売り主の担保責任 改正

売主の担保責任改正概観

※全部他人物の場合の規定なし

562 種類品質数量の不適合の追完 → 563 減額
                ↘                
                  564 損賠415 解除541 542

565 権利の不適合(一部他人の移転不能含む) 上3条を準用

旧法は
全部他人561
一部他人563 減額
数量不足565
用益権566
担保権567と個別に規定しているが、565で563を準用している。

用益権や担保権による不適合にも減額請求が法分上可能になった。

つまり旧法は個別に規定していたものを改正によって大枠

562 権利以外の不適合
565 権利の不適合

とし、その内容が
563 減額
564 損賠解除

としている。また損賠は担保責任特有ではなく415を準用、解除も541、542を準用する形となっている。

全部他人物の場合

民法561条(他人物売買における売主の義務)民法改正勉強ノート227
旧560条
買い主への移転義務明記

全部他人物の売買は買い主へ目的物を移転できなかったら単純な履行不能→415損賠、541催告解除、542無催告解除の問題
一部他人物は565条で562追完、563代金減額、564損賠及び解除ができる

追完請求

民法562条(買主の追完請求権)民法改正勉強ノート228

目的物の不完全履行に対する追完562
買い主に帰責性がある場合は追完請求不可

減額請求

民法563条(買主の代金減額請求権)民法改正勉強ノート229

催告による代金減額請求563
563①履行の追完の催告後追完なき場合代金減額請求ができる
563②次の場合無催告減額請求可能 ※542無催告解除
①履行の追完が不能である(1号)
②売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した(2号)
③いわゆる定期行為について、履行の時期を経過した(3号)
④その他、催告をしても追完を受ける見込みがないことが明らかである(4号)
買い主に帰責事由がある場合はできない

損賠と解除

民法564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)民法改正勉強ノート230

562追完563減額を行っても415損賠、541、542の解除もできる

権利の不適合

民法565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)民法改正勉強ノート231

562~564は物
565は権利についてだが内容は562~564を準用している。権利の一部が他人に属する場合も含む。

期間制限

民法566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)民法改正勉強ノート232

不適合を知った時から一年以内に不適合を売主に通知する必要がある
通知をしなかった場合、買主は、原則として、その不適合を理由とする①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除をすることができない※売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときには、種類又は品質に関する契約不適合を知ってから1年が経った後でも、①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除できる

危険負担

民法567条(目的物の滅失等についての危険の移転)民法改正勉強ノート233
旧534 債権者主義削除

567①引き渡し後の双方の帰責事由なしでの目的物滅失損傷
買主は追完減額損賠解除をできない、また代金の支払いが拒めない 
※旧534の債権者主義は引き渡し前の滅失でも代金支払い義務があるところに批判があった
 削除改正により、債権者主義が実質的に引き渡し後に限定されたことになる(私見)
567②受領遅滞中の々 
受領遅滞中も①と同様

旧571売り主の担保責任と同時履行削除

他人物売買での引き渡し後の滅失損傷

伊藤塾の論文の問題を解いていて少し疑問に思ったので追記しておきたい。
登録自動車の即時取得に関する問題で当該自動車が無権利者Aから買主Cに引き渡されて使用中に第三者から放火にあって滅失したという事案。
登録名義はまだ真の所有者Bにある。
この場合にCはAC間の売買契約を他人物売買であるから解除し、となっている。履行不能であり、登録がまだCになっていないので引き渡し後でも解除できるのかな?
と思ったものの、一旦引き渡して使用中であっても解除できるってなんだかおかしいと思い調べる。そもそも債務者であるAの責任ではない。

旧法下の他人物売買の買主は最終的に所有権を得られなければ解除できる

「移転する事が不能となるのは履行期以降でもよい。例えば他人名義の土地の売買によって移転登記も代金支払も終わったのち相続回復の訴えによってその土地が真の所有者たる相続人によって回収され、移転登記も抹消され、その後一年余になっても売り主がその売買を履行しない場合(最判昭和30.5.31)」「それが売主の責めに帰すべき事由によったかどうか問うことなく解除する事ができる」基本法コンメンタール債権各論ⅠP98
旧法561と判例のロジックをそのまま上記の事案にあてはめると確かに解除できそうである。
民法の昔の判例ロジックは、目の前の問題に対処する場当たり的なものが多いので、のちのち争いとか不都合がおきまくり、後付けのご都合主義的な学説が更に混乱を招いているのだろう。

改正後は他人物売買についての特則はなく、単なる債務不履行責任になったというが上記の事案の場合結果的には所有権を得ることができなかったわけだが、その責任は果たして不法行為者なのか?売主なのか?未だ所有権を移転することができなかった状態での目的物滅失だから、その場合は売り主に責任ありとする構成もできそうである。
いずれにしろ、改正後は売主=債務者の帰責性がなければ債務不履行による損害賠償はできないが、改正後履行不能による解除について債務者の帰責性は不要になっている。
従ってあまり問題はないのかもしれない。
とは言え、旧法では売主無過失の場合でも買主が善意なら損害賠償請求権(信頼利益に限る)があったのでやはり大きな違いがある。

http://blog.livedoor.jp/kosekeito/archives/minpou567jou.html
3.目的物引渡し後の滅失・損傷
狐さんが売買の目的物件である建物の引渡しを受けた後で、落雷によって建物が燃えてしまいました。これは、当事者双方の帰責事由によらない滅失だといえますよね。
 こういう場合、たとえ所有権移転登記が済んでいなくても(→ここ、けっこう大事なポイントだと思います。)、建物の引渡しが済んでいる以上、危険を負担するのは買主である狐さんです。

 買主は、①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④解除をすることができません(改正後民法567条1項前段)。

上記は通常の売買で、かつ改正後の話だが。
他人物売買の場合はやはり登記登録まで済ませて履行が完了したということなのだろう。

数量不足の場合

旧司の過去問を解いていて疑問に思ったので備忘録
数量不足の事案で買主は善意という前提。買主は損害賠償とともに代金減額も請求できるという肢がどうやら×のようだ。
旧法を再度確認してみると563条3項では解除または減額請求とともに損害賠償もできると読める。コンメンタールにもそう書いてあるので回答が間違っているのだろうか?それとも常連落ちにありがちな問題文を読み違えた勘違い回答をしているのだろうか。
いずれにしろ損賠と減額は一緒にできていたのは間違いない。

旧法では数量不足565の対象は特定物

上記の問題は昭和48-64 石炭100トンの売買
数量不足又は物の一部滅失について規定する旧565条は563条を準用しているが、対象物は特定物である(笑)
そもそも不特定物であれば不足分を追完請求すれば足りる、という考え方が根底にあるようだ。つまり、そんな事は条文に書いてはいない(笑)条文だけ読んでも司法試験には合格しない。
言い換えると数量指示売買で563を使えるのは特定物のみである。

※追記  20230815 旧法と新法では数量指示売買の意味が違う

旧法下で数量指示売買における減額が適用されるのは特定物である。
特定物では数量が不足していた場合に追完が不能だからという考え方が根底にあるようだ。
数量指示売買の例は一般的に土地であり、他の例はみたことがない。ある土地を売買するときに面積が不足していた場合、あとから別の土地を追完するというのも考えにくい。隣接している土地を追加できることもあるかもしれないがそれはもはや別の土地と言えるのではないか。
つまり数量指示売買とは面積×単価とかそういった話ではなく、特定された対象物の数量が明示されて契約当事者が売買契約を締結することを言うのだろう。特定されていない物であれば追完が可能である。特定物だから数量指示売買が適用ではなく、旧法下の数量指示売買は特定物に適用されるのであり、それは追完不能だからである。
改正法下では特定物不特定物で基本的には区別していない。仮に特定物だとして追完請求したとしても追完できなきなければ結果として減額や損賠をするというだけの話である。旧法下でのようにまず特定物か不特定物かで適用条文を変えていくというような手法をとっていない。
その意味で旧法下では数量指示売買一般において適用される条文、ではなく、減額請求できる数量指示売買に適用される条文であり、この場合は特定物のみ、ということになる。
改正法下においては数量指示売買とは、といった適用される条文を前提とした定義が必要なくなっているということになるだろう。

不特定物であっても数量指示売買を観念できるという意味

旧565は改正後の566条に対応すると判例六法にはあるが、これは期間制限のはなしであり、要件などは562条563条になると思う。そして、新562条は数量指示売買であっても不特定物、特定物両方を観念できるという。新債権法の論点と解釈P324
これは562条が特定物、不特定物両方に適用されるから当然のようにも思えるが、この表現にも注意が必要である。
562条では「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して」とあり、種類については特定物は適用されないからである。種類に関して特定物が適用されないという言い方も少し変であり、そもそも種類を観念するものは不特定物だからであり、種類に関して不完全な履行であれば当然追完すればいいだけである。種類に関して、とあるとまるで特定物にも種類を観念できるのか?となってしまうからである(そういう人は私だけのようであるが(笑))
ここで少し疑問に思う、ニュアンスとしては不特定物売買にも数量指示売買が観念できるようになった、ことのように受け取られるが(旧法ではそもそも不特定物売買の数量指示売買は規定されていない)、それは563条が適用される数量指示売買の事であって、数量不足自体は不特定物売買でも発生する。いや、むしろ不特定物売買だからこそ数量に不足がある場合が発生する。
特定物売買の場合、ピカソの絵10枚と言ってもどの絵が10枚かは特定されているはずなので、仮に1枚足りないとしてもそれは数量不足ではない。
旧563の特定物における適用場面とは要するに土地などの1個の塊を数量指示した場合と見ていいだろう。
従って、旧法では数量指示売買は特定物のみに適用されるという表現は正確ではなく、誤解を招く(誤解したのは私だけのようだが(笑))。
改正562では、数量不足の場合に特定物であろうが不特定物であろうが区別はないという意味だが、結局不足していれば追完することになる。
考えてみたら売買の本来的な効果を規定している(当然な事は規定していないとも言えるが)に過ぎず、旧法だとこの点が分かりにくくなっているように思う。
追完できなければ563条で減額請求でき、さらに564条で損賠と解除もできる。
この点追完されたのに減額請求できるのか、あるいは損賠できるのか、などの論点は当然出てくるが、それはケースバイケースで柔軟に対応するしかないし、現実社会ではそのほうが良かったりする。
旧法ではまず、特定物だから、こう不特定物だからこう、善意の場合、悪意の場合と教科書的になりすぎていた感じである。

旧570条瑕疵担保責任はどうなったのか

改正562条はこの点「特定物と不特定物の両者を含ませることが可能な表現へと変更した」新債権法の論点と解釈P328
旧570条が新562条に取り込まれたかのような表現になっているが、旧法と考え方が変わっているようだ。
旧570だと特定物はその物を現状で引き渡してしまえば履行完了になるが、それだと債権者にとって酷な場合があるため法律が特に認めた無過失責任だという、ざっくり言えばこういう事だと思うが、それが色々と不都合を生んでいた。正直この理屈も説得力に欠けると思うが。

現実の社会で売買をしていればこのような事は頻繁に起こり、確かに不特定物であれば代わりの品がいくらでもあるだろうから代替品を送れば事足りる、とは限らない。不特定物でもたまたま在庫がない、代替品が届いた頃には既に遅いとか、そういう場合にまず、特定物だからこう、不特定物だからこう、などと杓子定規にはやっていられない。
ケースバイケースで柔軟に対応させる余地を残すのが改正法だろうか。

では、肝心の改正後はどうなるのか?

減額請求できる条件

まず、いきなり減額請求できない。減額請求するには追完562がないときだからである新563。
とは言え、次の場合は直ちに減額請求できる
1 追完不能
2 追完拒絶の意思を明確にした
3 期間内に追完をうけられない
4 追完を受ける見込みがないことが明らか
これらは勿論善意買主ができる。

損害賠償請求と解除と減額請求の行使

新564には損賠と解除と減額請求を一緒に行えると規定してある。旧563では減額請求+損賠、解除+損賠であり減額請求+解除+損賠の3つをセットで行うことはできない。
これは解除の要件として残存部分のみだったら買わなかったであろう場合のみに解除ができるからだろう。減額請求は一部解除であるという考え方だと確かに矛盾している。
また、損賠及び解除は数量不足独自の規定があるわけではなく415と541、542を使って行う。

新415の損害賠償は旧法となにがどうちがうのか

新541,542の解除は旧法となにがどうちがうのか

民法541条(催告による解除)民法改正勉強ノート214
債務者の帰責事由不要になる

改正後 新541
①債務を履行しない場合
②相当の期間を定めてその履行の催告
③期間内に履行がない
以上のときに解除できる
ただし、不履行の度合いが軽微なときは解除できない。

但し書きにある軽微なときというのを数量不足にあてはめると、残存部分だけであっても買ったような場合は解除できないと読めます。もっとも当該条文のような規定自体がないですが。


民法542条(催告によらない解除)民法改正勉強ノート215

一定の事情がある場合に、直ちに契約の解除をすることを認める
改正前との大きな違いは、債務者の帰責事由が問題にならないという点です。改正前民法543条ただし書に相応する規定が、改正後の民法には存在しません。

新542
1全部の履行が不能
2全部の履行を拒絶する意思を明確
3残存する部分のみでは契約をした目的を達することができない
4期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に期間経過
5前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがない
以上の場合契約の全部を直ちに解除できる

契約の一部の解除
1一部の履行が不能
2一部の履行を拒絶する意思を明確

数量指示売買とは一体なんだったのか

旧法下における民法のなぞなぞ問題

H23 〔第26問〕(配点:2)
売買に関する次の1から4までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか。(解答
欄は,[№33])
1.売買代金額が,契約の際に表示された目的物である土地の面積を基礎に決められたにもかか
わらず実際にはその面積が不足していた場合,売主は,その面積の表示が契約の目的を達成す
る上で特段の意味を有しなくても,その土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得た
であろう利益について損害賠償の責めを負う。
2.他人の土地を買主に移転するという債務が売主の責めに帰すべき事由により履行不能となっ
た場合,目的物である土地を売主が所有していないことを知って売買契約を締結した買主は,
売主に対して損害賠償を請求することができる。
3.買った土地の一部が売主以外の者の所有する土地であり,契約締結時に買主がその事実を知
っていた場合において,売主がこれを買主に移転することができないときは,買主は,売主に
対して,その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することはできない。
4.売買の目的物である土地の実際に有する数量を確保するため,売主が一定の面積を契約にお
いて表示し,かつ,この面積を基礎として代金が定められた売買において,実際の面積が超過
する場合,売主は,契約締結時にその超過の事実を知らなかったときは,買主に対する意思表
示により,超過した部分の割合に応じて代金の増額を請求することができる。

数量不足の場合特段の意味があれば履行利益の請求はできるのか

スルーしてしまいそうな肢の1

1.売買代金額が,契約の際に表示された目的物である土地の面積を基礎に決められたにもかかわらず実際にはその面積が不足していた場合,売主は,その面積の表示が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しなくても,その土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について損害賠償の責めを負う

正解は2

ほとんどの人が×にするであろうこの肢。正解も×であるが、司法試験 短答過去問題集 平成23年度P136によれば「契約の際に表示された面積が契約の目的を達成するうえで特段の意味を有しないような場合には、そもそも同条の数量指示売買にあたらない。」としている。引き合いに出されている判例は数量指示売買のリーディングケースである昭和43年8月20日判決。
特段の意味を有さないから数量指示売買にあたらないのか?特段の意味がよく分からないが、いずれにしろ数量指示売買に該当したとしても565条での損害賠償は信頼利益にとどまるとされている。だから×にするだろう。
しかし、司法試験・予備試験 体系別短答式過去問集 (3) 民法(2) 2020年P312では、数量指示売買にあたらないからとはせず、昭和57年1月21日判決にいう「その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないとき」は「買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わない」をあてはめている。
問題は数量指示売買にあたるかあたらないかである。ネット上の記事を見ても概ね昭和57年判決は数量指示売買にあたらないとするものばかりであるが、判決文ではその点には触れられていない。
1仮に売主に帰責事由があり損害賠償ができる場合にも、その特段の意味がなければ履行利益は請求できないのか?
2当該事案ではそもそも数量指示売買でないから損害の請求自体できないのか?
3当該事案では数量指示売買にあたるが、履行利益の損害賠償請求が認められるためには特段の意味が必要という意味なのか?
4当該事案では数量指示売買ではないが、特段の意味がある場合は数量指示売買になり、その場合は履行利益の請求もできるという意味なのか?

昭和57年の事案は要するに、買主が得たであろう利益=履行利益の請求を否定しているだけであって、信頼利益についてはそもそも請求されていないので触れられていないだけなのかもしれない。
信頼利益が認められるとするなら、必然的に数量指示売買になりそうである(勿論債務不履行による損害賠償もあり得る)。

https://smtrc.jp/useful/knowledge/sellbuy-law/2019_10.html
数量不足の場合、どの範囲の損害について賠償請求できるか議論があります。
 従前は、不足がないと誤信したことにより被った損害(信頼利益)の範囲にとどまり、不足分が仮に存在していたら得られたであろう利益(履行利益、例えば、契約に表示された通りの面積が存在すると仮定して、転売により得られたであろう利益)までは含まないと考えられていました。
 しかし、最高裁昭和57年1月21日判決は、「土地の売買契約において、売買の対象である土地の面積が表示された場合でも、その表示が代金額決定の基礎としてされたにとどまり売買契約の目的を達成するうえで特段の意味を有するものでないときは、売主は、当該土地が表示どおりの面積を有したとすれば買主が得たであろう利益について、その損害を賠償すべき責めを負わない」と述べ、その事案での結論としては否定したものの、履行利益の賠償請求が認められる余地もあることを示唆しました。

上記の記事によれば「履行利益の賠償請求が認められる余地もあることを示唆」とあり、つまりこれは当該事案を数量指示売買であるとみなしているということだろう。

改めて数量指示売買とはなんぞや

昭和43年判決
民法五六五条にいう「数量ヲ指示シテ売買」とは、当事者において目的物の実際
に有する数量を確保するため、その一定の面積、容積、重量、員数または尺度ある
ことを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められ
た売買を指称するものである。

相変わらず分かったような分からないような定義である。結局当てはめの段階でなんとでも言えそうだが。厄介なのは不動産取引で、どうやらこの裁判所の見解は不動産取引の実情を反映させているようである。
「ところで、土地の売買において目的物を特定表示す
るのに、登記簿に記載してある字地番地目および坪数をもつてすることが通例であ
るが、登記簿記載の坪数は必ずしも実測の坪数と一致するものではないから、売買
契約において目的たる土地を登記簿記載の坪数をもつて表示したとしても、これで
もつて直ちに売主がその坪数のあることを表示したものというべきではない。」

分かりやすく言えば一坪いくらとか1平方メートルあたりいくらなどで価格を決定した場合が数量指示売買ということなのだろう。
土地などはそれ一個を塊として取引するわけで、そうなると具体的にその面積がなければならないとでも契約内容に記載していない限り、当該土地を引き渡せば確かにそれでおしまいという考えも分からなくはない。
もっとも面積が半分しかないとかなったら問題だが、そこまでいけばもはや錯誤無効かもしれないし、面積が少ないのを売主が分かっていたら詐欺もあり得るし債務不履行による損賠もある。
担保責任のキモは債務者に特に帰責性がなくても責任追及できる点にあるので裁判所が言わんとするところも分からないではないが、あまりに技巧的過ぎると言える。
そりゃ改正されるわな(笑)

短答の疑義肢

H25 〔第24問〕(配点:2)
売主の担保責任に関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものを組み合わせたもの
は,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№26])
ア.他人の土地の売買において,売主がその土地を取得して買主に移転することができない場合
であっても,契約の時に売主がその土地が自己に属しないことを知らなかったときは,売主は,
契約の解除をすることができる。
イ.売買の目的物である建物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において,買主がその滅
失を知らなかったときは,買主は,その滅失していた部分の割合に応じて代金の減額を請求す
ることができる。
ウ.判例によれば,数量を指示してした土地の売買において数量が超過する場合には,売主は,
数量が不足する場合の代金の減額に関する民法の規定の類推適用により,代金の増額を請求す
ることができる。
エ.売買の目的物である土地のために存すると称した地役権が存しなかった場合における買主の
契約の解除は,買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。
オ.強制競売の目的物である土地が留置権の目的である場合において,買受人は,そのことを知
らず,かつ,そのために買受けをした目的を達することができないときであっても,契約の解
除をすることができない。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ オ 4.ウ エ 5.ウ オ

旧法下での正解は5のウオ
肢のアにちょっと疑問が

ア.他人の土地の売買において,売主がその土地を取得して買主に移転することができない場合であっても,契約の時に売主がその土地が自己に属しないことを知らなかったときは,売主は,契約の解除をすることができる。

旧法では売主の解除権がある。
肢のアの言うように解除できるが、旧562①では「損害を賠償して」となっている。損害がなければ賠償しなくてもいいので間違いとは言えないのかもしれないが正解と言い切れるのか。仮に肢のアが間違いだとしても選択肢から5になるので問題ないが。

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