
肢2は丙は賃貸しているので丙の占有自体は失われていない。代理占有 従って正しい。
正解は2 2は正しいと判断し5を正解とした。
正解を2とした理由は上記の通りだが、ここで少し混乱する。正解としては占有回収の訴ができるとなり、またそう判断していたのになぜ正しいとしたのか(笑)
問題をよく読むと丙に対する占有回収なので、丙に対しての占有回収の訴えはできるで間違いない。。。なので×なのだ
(本権の訴えとの関係)
第二百二条 占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。
2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。