誤解だらけの近代的意味の憲法とか固有の意味の憲法とか

A 形式的意味の憲法 「憲法と呼ばれる成文の法典」

B 実質的意味の憲法 「ある特定の内容をもった法を憲法と呼ぶ場合」  ※「「ある」という不定語がないと近代的意味の憲法と同じになる」(現代日本の憲法P11)

Bは以下の2つに区分されると説明されるのが一般的である

  B’固有の意味の憲法 国家の統治の基本を定めた法
                              
  B”近代的意味の憲法 専断的権力を制限して広く国民の権利を保障すること(立憲主義)を目的とする

近代的意味の憲法は固有の意味に含意される

固有的意味と近代的意味は対概念ではない。
近代的意味の憲法であっても統治に関する条項はある。逆に統治に関する条項のない憲法は実質的な意味での憲法とは言えない。

従って
実質的意味の憲法<固有の意味の憲法

であり
固有の意味の憲法が、「近代的意味の憲法」と「それ以外の憲法」 に分類されるとするほうが正しい。
「ある」という不定語がないと、実質的意味の憲法は「ある特定の内容をもった法を憲法と呼ぶ場合」になり、近代的意味の憲法と同じになる」(現代日本の憲法P11)とされるが、正確には

国家の統治の基本を定めた法が実質的意味の憲法であり(統治機構がない場合は憲法としての意味がなく、仮にそれを憲法と呼ぶなら形式的意味との違いはほとんどないことになる)、そのうち人権保障規定がないものを固有の意味での憲法と呼び、人権保障規定のあるものを近代的意味の憲法と呼んでいる(多分)

実質的意味の憲法の説明としてのある特定の内容とは

あと10点の得点アップ! 短答ヤマ当て講座 憲 法
「形式的意味の憲法」とは,憲法という「法形式」をとって存在している憲法をいう。他方,「実質的意味の憲法」とは,ある特定の内容をもった法を憲法と呼ぶ場合をいう。両者の区別の意義につき,諸国の憲法典の内容を比較してみると,本来憲法に含まれるべき規範でありながら,慣習法や法律の形式で定められていて,憲法の形式をとっていないものがあり,逆に,憲法の形式で定められているが,内容的には憲法といえないような規定も存在する。
憲法を研究する前提として憲法とは何かを定義しておく必要があるが,憲法典の内容が各国によってまちまちであるとすれば,憲法典の内容が憲法であると考えたのでは,諸国の憲法の有効な比較研究は困難になってしまう。
そのため,憲法典の定める内容とは別に,各国に共通して適用しうる憲法の意味を決めておく必要がある。そこで,「形式的意味の憲法」と「実質的意味の憲法」とを区別することとなった

実質的意味とは要するになんでもかんでも憲法という名称がついていれば憲法とするのではなく、実質的に憲法とよべるものを憲法として扱おうという趣旨のようだ。憲法とよべるものを憲法として扱おうという意味での実質的という表現であり、形式的に憲法と名前がついていれば憲法として扱う考え方との区別と言ってよい。
従って、では実質的意味の憲法とはなんぞや?ということはまた別問題である。
固有の意味の憲法はまさにその憲法としての体裁を整えているものを言うことになろう。もっとも、固有の意味の憲法だけが実質的意味の憲法を充足するものでもないだろう。固有の意味とは実質的意味の説明の一つと言っていいかもしれない。

H23-13
国家統治の基本を定めた法としての憲法を「固有の意味の憲法」と呼び、そのうち国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくものを特に「立憲的意味の憲法」と呼んで、その余の「固有の意味の憲法」と区別することがある。この区別は憲法の内容に着目した区別であり、憲法の存在形式とは無関係である。

正答は〇
「固有の意味の憲法」そのうち国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくものを特に「立憲的意味の憲法」と呼ぶとしている。もしも固有と近代が対の概念だとこの肢は×ということになる。
ちなみに存在形式とは無関係とされている存在形式は成文法とかのことのようだ。

固有の意味の憲法と実質的意味の憲法まとめ

問題文では『「固有の意味の憲法」と呼び、そのうち』となっており、

固有の意味の憲法が立憲的意味の憲法(近代的意味)とそれ以外の憲法に区分されると説明される。これが司法試験委員会のコンセンサスという事になる。
実質的意味と形式的意味は対概念である。実質的意味の説明として固有の意味が使われているようだが、実質的と固有の意味は単なる言い換えに過ぎないとも言える。
統治機構のあるようなものを一般的に固有の意味での憲法と呼び、そのうち人権保障、或いはそのための権力制限規定があるような憲法を立憲的(近代的)意味の憲法と呼ぶ。

このように、通説と言われているような事であっても司法試験的には実は違った解釈をしている場合がある。

いやらしい過去問

平成20
〔第1問〕(配点:2)
諸種の憲法概念に関する次のアからエまでの各記述について,明らかに誤っているもの二つの組
合せを,後記1から6までの中から選びなさい (解答欄は ) 。 ,[№1]
ア. 憲法概念は,その存在様式によって区分することができる。憲法という法形式をとって存在
している法を「形式的意味の憲法」と呼び,法形式にかかわらず国家の組織や作用に関する基
本的な規範を「実質的意味の憲法」と呼ぶ。後者の概念からすれば,国会法や公職選挙法の一
部の規定は憲法法源としての意味を持つことになる。
イ. 形式的意味の憲法の効力は他の法規範よりも優越する。今日多くの国では,この優越性を現
実に保障するため裁判所による違憲審査制を採用しているが,法令の合憲性について議会が最
終的に判断するという制度が憲法の形式的優位性と矛盾するとはいえない。
ウ. 憲法の内容に着目すると 固有の意味の憲法 と 立憲的意味の憲法 を区別することがで ,「 」「 」
きる 権利の保障が確保されず 権力の分立が定められていない社会は すべて憲法を持つも 。「, ,
のではない」という1789年のフランス人権宣言の有名な一節は,前者の趣旨を示したもの
である。
エ. 形式的意味の憲法にはいかなる内容を盛り込むことも可能であるが,歴史的には立憲主義の
成文化を求める動きが憲法典の普及を促進した。日本国憲法はこの経緯を踏まえ,憲法の形式
的優位性の実質的根拠を示すため,第10章「最高法規」中に公務員の憲法尊重擁護義務を定
める第99条を置いている。
1. アとイ 2. アとウ 3. アとエ 4. イとウ 5. イとエ 6. ウとエ

正解

肢ア 国家の組織や作用に関する基本的な規範を実質的意味の憲法とよぶならば、国会法や公職選挙法は憲法規範とよぶことは可能だろう
肢イ 違憲審査制と議会による最終判断は矛盾するものではない
肢ウ 三権分立は恐らく立憲的意味に分類されるはずである
肢エ 形式的優位性の根拠として公務員の憲法尊重擁護義務があるのが間違いなのか?

改めて解き直すと

肢イ「形式的意味の憲法の効力は他の法規範よりも優越する」にひっかかる。形式的意味の憲法なんだから最高法規だと必ずしも言えないのではないか。
ここで言っているのは要するに最高法規であると考えることが許容できるか、明らかに誤っていると言えるか言えないかということである。
他の法規範より優越するとして、ということなのだろう。

肢エ 形式的優位性というのは形式的意味の憲法とは違い、国宝体系の中での憲法と他の法規の関係性を形式的と言っているのだ。

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