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譲渡と相殺、差押えと相殺の概観
譲渡された債権を債務者が相殺できるか
債権が譲渡された場合の相殺の話 469に規定
この場合は債務者が相殺できるかどうかであり、譲受人に対抗できるか?
債務者の負っている債務(債権者からみると債権)は譲渡されており、債務者が持っている債権は譲渡人に対するものの場合である。
譲渡人の債務者に対する債権を譲渡→譲受人が新債権者
債務者の譲渡人に対する債権で譲受人に対して相殺できるか
債権の譲受人からみると、せっかく債権を買ったのに自分の債務でないのに相殺されて取り立てできず大損するかもという話
差し押さえられた債権を債務者が相殺できるか
差し押さえられた債権を相殺する話 511条に規定
この場合差し押さえられた債権の債務者が相殺できるかどうかであり、負っている債務が有効に消滅するか?
債務者の負っている債務自体はまったく動いていない。債務者が持っている債権も当該債権者に対するものの場合である。
差押え債権者からみると、せっかく差押えたのに回収できないかもという話
債権の譲受人に対して相殺が対抗できる場合できない場合
(債権の譲渡における相殺権)
第四百六十九条 債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができる。
2 債務者が対抗要件具備時より後に取得した譲渡人に対する債権であっても、その債権が次に掲げるものであるときは、前項と同様とする。ただし、債務者が対抗要件具備時より後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
一 対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
二 前号に掲げるもののほか、譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
3 第四百六十六条第四項の場合における前二項の規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条第四項の相当の期間を経過した時」とし、第四百六十六条の三の場合におけるこれらの規定の適用については、これらの規定中「対抗要件具備時」とあるのは、「第四百六十六条の三の規定により同条の譲受人から供託の請求を受けた時」とする。
原則
対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権で相殺できる
〇対抗要件具備時より後に取得した場合であっても相殺できる場合
※対抗要件具備時後に他人の債権を取得したものでない場合で
対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
譲受債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
従って対抗要件具備時前であれば他人の債権を取得しても相殺は可能
差し押さえられた債権でも相殺できる場合できない場合
(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
第五百十一条 差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。
原則
差押え前に取得した債権で相殺できる
〇差押え後に取得した場合でも相殺できる場合
※差押え後に他人の債権を取得したものでない場合で
差押え前の原因に基づいて生じた債権
債権譲渡と差押え時の相殺の可否比較
債権譲渡 差押え
対抗要件具備時より前に取得 差押え前に取得した
〇対抗要件具備時より後に取得した場合 〇差押え後に取得した場合
他人の債権を取得したものでない場合 他人の債権を取得したものでない場合
対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権 差押え前の原因に基づいて生じた債権
譲受債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権
466条の4 譲渡制限つき債権が差し押さえられたら誰に弁済するのか 概観
466の4①譲渡制限のある債権が差し押さえられた場合は差押債権者が悪意でも債務者は履行が拒めないと規定
466の4②譲渡制限のある債権が譲渡された場合、譲受人が悪意の場合は差押債権者が善意であろうが悪意であろうが債務者は履行が拒めると規定
466の4① 譲渡していない債権者の債権者の差押え
そもそも466の4①は譲渡されていない。CはAの債権者であり強制執行をすれば悪意であっても債務者は弁済拒絶できない。※担保権の実行は原則通り拒絶できるようだ。