科刑上一罪と公訴時効

令和4 〔第20問〕(配点:2)
次の【事例】における公訴時効について述べた後記アからオまでの【記述】のうち、正しいもの
の組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考え
るものとする。(解答欄は、[№26])
【事例】
甲及び乙は、令和3年1月5日、V方に侵入してVに暴行を加える旨の共謀を遂げ、同日夜、V
方に侵入し、同月6日未明、帰宅したVに対して暴行を加え、傷害を負わせた。
【記述】
ア.住居侵入罪の公訴時効は令和3年1月5日から進行する。
イ.検察官が甲及び乙を傷害の事実により起訴した場合、住居侵入罪の公訴時効は停止しない。
ウ.検察官が乙との共謀による住居侵入、傷害の事実により甲を起訴した場合、乙についても、
公訴時効が停止する。
エ.検察官が甲及び乙を起訴したが、両名のいずれに対しても所定の期間内に起訴状の謄本が送
達されず、公訴が棄却された場合、公訴提起の効力が遡って失われることから、公訴時効は停
止しなかったことになる。
オ.甲及び乙が犯行後に海外に渡航していた場合、一時的な渡航であっても、その間、公訴時効
は停止する。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

科刑上一罪の公訴時効について、判例はもっとも重い刑によってすべての訴因について時効期間を一体として決すべきであるとしている 条解刑事訴訟法 P498

※牽連犯について、その結果たる行為が手段たる行為の時効完成後に実行された場合は各訴因につき時効期間を格別に決すべきとする。

第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
第二百五十一条 二以上の主刑を併科し、又は二以上の主刑中その一を科すべき罪については、その重い刑に従つて、前条の規定を適用する。
第二百五十二条 刑法により刑を加重し、又は減軽すべき場合には、加重し、又は減軽しない刑に従つて、第二百五十条の規定を適用する。
第二百五十三条 時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。
② 共犯の場合には、最終の行為が終つた時から、すべての共犯に対して時効の期間を起算する。
第二百五十四条 時効は、当該事件についてした公訴の提起によつてその進行を停止し、管轄違又は公訴棄却の裁判が確定した時からその進行を始める。
② 共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。この場合において、停止した時効は、当該事件についてした裁判が確定した時からその進行を始める。
第二百五十五条 犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。
② 犯人が国外にいること又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつたことの証明に必要な事項は、裁判所の規則でこれを定める。

またもや分かりにくい日本語問題

A 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

B 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

A 人を死亡させて禁固以上の刑に当たるもの
B (A)以外の罪

であるが、これを短答常連落ちは以下のように読んでしまう

人を死亡させた罪で、禁固以上の刑に当たるもの以外の罪 。。。(笑)
このように句読点をつけるだけで、死亡させて、禁固以上にならないような罪というふうになってしまう(爆笑)
このように、日本語というやつはいかようにも読めてしまう代物である。前後の文脈というものが実は影響しているわけで、Bの文章単体で読んでしまうと恐らく間違った解釈をする人がかなりいると思われる。
従って、文章というか条文の体裁、構造としては1項以外の罪については、と端的に記載したほうが分かりやすいと思う。

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