短答の論理 債権譲渡

昭和50-80
指名債権の譲渡について次の記述のうち誤っているのはどれか。
という問題で混乱する。

(3)譲渡人は譲渡の通知をしていない間は債務者に対し履行を請求することができる。

〇か×か?

さて、債権譲渡につき債務者に通知もせず、承諾も得ていない場合、一体どんな法律関係になるのか。
この点、譲受人は債務者に請求できないのは分かりやすい。また、債務者の側からは譲渡の効力を認めてもよい、というのも比較的分かりやすい。
コンメンタールではこのあたりまでは言及があるが譲渡人の債務者に対する履行請求については言及がない。
そして、このあたりの知識はうろ覚えながら覚えているのだが、肢(3)の知識がなく躓く。
コンメンタールでも言及がないことなのだから覚えていないのは当たり前である。
自分の知識そのものに自信がない、及び問題として出されているなら判例とかが学説で触れらえているはずだという先入観から色々と無駄な考えをめぐらし余計混乱してしまう。
明確な言及がないという事は、ここは民法の原則通りということになろう。
となると、債権譲渡契約は譲渡人と譲受人の間で有効に成立しているのであり、それが債務者や第三者に対抗できるかという話とは違う。
たいがい、この対抗問題ばかりが問題で取り上げられるため原理原則について改めて問われると、それについての知識がないため混乱するのが短答落ち常連である。
債権譲渡が有効に成立しているということは譲渡人から債務者に履行請求できるわけがない。いや、履行請求したとして弁済されたらそれこそ債務不履行で譲受人に訴えられるだろう。
肢3のような表現、履行を請求できる、とは要するにそういった不履行にもならないという意味あいを含んでいると読むべきであり、となると間違いだとなる。
正答は(3)

債権譲渡と詐害行為取消し
詐害行為取消も大きく改正されたので少し混乱する

H7-23

オ.債権譲渡された後に債務者が唯一の財産である土地を売却した。
 この場合、債権の譲受人は詐害行為として取消せる。
  しかし、その売却行為が債権譲渡前に行われていたら詐害行為としては取り消せない。

この肢でまず気を付けたいのは前提として債権譲渡後の場合は詐害行為として取消せると明記されている点である。
従って詐害行為で取消せたっけ?と考える必要はない。

基本的に相当な対価での財産売却行為は問題なくできるが、詐害行為として取消せる場合が今回の改正で明確に規定された。
424条に要件が規定されている
A財産の種類の変更によって、債権者が害されるおそれが現に生じる場合 ※不動産を現金化するなど
B債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと
C受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていた
従って肢だけをみると取消せるかどうかは分からないので、肢をよく読まず詐害行為として取消せるという文言を見落としてしまうと
無駄な時間を費やすことになる。

そして、債権譲渡前に行われた取消せる要件に該当するこの売却行為も譲受人は取消せるのか?
まず、詐害行為取消の取り消し債権は詐害行為より前に発生前の原因により発生したことを要する。
当時は異議なき承諾というのがあったが、この問題は前提にもその記載はないので譲受人は取消せるということになる。

しかし、短答常連落ちは問題をより複雑にする習性があるようだ(笑)
ここで、債権譲渡においては債務者が譲渡人に対して抗弁できた事項を譲受人にも言えたよな、などと無駄に思いをめぐらしはじめる。
改正468①にもこの点明記があるわけだが、売却行為自体が有効であっても取り消せるのが詐害行為取消しなのである。

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