執行停止 効力の停止と執行停止 無効確認 準用規定

執行停止と効力の停止の違い まとめ

①差止=まだ処分がなされていない
②執行停止=その処分に付加されている強制措置などの停止
③効力の停止=その処分そのものの停止
④手続の続行の停止

②③④は取消訴訟が前提
執行停止、手続の続行の停止で事足りる時は処分の効力の停止はできない。言い換えるとまず、選択肢になるの執行停止や続行の停止であること。
それらが出来ない時に処分の効力の停止を使う。

処分の取り消しを訴えているだけでは処分は覆らないし、それに続く処分が行われてしまう←25条
従って裁判所で取消判決が出るまでの間の暫定的な救済措置

https://elaws.e-gov.go.jp/(執行停止)
第二十五条 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
5 第二項の決定は、疎明に基づいてする。
6 第二項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
7 第二項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第二項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。

職権ではなく申し立て
公共の福祉に重大な影響または本案に理由がないとみえるときは執行停止できない
疎明 意見をきいて弁論をひらかずに決定できる
処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない

処分の効力の停止と処分の執行停止は一体何がどう違うのか

H21〔第36問〕(配点:3)
次のアからエまでの各事例におけるXが行政事件訴訟法上の仮の救済を求めるとした場合,各事例について最も適切と考えられる仮の救済の申立てを,それぞれ後記1から4までの中から一つ選びなさい。(解答欄は,アからエの順に[№77]から[№80])

ア.出入国管理及び難民認定法に定める退去強制事由に該当するとされた外国人Xが,入国管理局の主任審査官から退去強制令書の発付を受けた事例[№77]
イ.市立の高等学校の校長が,身体に障害を有する入学希望者Xに対し,同校の全課程を無事に履修する見通しがないとして,その入学を不許可とした事例[№78]
ウ.市議会議員選挙が近々予定されている時期に,市長が,同市の住民基本帳に住民として記載されているXは,生活の本拠でない場所を住所として届け出ているとして,職権により,Xの住民票を消除しようとしている事例[№79]
エ.パチンコ店を経営するXが,公安委員会から,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業許可の取消しを受けた事例[№80]
1.処分の執行の停止の申立て
2.処分の効力の停止の申立て
3.仮の義務付けの申立て
4.仮の差止めの申立て

正答1ア3イ4ウ2エ

この問題、肢イとウについては比較的容易に判断がつくが、肢アとエで躓く。
要するに執行の停止と効力の停止の違いが分かっていない。もっと言えば具体的事案への当てはめが良く分かっていないということである。定義だけ覚えても試験でまったく機能しない典型例である。
そして、この執行の停止と効力の停止について明確に分かりやすく解説してある基本書を持っていないのでもはや勉強しようがない、これが20年前だったら(当時は行政法の短答科目など存在しないのでいいけど(笑))。
しかし、今やインターネッツがある。

行政法における「処分の効力」と「処分の執行」の違い
こんにちは 参考までに
処分の効力の停止
処分の効力を暫定的に停止し、処分がなかった状態にすること。
(懲戒免職処分の効力の停止)
処分の執行の停止
処分により課された義務履行確保のための強制手段を停止すること。
(退去強制令書による処分における強制送還の停止)
手続の続行の停止
処分の存在を前提としてなされる後続の手続(処分)を停止すること。
(土地収用に係る事業認定後の収用裁決の停止)

処分の効力の停止の説明だけだと執行の停止との違いがよく分からないが、
処分の執行の停止とは処分自体になんらかの強制手段がある場合があり、その執行を停止させることのようだ。

※追記 取消の判決がでるまでの間取り消したような状態にするのが処分の効力の停止という感じ。要するに処分が既にでている場合。
※追記
冒頭に前述したように、執行停止が申立てられたときにまず検討されるのは執行停止か続行の停止であり、それで事足りる時は効力の停止は使えないという条文の体裁になっている。
肢エは既に取り消し処分が出てしまっている状態で、続く処分や、手続はないから執行停止を行う意味がない。従って効力の停止を使うのが適切である。
肢アは、退去強制発令書がどういうものか分からなくてもこの問題は解ける。
ちなみに退去強制発令書が発付された場合、それを執行して強制送還などを行うようである。要するに続く処分が予定されているので退去強制発令書に伴う処分があるのでその処分を停止させればいいわけである。とは言え、手続の続行の停止とどういう違いがあるのかという問題は残るが。
以前は出入国管理法まで理解しておかなければならないのか!と憤慨していたが、よくよく考えると退去強制発令書は文字通り発令書であってそれを元にして処分を執行するのだから、執行されていなければ執行の停止をすればいいだけであることが今なら分かる。

この点執行の停止は、手続きの続行の停止と紛らわしいが、手続きの続行の停止の場合は当該処分自体では特になんらかの強制手段が付加されているわけではない。その後さらに手続きがある。無効等確認の条文を見ると当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者となっており、そういう意味でも仮の救済と呼ばれるのだろう。

なぜこの問題で混乱が起きているのかと言えば要するに問題となっている処分だけではその裏に隠されている手続きとか処分が見えないからに他ならない。各個別法をある程度知っていなければいけないということになる。
とは言え、行政関係の個別法なんて網羅できるわけがないので判例とか過去問に出てきている分は覚えて対応するしかないだろう。

仮の義務付け仮の差止 37の5 差止の訴え37の4 差止はまだ処分がだされていない

(無効等確認の訴えの原告適格)
第三十六条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。

①当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者
OR
②その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、
+
③当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り
2元説 判例通説

取消訴訟以外への準用規定

1項は取消訴訟以外の抗告訴訟に共通して準用されるもの
2項3項は無効等確認の訴え
4項は不作為の違法確認

(取消訴訟に関する規定の準用)
第三十八条 第十一条から第十三条まで、第十六条から第十九条まで、第二十一条から第二十三条まで、第二十四条、第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。
2 第十条第二項の規定は、処分の無効等確認の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟とを提起することができる場合に、第二十条の規定は、処分の無効等確認の訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟に併合して提起する場合に準用する。
3 第二十三条の二、第二十五条から第二十九条まで及び第三十二条第二項の規定は、無効等確認の訴えについて準用する。
4 第八条及び第十条第二項の規定は、不作為の違法確認の訴えに準用する。

38条1項 共通準用規定

(被告適格等)11
(管轄)12
(関連請求に係る訴訟の移送)13
(請求の客観的併合)16
(共同訴訟)17
(第三者による請求の追加的併合)18
(原告による請求の追加的併合)19
(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)21
(第三者の訴訟参加)22
(行政庁の訴訟参加)23
(職権証拠調べ)24
(取消判決等の効力)33
(訴訟費用の裁判の効力)35

38条2項3項 無効等確認の訴え準用規定

10②(取消しの理由の制限)
20(原告による請求の追加的併合)
25(執行停止)
26(事情変更による執行停止の取消し)
27(内閣総理大臣の異議)
28(執行停止等の管轄裁判所)
29(執行停止に関する規定の準用)

38条4項 不作為の違法確認 準用規定

8(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
10②(取消しの理由の制限)

第三者効 準用ナシ

準用規定を全て暗記できるわけもない。従って暗記するのではなく現場思考で対応するしかない。
まったく準用がないもの
1~7、9、14,15、30~32、34、36~
この中で重要なのは
32(取消判決等の効力)
第三十二条 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
2 前項の規定は、執行停止の決定又はこれを取り消す決定に準用する。

予備23-20
無効な処分の効力につき執行停止を観念する事はできないから、Xは無効確認訴訟を提起した上で本件建築確認の処分の効力の停止を申し立てることはできない。
〇か×か?

解説をみると38③で25~29を準用すると規定されているので〇となっている。
しかし、覚えていない(笑)いや、そもそも知らないと言ったほうがいいだろう。
※追記
解説おかしくね(笑)
改めて法務省の正解チェック。正解
やはり×でいいようだ。

問題
〔第20問〕(配点:2)
Aは,自宅の建築を計画し,Y市の建築主事から建築確認(以下「本件建築確認」という )を 。
受けた。この建築計画地の隣地に自宅を所有して居住しているXは,本件建築確認に係る取消訴訟
の出訴期間経過後に,本件建築確認に係る建築計画は,建築基準関係規定に適合しておらず同計画
に係る建築物は倒壊の危険がある旨主張して,本件建築確認につき無効確認訴訟(以下「本件無効
確認訴訟」という )を提起した。次のアからウまでの各記述について,法令又は最高裁判所の判 。
例に照らし,正しいものに○,誤っているものに×を付した場合の組合せを,後記1から8までの
中から選びなさい (解答欄は ) 。 ,[№38]
ア.無効確認訴訟と国家賠償請求訴訟とは同種の訴訟手続ではないものの,Xは,本件無効確認
訴訟の提起後に,本件建築確認が違法であることを理由として,それにより生じた損害につい
て,Y市に対する国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求に係る訴えを本件無効確認訴
訟に併合して適法に提起することができる。
イ.取消判決の第三者効を定めた行政事件訴訟法第32条第1項は,無効確認訴訟にも準用され
るから,本件無効確認訴訟につき認容判決がされた場合,Xは,Aに対して,本件建築確認の
効力が無効である旨の主張をすることができる。
ウ.無効な処分の効力につき執行停止を観念することはできないから,Xは,本件無効確認訴訟
を提起した上で,本件建築確認の処分の効力の停止を申し立てることはできない。
1.ア○ イ○ ウ○ 2.ア○ イ○ ウ× 3.ア○ イ× ウ○
4.ア○ イ× ウ× 5.ア× イ○ ウ○ 6.ア× イ○ ウ×
7.ア× イ× ウ○ 8.ア× イ× ウ×

正解4

38条3項は、無効等確認訴訟の場合でも執行停止関連の訴えが提起できる、という趣旨で、以前はこの点に争いがあったものを立法的に解決した、ということである。条解行政事件訴訟法P667

とは言え、「無効な処分の効力につき執行停止を観念する事はできない」とあるものの、無効とならなければ処分は続行されるわけで、となると現状で執行停止を申し立てておく必要性もある。しかし、そうなると、執行停止のほうが直截的ではないかと疑問が生じるが、執行停止はあくまで執行停止に過ぎない。
従って、条文を知らなくてもなんとか対応できる肢だったと言えそうだ。

無効確認訴訟は
③当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り
2元説 判例通説

(事情変更による執行停止の取消し)
第二十六条 執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は、相手方の申立てにより、決定をもつて、執行停止の決定を取り消すことができる。
2 前項の申立てに対する決定及びこれに対する不服については、前条第五項から第八項までの規定を準用する。
(内閣総理大臣の異議)
第二十七条 第二十五条第二項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。執行停止の決定があつた後においても、同様とする。
2 前項の異議には、理由を附さなければならない。
3 前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。
4 第一項の異議があつたときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない。
5 第一項後段の異議は、執行停止の決定をした裁判所に対して述べなければならない。ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所に対して述べなければならない。
6 内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第一項の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。

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