即成犯と状態犯と継続犯

総括

  • 即成犯は結果の発生=犯罪終了 それ以降法益侵害がない
  • 状態犯も結果の発生=犯罪終了だが行為者の行為が介在している(何らかの影響を及ぼしている)場合は当該法益侵害がある(そのため行為者が新たに侵害行為を加えても新たに犯罪を構成しないのが原則)
  • 継続犯は結果が発生していても法益侵害状態が継続している場合は犯罪終了にはならず、法益侵害状態がなくなった時に犯罪が終了する
  • 時効の起算点は犯罪終了時点であることに変わりはない
  • 犯罪終了をいつみなすかで継続犯のみ法益侵害状態があるかないかで判断している
  • 傷害を即成犯としてしまうと、1攻撃1攻撃で傷害罪が成立してしまうことになるため状態犯に分類しているのだろう
  • そういう観点からは状態犯とはやはり窃盗での不可罰的事後行為などの理論的根拠として使われるものに過ぎないと言える
    法益侵害状態が継続しているからなどとせずとも包括して一罪にする、などといった方法もとりうる
    そもそも法益侵害状態が継続しているのならば第三者が攻撃を加えても不可罰になってしまうが、あくまで傷害を与えた行為者に限って法益侵害状態があるとみなしていることになりなんとも変な解釈である
    その意味で状態犯は「行為者の行為が介在している限り」などという表現がされている
    しかし、窃盗であれば盗んできたものを保管しているというだけで行為が介在しているとみなすことはやぶさかではないが、傷害の場合は一旦攻撃をやめた場合でも後者の行為があると言えるかはかなり疑問である

    状態犯と継続犯の違い

    誘拐が状態犯か継続犯か争いがあるらしいが、一般的な定義からすれば継続犯ということになろう
    なぜなら、状態犯としてしまうと誘拐した時点で時効が進行してしまうからであるが状態犯説が有力なようである(笑)
    誘拐後に監禁し、それが何年にも及んでしまうと誘拐では起訴できなくなってしまうが
    この点新潟少女監禁事件でも争われていると思ったが実は微妙に違うようだ

  • 弁護側が主張していたのは時効が完成しているから略取については免訴
  • 継続犯だと考えるとこの説はとりえない
    これに対して裁判所は
    「本件は、全体として一個の行為が略取罪と逮捕監禁という数個の罪名に触れる刑科上一罪としての観念的競合の関係にある。さらに、逮捕行為および監禁行為は包括一罪となるから、被害者が解放された時点まで犯罪として継続したことになる」などとして、これを退けた」
    としているため、裁判所がどのように考えているのかは判然としない
    いずれにせよ観念的競合なので最も重い罪の逮捕監禁致傷で処断されるため、あくまで略取を成立させるという意味でしかない
    観念的競合の時効についてはhttps://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51209
    「観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算」

    監禁する目的、及びその手段として誘拐をしたとも考えられるが、裁判所はそうではなくあくまで一個の行為が複数の罪名に触れていると考えている
    しかし、誘拐と監禁行為は別の行為であろう
    誘拐は誘拐だけで完結し、その後必ず監禁するとは限らない
    もっとも、そう考えると誘拐は即成犯ということになる可能性もある
    そう考えずに状態犯あるいは継続犯と考えると事後の監禁行為が不可罰になりかねないが一般的には継続犯か状態犯で争われている
    略取は最終的に自己または第三者の支配下におくことで結果が発生しているものの、その状態が継続していれば法益侵害状態が継続しているのでやはり即成犯と解すのは無理がある
    では犯罪の終了時点をどう解すのか

  • 支配下から解放した時点とするのか支配下に置いた時点とするのかの違いになる
  • 支配下に置いた時点で犯罪終了だと考えると略取の時効は完成するのは間違いない
    この点裁判所は略取と監禁で観念的競合であるとするが、略取の犯罪終了を支配下に置いた時点と考えるならこの説はとりえないため結局継続犯とみていることになりそうだ
    そう考えないと1個の行為で2つの罪名に触れ、一部分は時効が完成しているのにその犯罪まで評価していることになる
    観念的競合がもっとも重い罪で処断されるから結論に違いはない、というの実務ではそう言えても理論的に破綻している
    しかし、近時は略取誘拐は状態犯だとする説が有力なようである(笑)
    仮に新潟の監禁事件でも略取が状態犯であることが前提だとすると、自己の支配下に置いた時点で少なくとも当該犯罪が終了していることになる
    そう考えると観念的競合とするよりも牽連犯としたほうが適切ではないだろうか

    問題提起

    ある分類

    即成犯 行為者の関与なくして法益侵害状態が継続する
    状態犯 行為者の行為によって法益侵害状態が継続する
    継続犯 構成要件該当行為を継続しなければ法益侵害状態も継続しない

    誘拐が状態犯か継続犯か争いがあるらしい。
    状態犯の典型としてあげられるのが窃盗。継続犯は監禁。問題なさそうだ。
    しかし、状態犯と継続犯の一般的な説明だけをきくと腑に落ちない人が多数いるようだ。

    ある説明にはこうある
    状態犯
    →一定の法益侵害の結果が生じたら、それで犯罪は終了し、その後違法な法益侵害状態が継続していても、別の犯罪とは認められない窃盗罪、詐欺罪等
    継続犯
    →一定の法益侵害の結果が生じた後、違法な法益侵害の状態が続いている監禁罪、不退去罪等

    説明と言うより例をあげているに過ぎないし、法益侵害状態が継続していても別の犯罪とは認められないのは状態犯も継続犯も同じではないだろうか。

    殺人罪は即成犯になるのは分かるが、法益侵害状態が継続しているとも考えられる。例えば死体が存在すればそれは法益侵害状態が継続していると。窃盗した物を犯人が持ち続けているだけで法益侵害状態が継続しているというならそれもアリだろう。しかし、面白い事に殺人は即成犯なのに傷害は状態犯らしい。
    理由としてこんな説明がある。

    https://oshiete.goo.ne.jp/qa/7058215.html
    法益の主体が死ねばもはやそこに法益は存在しないのです。
    死者は権利利益を持たないというのが法律の世界の原則です。
    ですから、死んだ後に「法益侵害の状態」はなく、即成犯であるということができます。

    なるほどそういうことなのか?

    しかし、刑法総論講義案によれば冒頭の即成犯の定義のようにまったく違った見解となる。

    即成犯については、実行行為終了以降行為者の行為がない。
    状態犯については、犯罪の実行行為自体は終了しているが、行為者の何らかの行為がある。
    継続犯は文字通り犯罪の実行行為を続けている、というより実行行為が終了すればそこで犯罪も終了である。

    ここで少し疑問なのは窃盗の場合、仮に物を盗んだ後、不要になって捨てた場合はそこから行為者の行為は介在していない点である。この点につき刑法総論講義案では盗んだ物を返還しない限り侵害状態が解消しないので行為者の行為が介在していると見ているよう。
    また、傷害の場合も実行行為は終了してそれ以降行為者の行為はないはずであるが、状態犯に分類されるという。

    いずれにせよ3つに共通している点としては一旦犯罪の実行行為が終了している点があげられる。※監禁罪は実行行為自体が終了しても(例えば監禁して犯人が逃走)監禁されたままの場合があるが、その場合でも実行行為継続中とみるようだ。
    そう考えると結局メルクマークとして法益侵害状態があるのかないのかで分類する方が分かりやすいのか?
    もっとも継続犯は実行行為を継続しているから継続犯なのであって(上記の※のようにそうとも言えない)、即成犯と状態犯とは実は次元が異なっていることが分かる。

    そもそも人を殺すと法益の主体がなくなるから法益侵害がなくなると考えると殺人罪自体不可罰になりそうであるが、この場合で言う法益侵害というのは現在進行形のものを言うと捉えるといいのかもしれない。

    即成犯、あるいは即時犯というのは犯罪の構成要件的行為が終了し、かつ結果まで発生してしまっている。
    即成犯の例として殺人の他に放火が挙げられているが、放火の実行行為が終了して建物が半焼した場合、これを状態犯とみずに即成犯とみているわけだがどういう違いがあるのか?仮にまだ鎮火せず燃えている最中でも即成犯に違いはないのだろう。

    このように考えるとむしろ状態犯というもののほうが特殊なものかもしれない。いや、逆で即成犯というのが特殊なのか(笑)
    状態犯と継続犯の違いで躓くパターンが多いかと思ったが、実は状態犯と継続犯よりも即成犯と状態犯のほうの区別が難しいのではないだろうか。

    法益侵害状態があるのかないのかで区別すると簡単そうだが、その法益侵害状態をどう捉えるのかで引っかかるとかなりややこしくなる。
    状態犯を語る時は必ず不可罰的事後行為がある。予定された構成要件の範囲外の行為を行うと新たな犯罪に問われる可能性があるが、構成要件の範囲内であれば別罪に問われない。
    即成犯との違いはこの点だろうか。殺人行為が終了してしまえばもはや殺人の構成要件の範囲内とか検討するまでもなく死体遺棄に問われたりするな。
    放火の場合はどうだろうか。放火行為が終了して、まだ燃えていない部分を損壊したら放火行為の範疇だとはならない、のかな?

    他方、傷害はどうだろうか?ある人にケガを負わせた直後にさらに暴行を行う。これは状態犯とかそういうのではなくそもそも一個の傷害となりそうだが。いや、この場合単純一罪でよさそうだ。結局状態犯はそういうことなのか。殺人の場合はさらに殺人を行う事はできないが、傷害の場合は重ねて傷害を行うことは可能。

    殺人にしろ放火にしろ、予定されている法益侵害が、実行行為終了で評価し尽されているとみるべきなのか。
    窃盗や傷害はまだ評価し尽されていない流動的なものとみたほうがいいのか。

    継続犯は実行行為が終了したらどうなるのか?

    ここでまた疑問に思う。監禁罪は監禁状態でなくなればその時点で犯罪終了。状態犯ではない。ん?となれば実行行為が終了、存在しなくなったらつまり即成犯と同じではないか?
    例えば暴行行為をやり続けていればそれは継続犯かというとそうではない。

    実行行為ではなく犯罪自体が終了しているかどうか?

    犯罪が終了しているかどうかは時効との関係で重要となる。継続犯か状態犯かの区別の実益はこのあたりに出てくる。
    ある人をある部屋に監禁した。この時点で実行行為は終了している。仮にここから20年間監禁したとしても犯人が監禁しただけで放置して逃亡していたらどうだろうか。監禁を即成犯あるいは状態犯と考えると時効が成立してしまいかねない。
    殺人の場合は殺害の実行行為が終了したが、被害者はまだ死なず、植物状態になって1年後に亡くなった場合はどうなるのか?
    亡くなる前であれば傷害罪で立件起訴となるだろうからこの場合は状態犯ということになるのか。
    状態犯の場合の時効は、というより、時効の起算点は犯罪が終了した時点である。
    つまり犯罪が終了した時点がいつなのか?というのがこの区別で結局意味があるわけだ。

    http://www.xn--4rra073xdrq.com/z15.html
    犯罪の終了時期については、「即成犯・状態犯・継続犯」の3つに区別されます。
    即成犯
    構成要件的結果の発生によって犯罪が終了するもの
    法益侵害の状態は終了、または、行為者が関与せずに継続する
    【※】殺人罪、放火罪、等
    「傷害致死罪」などの結果犯の場合には、被害者の死亡などの結果が生じた時点から時効が進行します。

    状態犯
    構成要件的結果の発生によって犯罪が終了するが、その後も行為者の関与で法益侵害の状態が続くもの
    【※】窃盗罪、傷害罪、詐欺罪、重婚罪、等

    継続犯
    構成要件的結果の発生によって犯罪が既遂に達した後も、その結果である法益侵害状態の継続している間、犯罪が継続的に成立するもの
    【※】監禁罪、不退去罪、凶器準備集合罪等罪、薬物等不法所持罪、等

    継続犯は結果が発生しても犯罪は終了していない事がありうる

    継続犯は法益侵害状態が継続している、とみるのではなく法益侵害状態が継続している間は犯罪が終了していないと捉えるべきである。また、犯罪自体は既に既遂に達しているので結果が発生した後も犯罪が終了していないとも言える。法益侵害が解消されると犯罪終了になる。

    状態犯は結果発生し犯罪が終了しても行為者の関与により法益侵害が発生し得る

    そうすると、即成犯は結果発生と犯罪終了が同じと言え、状態犯は実行行為が継続していれば犯罪が終了しない場合もある。

    法益侵害状態があるのに犯罪が終了している場合がある状態犯

    法益侵害状態でみると、継続犯は法益侵害状態が継続している間は犯罪が終了せず、状態犯は法益侵害状態が継続していても犯罪が終了している場合がある。即成犯は結果が発生した後は法益侵害状態がない、とみているようだ(反論の余地アリ)。

    上記リンク先では即成犯の説明で「行為者が関与せずに法益侵害状態が継続する」とあるので、即成犯はやはり法益侵害状態がなくなる、という説明では不足のようだ。
    また、状態犯の説明にはここでも「行為者の関与で法益侵害状態が継続する」とある。
    そうすると、例えば盗んだ物をまだ所持している場合は法益侵害状態である窃盗状態が継続しているということだろうか。では傷害の場合はどうか。傷害という結果が発生した以降は殴るのをやめた場合は法益侵害状態はないが、仮に殴り続けた場合は法益侵害状態が継続する、というのは傷害だからではなく行為を続けているからだけではないのか。

    犯罪の終了がなんなのか区別してみる

    その観点から言えば、状態犯は犯罪は終了しているので状態犯と継続犯の違いは明白となる。
    しかし、犯罪自体が終了しているという観点で言えば即成犯も同様である。
    もっとも、窃盗した物が仮に被害者の元に戻ったら法益侵害状態はなくなる。侵害状態はないが窃盗が状態犯に変わりはない。これは暴行をし続けるからと言って暴行が継続犯ではないというのと同じである。
    要するに状態犯は犯罪が終了しても構成要件該当状態が一部残存し得る犯罪だと言えよう。窃盗で言えば盗まれた物が被害者の元に戻るまではいずれにせよ被害者にとっては物の占有が侵害されている状態である。
    この点、即成犯も前述のように侵害状態があると言えるが、構成要件該当行為が継続しているかと言えば、殺人については殺人の構成要件に該当する行為は終わってしまっているし、放火についても放火に関する行為はすでに終わっている。
    窃盗の場合は実行行為自体は終わっていても占有侵害状態は継続している。これは法益の侵害とは別の観点である(構成要件的行為が継続している)。
    そう考えていくと、傷害を状態犯とみるのはいささか疑問がある。

    とりあえずまとめ

    即正犯は犯罪の終了が結果の発生にかかる
    状態犯は犯罪の終了が実行行為の終了にかかる
    継続犯は犯罪の終了が法益侵害にかかる

    過去問から見える司法試験委員会の考え方

    H18〔第6問〕(配点:2)
    次の 記述 中の①から⑧までの 内に後記の 語句群 から適切な語句を入れた場合 【 】 () 【 】 ,( )
    内に入るものの組合せとして正しいものは 後記1から5までのうちどれか 解答欄は , 。( ,) [ ] №10
    【記 述】
    「 ,, 犯罪の終了時期に関し 各犯罪は即成犯 ① 及び ② に区別される 殺人罪は即成犯で () () 。
    あり ③ は ① であり ④ は ② である ある犯罪が ① か ② かの区別は ⑤ ,( )( ) ,( )( ) 。 ( )( ) ,( )
    の起算時期や(⑥)の成立範囲に影響があるとされる。この区別の基準について,実行行為を基
    準にする考え方と法益侵害を基準にする考え方がある。被害者を部屋に閉じ込めた後,行為者が
    眠ってしまった監禁の事例について,前者の考え方は,被害者を閉じ込めたまま解放しないこと
    を実行行為と評価して継続犯であるとするのに対し 後者の考え方は ⑦ を理由に継続犯であ , ,( )
    るとする。さらに,前者の考え方は,傷害罪について,一回の暴行によって傷害を発生させたよ
    うな一般的な態様の場合は ① とするが ⑧ のような特別な態様の場合は ② であると ,() ,() ,( )
    する 」。
    【語句群】
    a. 継続犯 b. 状態犯 c. 窃盗罪 d. 監禁罪 e. 刑の時効
    f. 公訴時効 g. 間接正犯 h. 共犯
    i. 不作為による実行行為が継続していること
    j. 被害者の移動の自由が刻々と侵害されていること
    k. 身体を動かすたびに傷害を負うように被害者の身体をきつく縄で縛り継続的に傷害を与えた
    事例
    l. 刃物で被害者の手の指を切断し被害者の物をつかむ機能を永続的に侵害した事例
    1. ①b③c⑤e 2. ①a④d⑥g 3. ②a④c⑦i 4. ③c⑦j⑧k
    5. ⑤f⑥h⑧l

    犯罪の終了時期に関し 各犯罪は即成犯 ① b. 状態犯及び ② a. 継続犯に区別される
    殺人罪は即成犯であり ③ c. 窃盗罪は ① b. 状態犯であり ④ d. 監禁罪は ② a. 継続犯である
    ある犯罪が ① b. 状態犯か ② a. 継続犯かの区別は⑤ f. 公訴時効の起算時期や(⑥)h. 共犯の成立範囲に影響があるとされる。
    この区別の基準について,実行行為を基準にする考え方と法益侵害を基準にする考え方がある。
    被害者を部屋に閉じ込めた後,行為者が眠ってしまった監禁の事例について,前者の考え方は,被害者を閉じ込めたまま解放しないことを実行行為と評価して継続犯であるとするのに対し 後者の考え方は ⑦ j. 被害者の移動の自由が刻々と侵害されていることを理由に継続犯であるとする。
    さらに,前者の考え方は,傷害罪について,一回の暴行によって傷害を発生させたような一般的な態様の場合は ① b. 状態犯とするが ⑧ k. 身体を動かすたびに傷害を負うように被害者の身体をきつく縄で縛り継続的に傷害を与えた事例のような特別な態様の場合は ② a. 継続犯であるとする

    「区別の基準について,実行行為を基準にする考え方と法益侵害を基準にする考え方がある」らしい(笑)
    実行行為を基準にする考え方だと傷害であっても継続犯の場合もあるが継続犯にならない場合もありそうだがどう整合性を保つのだろうか。
    結構適当な問題を作っているな(笑)

    とは言え、傷害についての疑問点からこの問題を見ると、やはり争いがあるとみていいだろう。そして、問題にもあるように時効や共犯などで問題になる場合に個別具体的に検討すればよく、最初から傷害は状態犯だとか決めつける必要もないしそれで事足りる話のようだ。あまり議論の実益というものがない。
    こんなことに数時間もかけてしまうなんてポイズン

    なんとなくまとめ

    状態犯は行為者の関与で法益侵害状態が継続するということは、行為者の関与がなければ法益侵害状態がなくなる。
    人を殴ってケガを負わせた場合、一回で終わって傷害が発生すればそれで犯罪も終了し法益侵害も終了。
    かりに殴り続けていれば、新たに傷害が発生する可能性があるという意味で即成犯とは違う。
    人を殺した後に殺害行為を続けても新たな殺人にはならない。放火も同様。放火して物が燃え始めたら既遂で犯罪も終了だが行為者が関与しなくても物が燃えている間は法益侵害状態は継続していると言えるが行為者は関与していないという意味で状態犯ではない。また、その物に新たに火を点けて燃やしてもそこが時効の起算点となる犯罪の終了点とはならない(?)
    窃盗は盗んだ物を所持し続けていると法益侵害状態は継続しているが行為者の関与がなくなる(物を放棄してしてしまう)と法益侵害状態がなくなる(?)という意味で即成犯とは違う。

    結論:即成犯状態犯継続犯は時効の起算点から考えたほうがよい

    (2)犯罪によって3種類の起算点が存在する
    ● 即成犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、それと同時に犯罪行為が終了する犯罪です。即成犯では、犯罪終了後には法益損害の状態が残りません。もっとも典型的な犯罪は殺人罪です。

    ● 状態犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、それと同時に犯罪行為が終了するものの、法益侵害の状態は継続する犯罪です。法益侵害の状態が継続していても、構成要件の範囲内であれば犯罪が終了します。窃盗罪や詐欺罪は、犯人の手に金品が渡るという法益侵害の状態が継続しつつも、構成要件の範囲内で犯罪が終了するため、状態犯の典型例だといえます。

    ● 継続犯
    結果が発生することで犯罪が成立し、結果が継続する間は犯罪行為が継続する犯罪です。違法な状態が継続している間は犯罪が終了せず、違法な状態が解消されることで犯罪が終了します。監禁罪や不退去罪といった犯罪が典型例です。

    刑事訴訟法253条1項により時効は犯罪行為が終わったときから進行するが、要はこの犯罪行為が終わったときがいつなのか?という点に違いがでてくる。

    〇即正犯では結果が発生すると犯罪行為も終了し、以降同じ行為を繰り返しても時効の起算点は最初の結果発生時点に変わりない。この事を法益侵害状態がないと言っているにすぎない。
    〇状態犯も結果が発生すると犯罪行為も終了しているのでこの時点で時効が進行するが、法益侵害状態は継続する。窃盗した物を犯人が所持している場合などは確かに構成要件の一部が継続しているとみることができる。しかし、犯罪行為は既に終了している。そう解さなければ、下着泥棒が下着を盗んでコレクションしていた場合、時効にかからなくなる(そのほうがいいかもしれないが(笑))。法益侵害状態が継続すると言っているのは不可罰的事後行為などもあるが、要するに構成要件の一部が残存しているため本来犯罪が終了しているなら新たに罪に問われるところを罪に問わないための方便だろう。
    〇継続犯は結果が発生しても法益侵害状態が継続している間は犯罪行為が終了しないため、時効の起算点は法益侵害状態が除去されたときからとなり、犯罪行為の終了=法益侵害状態の除去となる。

    ※追記2023/08/09 即正犯と状態犯の峻別
    殺害後、本犯者が死体を損壊した場合でも死体損壊罪は成立するが、窃盗後に本犯者が盗品を保管していたり有償で処分しても本犯者は窃盗罪以外は原則として成立しない。 死体遺棄罪 成立要件 盗品等関与罪成立要件

    つまり

    即正犯 結果の発生=犯罪行為の終了 法益侵害状態が残存しているようにみえるが法益侵害状態がないとみなす

    状態犯 結果の発生=犯罪行為の終了 結果の発生後に行為者の行為がある場合は法益侵害状態があるとみなす

    継続犯 結果の発生=犯罪行為の終了とみなさない 法益侵害状態がなくなる=犯罪の終了

    このようにみると逆説的に言えば

    即正犯は犯罪の終了以降は法益侵害状態がないと考える
    状態犯は法益侵害状態があっても結果が発生すれば犯罪の終了とみなす
    継続犯は法益侵害状態がなくなれば犯罪の終了とみなす

    と言える。法益侵害状態とは何ぞや?とその定義を考え始めると収拾がつかない。

    相棒 season9 第12話「招かれざる客」 窃盗の時効を待って財物を取り出す犯人たち

    相棒の再放送は何度もやっているな(笑)この招かれざる客も見たのは多分2回目か3回目だと思う。この頃くらいからだろうか、やたらと話が込み入る事が多くなり相棒がどんどん変わりだした印象がある。杉下右京のキャラが、頭はキレるが変わり者で、ちょっと天然入っている感じだったのが、最近は頭はキレるが、自分の正義、信条を頑として譲らない、どこか人を見下したようないけ好かないキャラになっていると思うのは私だけだろうか。

    さて、この手の刑事もののドラマにありがちな法律的にそうなん?と思わせる点があってかなり気になったのが、窃盗の時効を待ってからその盗品を隠していた場所から取り出すという点で、これは物語の核の部分なので見過ごせないとも言えますね。
    重要なのは当日の夜12時で公訴時効の期間が満了するわけですが、確か後数時間(もないかな)で逮捕(出頭になるのかな)されちゃいます。ん?あと数時間だと警察署まで行っている間にも時効になっちゃうのでは?もしかすると逮捕自体で公訴時効は停止するのかしら?と短答常連落ちのあやふやな知識しかない私はあわてて検索検索であります。

    窃盗の時効について – 窃盗の時効を弁護士が解説
    時効の停止とは、一定の事由がある場合に、その事由がある限り時効の進行がストップし、その事由がなくなれば、引き続き残りの期間が進行するというものです。
    刑事訴訟法では、公訴時効の停止事由として、①公訴が提起されたとき、②犯人が国外にいる時、③犯人が逃げ隠れしているために有効に起訴状が送れなかったときなどがあげられています。ここで注意して頂きたいのは、①公訴が提起された場合に初めて公訴時効は停止するのです。ドラマなどで、時効ギリギリに犯人を逮捕したという描写がありますが、逮捕しただけでは、公訴時効は停止しません

    杉下さん、逮捕しただけでは公訴時効は停止しませんよ。警察署で供述とって送検している間に時効になっちゃいますね。みなさん釈放でございます。おめでとうございます(笑)
    さて、こうなるとこの隠されていた大金はどうなるのでしょうか?一体誰のものになるのか?一旦警察が押収するのか?相続人に返されるのか。いや、そもそもこの金は確か裏金だったはず(笑)この場合でも相続人に所有権あるのか?もうね、カオス

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