不同意わいせつ導入によって電車内の痴漢行為はどのような罪名になるのか?

ジャニーズ事務所の性加害問題で、被害者の被害を受け始めた年齢が13歳以上が多いというコメントを見かけた。
以前は13歳未満の者と性交を行えば暴行脅迫がなくても処罰されていたからである。14歳だと思っていたのは内緒である(笑)
ジャニー氏のやり方が姑息なのは暴行は当然行わず、脅迫も行わない。拒否されれば行為はやめていた点である。
明確に拒否しない、拒否できないような状況に乗じてやっており、まさに不同意性交に列挙されているような事案である。
さて、不同意性交罪導入によって、暴行脅迫がなくても処罰されうる(というか処罰されやすくなったと言ったほうがいいのか)ことになり、同意困難な状況が類型化されている。
欧米にならったものだと推察するが、欧米では同意がないというのを推定するような構造だったと思うが(確かではない)、日本の場合はどうか。
同意がない、あるいは拒否したなど明確に意思表示していればそれは分かりやすいが、そうではない場合、要するに明確に同意もしていないが拒否もしていない場合に同意がないと推定するような規定だと思われる。
仮に、列挙されているような状況で同意の表示があった場合でも同意なしとみなすのか?
https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html
性犯罪の本質的な要素は、「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」であることだと考えられます
この本質からすれば自由な意思決定が困難な状況での同意があってもそれは同意とはならない可能性が高い。もっと言えば、列挙されているような状況下で性交を行ってしまうと、訴えられればかなり不利な状況に陥ることが予想される。
従って、普通に交際している男女がホテルの部屋をとって宿泊中に性交を行ったとして、女性が不同意性交で訴えたとしたら、列挙されている事案にあたらないため明確に拒否したのに性交されてしまったとか、それこそ暴行脅迫によって無理矢理に性交されてしまった、などの状況が必要ということになろう。

さて、この不同意性交もちろんわいせつも強制わいせつではなく不同意わいせつになっているわけで、列挙されているものも同じものが列挙されている。
ここで疑問なのは暴行も脅迫も行わずにただ単に触って逃げるような痴漢行為は不同意わいせつでは明確に処罰されうるものの、今までどういう処罰がなされてきたのか?という点である。これからというよりむしろこれまでの話である。
よくある電車内での痴漢で現行犯逮捕!などはこれまでの法律、その解釈や運用などから強制わいせつとは言えないのではないか?
と思ったらやはり、条例違反などで逮捕されている場合が多いとの事。
https://daimei-law.com/keiji_column/chikan-kyouseiwaisetsu/
https://wellness-keijibengo.com/chikan-bengoshi/chikan-hudouiwaisetsu/
強制わいせつで立件される場合は下着の中に手を入れたなどの事例の場合なようである。
しかし、これはわいせつ度が高いからではなく、恐らく手を入れるような行為が暴行と判断されたからのようである。
わいせつの度合いの強弱で判断するのは法の解釈適用において要件にないものを取り入れることになっておかしい。
そうすると、これまで条令違反で検挙立件されていたような事案が不同意わいせつ罪創設によって形式的にはそれに該当するので不同意わいせつで立件されることになる。
この点につき同じような疑問を持ち、これまでと同じように条令で立件するべきとしている向きもありそれはわいせつ概念に変更がないからと言う。
しかし、条例違反か強制わいせつ罪かという分水嶺は暴行のあるなしかという観点からすればおかしな法適用ではない。
自由な意思決定が困難な状態で行われたか否かにその本質があるのだとすれば、暴行脅迫がなければ立件しても有罪になりにくかった今までの裁判所の杓子定規な判断が問題だっただけと言うことができる。

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