※追記
#AV新法 について、規制の目的が消極目的規制なのか積極目的規制なのか衆議院法制局へ質問してみました。AV新法の立法過程を踏まえて回答頂けるとの事でした。
消極目的規制か積極目的規制かによって、規制の内容の合憲基準が大きく変わる可能性があります。回答に注目したいです。
— 末永ゆかり 東京都北区NHK党公認 年金受給者の受信料無料化&公平な受信料負担&ご相談はお気軽に (@yukari_suenaga) September 6, 2022
消極目的規制か積極目的規制か。
まあ答えは分かりますが、そもそも論として結局それを判断するのって裁判所になりますよね。
法律をつくった側が合憲だと言えば合憲になるのなら裁判所はいらないってなりますしね。
AV新法について以前記事にしましたが、何の理由もなく無催告解除ができたり、また、その場合に損害賠償もする必要がなかったりとかなり強力な法律なので、こんな法律がそもそも許されるのか?素朴な疑問がわく人もいるかと思います。
仮に許されないとしたらなぜ許されないのか?そのあたり法律的な根拠をもって主張しないと、「AVって要するに売春、売春は違法でしょ、だからAV新法は当たり前だよ」、みたいな論法と同じになってしまいます。
法律そのものが違法で、無効だとするならやはり憲法違反で訴えますよね。
国会議員の立法活動が違法だとしても法律そのものは生きたままでしょうし。
憲法違反の場合でも、現になんらかの権利侵害があって、その損害賠償請求などに付随して憲法違反を主張することになるでしょうが、その点は置いておき、では憲法上の何の権利を侵害することになるのか?
まずはやはり営業の自由とか職業選択の自由でしょうか。ビデオ制作者側からすれば何の落ち度もないのに演者の胸先三寸で契約を解除され損害を被っても賠償請求できないなんて、この法律やり過ぎじゃね?女優さん側はどうなのか?女優さんのほうでこの法律改正に向けての動きがありますが、職業選択の自由を侵害しているかと言われると必ずしもそうではないですよね。確かに問題とされる1か月ルールとか4か月ルールとかによって仕事の数自体が減ったり、メーカー側がこの法律によって制作に慎重になったりするとか、あるいは無催告解除されまくってメーカーが倒産するとかあるかもしれませんがそれ自体は個人の人権を直接侵害しているとは言えないような気がします。
が、ここはメーカーの営業の自由や演者の職業選択の自由を侵害されたと主張することにしましょう。
例えばメーカーが無催告解除自体が不当な目的で行われて、その結果損害を被ったとして提訴した場合、憲法問題にまったく触れずに原告が勝訴してしまう可能性もありますよね。例えば最初から競合メーカーに嫌がらせする目的で契約したなど、そういう場合は無催告解除自体ができないとかなんとか。
そうするとあまり意味がなくなってきますが、この点も置いておき憲法判断をするという前提で話をすすめましょう。
営業の自由はそのものズバリ経済的自由に属するので、これまでの判例の態度からすれば合理的関連性の基準でしょうか。
(1)立法目的(規制目的)が正当なものといえるか,(2)目的と手段との間に合理的関連性があるか
立法目的は法第一条に長々と謳われています
この法律は、性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じていることに鑑み、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずることが出演者の個人としての人格を尊重し、あわせてその心身の健康及び私生活の平穏その他の利益を保護するために不可欠であるとの認識の下に、性行為の強制の禁止並びに他の法令による契約の無効及び性行為その他の行為の禁止又は制限をいささかも変更するものではないとのこの法律の実施及び解釈の基本原則を明らかにした上で、出演契約の締結及び履行等に当たっての制作公表者等の義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める特則並びに特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成十三年法律第百三十七号)の特例を定めるとともに、出演者等のための相談体制の整備等について定め、もって出演者の性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資することを目的とする。
いずれにせよ、目的自体が不当な法律などないでしょうから規制目的は正当だと判断されるのがオチ。問題は(2)目的と手段との間に合理的関連性があるか?です。
無催告解除などがやり玉にあがっている場合はその条項だけで、運用違憲、あるいは適用違憲などとなってしまう可能性があるので、やはり憲法違反で訴える場合はどの条項をターゲットにするか明確にしておいたほうがいいのかなと思いました。
さて、目的は正当だとして、それを達成するために無催告解除は本当に合理的な関連性があるのか否か。再度条文を見てみましょう。
出演者の任意解除権
この条文を見ると、完全に出演者側の任意で契約を解除できるように読めます。まったく理由に限定がありません。要するに気分次第で解除できるわけですが、果たしてこれは法の目的を達成するために合理的な関連があると言えるのか?かなり疑問ですよね。
法律の趣旨としては、若気の至りや強制やその場の雰囲気、誘導などで撮影したけど、やっぱりよくよく考えてみたら取り消したい、そういう場合でも取消し或いは解除できるようにしてあげようという事だと思いますが、前述の如く、嫌がらせ目的や報復目的とか損害を与えてやろうなどという目的での契約解除まで許すのが法の趣旨ではないはずで、そういう場合を含まない規定だと限定解釈される可能性もありそうです。
そうすると、AV新法は合憲などという報道がなされてしまい、いかにも原告負けた的なイメージになりますが、無限定だったものが少なくとも限定されて運用されることになるのでむしろ勝訴に近いと考えることもできます。
このように考えていくと、確かに1か月ルールや4か月ルールって、あまり意味がなさそうで弊害もあるものについては破って運用してもよさそうな気がしますね。
実際罰則はないわけですし、ペナルティとしては無催告解除される程度のものであり、これって結局ルール守っていても同じですしね。
そもそも演者側にとって撮影後2か月で公表されたから契約解除ってなりますかね?前もって公開する日を双方契約しておけば特に問題ないと言えます。
解除権の発生要件にすぎませんし、1か月ルールはともかく、4か月ルールが法の目的達成に合理的関連があるのかイマイチピンときません。
契約後1か月ルールなんかもスカウトしたての場合は確かにこういうルールはあってもよさそうですが、既に職業として女優さんをやっているような人にはそもそも不要でしょうから、こういうのも裁判所では違憲判断はしなくても限定解釈してくれそうで、結果法律の条文が適正に修正、追加、削除などされるように思います。
裁判所を買い被り過ぎでしょうか(笑)
もっとも、裁判するのはとてつもない労力を疲弊するわけで、一旦法律ができてしまうとなかなか変えられないのが現実。改めて国会議員の権力を思い知りました。