短答の論理 

令和2年〔第31問〕(配点:2)
訴訟能力に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを2個選
びなさい。(解答欄は,[No.32] ,[No.33]順不同)
1.訴訟能力を欠く者の法定代理人は,本人がした訴訟行為を取り消すことができる。
2.訴訟能力を欠く者であっても,訴訟委任をすることができる。
3.訴訟が第一審裁判所に係属中に,訴訟能力を欠く者が訴訟行為をしたことが明らかになった
ときは,法定代理人による追認は,それまでに行われた全ての訴訟行為に対し行わなければ
ならない。
4.当事者が訴訟能力を欠くことを理由として訴えを却下した判決に対しては,当該当事者は,
上訴をすることができる。
5.第一審において当事者が訴訟能力を欠くことを看過して本案の判決がされ,控訴審において
その事実が明らかとなったときは,控訴裁判所は,第一審判決を取り消して,訴えを却下し
なければならない。

正解は3と4
2と4を選択。
肢3に注目。「それまでに行われた全ての訴訟行為に対し」
え、一個一個の訴訟行為を一個一個追認するとかめんどくさ、一度の追認で全部できるでしょ。
そう、これが短答落ち常連の思考過程なのだ。
問題文のどこにも一個一個追認する、などとは書かれていない。
「従前の訴訟手続きを一体として不可分に遂にすべきであり、個々の行為を選択して追認することはできない」民事訴訟法講義案P46
つまり一体として→すべてを対象にして追認するという意味のようだ。

全部の訴訟行為を追認→訴訟行為ごとに追認と勝手に読み替えてしまう。

訴訟能力がない者が訴訟行為をした場合どうなるのか

(訴訟能力等を欠く場合の措置等)
第三十四条 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。
2 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
3 前二項の規定は、選定当事者が訴訟行為をする場合について準用する。

34条2項は訴訟能力のない者がした訴訟行為は追認がなければ効力を生じないと規定する。
素直に読めば原則無効であるが、34条1項で補正を命じさせていることに注意を要する。

従って、肢1は無効な行為は取消す事ができず間違いとなる。

訴訟能力を欠く者は法定代理人を通じて行動する

肢2は条文知識では判別しがたいが、訴訟行為そのものができないのであるから訴訟を行う場合は法定代理人が行うのが制度趣旨だろう。訴訟委任をするにしても法定代理人が訴訟委任をすべきであろう。訴訟能力がない者が単独で訴訟委任をできてしまうのであれば事実上訴訟無能力者が訴訟を行っているのと変わらなくなってしまう。
訴訟能力を欠く⇒有効な訴訟委任を受けることなく提起した不適法な訴えとされた事案
肢5は訴えを却下するのではなくまず補正を命じる。

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