短答の論理 理由付け

〔第33問〕(配点:3)
処分の取消しの訴えの審理に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合に
は1を,誤っている場合には2を選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№71]から[№74])
ア.審査請求前置主義が採用されている場合に,審査請求が不適法として却下されたときは,審
査請求前置を満たしたことにはならないが,適法な審査請求がされたにもかかわらず,裁決庁
が誤って審査請求を却下した場合には,裁決庁は実体審理の機会を与えられていたのであるか
ら,審査請求人は,直ちに処分の取消しの訴えを提起することができる。[№71]
イ.取消訴訟においては,自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めるこ
とができず,原告がこの制限に触れる主張のみを行っている場合には,訴えが却下されること
になる。[№72]
ウ.原処分の取消訴訟と原処分についての審査請求を棄却した裁決の取消訴訟とを提起すること
ができる場合,原処分の取消訴訟においては,裁決固有の瑕疵を主張することもできる。[№7
3]
エ.国家公務員法に基づき人事院が行う修正裁決は,懲戒権者の行った懲戒処分を一体として取
り消し,人事院において新たな内容の懲戒処分を行うものであるから,修正裁決が出された後
において懲戒権者の行った懲戒処分の取消しを求める訴えは,訴えの利益を欠くものとして却
下されることになる。[№74]

解答http://www.moj.go.jp/content/000111535.pdf
肢エに着目。
問題文を文章どおり読む。
「新たな処分→元の懲戒権者の処分の取り消しを訴える→訴えの利益を欠く」
論理的に間違いなさそうだ。しかし、修正裁決はあらたに処分を行うものではない。
修正裁決がなされると原処分は最初から修正されたものとして存在することになるらしい。最判昭和62.4.21

たまに短答では理由付けを聞かれることはないと言う解説をきくが、漫然と問題文を読んでいると理由付け自体が間違っている肢があることに気づかない場合がある。
勿論これが短答落ち常連の悲しい性である。

H19-34
自動車運転免許に係る処分についての訴えの利益に関して述べた次のアからウまでの各記述の中から,最高裁判所の判例に照らして正しいものを選びなさい。

ア. 運転免許効力停止処分についてその効力停止期間が経過したときは,当該処分が前歴となっ
て道路交通法上不利益を受けるおそれがあるとしても,処分の取消しを求める訴えの利益は失
われる。

運転免許に関しては訴えの利益があるとする判例とないとする判例があるが、本肢では前提として「道路交通法上不利益を受けるおそれがある」となっている。
従って法律上不利益を受けるならどのような処分であっても訴えの利益はあることになる。

訴えの利益

予備28-19
ウ.建築基準法に基づく建築確認は,それを受けなければ工事をすることができないという法的
効果が付与されているものにすぎないが,建築確認が違法であるとして判決で取り消されれば,
相当程度の確実さをもって,工事完了後,建築主事等において検査済証の交付を拒否すること
になるか,又は特定行政庁において違反是正命令を発すべきことになるのであるから,当該工
事が完了した場合においても,その取消しを求める訴えの利益は失われない。

端的に言えば、建築確認が取り消されたとしてもそれだけでなんらかの違反行為を是正させるような法的義務は発生しない。
肢の理由付けがどうあれ、工事が完了して以降に建築確認を取り消す場合の訴えの利益はないということになる。
もっとも、少なくとも工事が着工していない段階であれば建築確認がおりなければ建築できないのだから訴えの利益はあるということになろう。

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