〔第6問〕(配点:2)
抵当権に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせ
たものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[No.6])
ア.土地に抵当権が設定された後にその土地上に建物が築造された場合,抵当権者は,抵当権が
設定されていない当該建物をその土地とともに一括して競売することができる。
イ.甲土地の所有権が自己にあると過失なく信じて10年間その占有を継続した者は,甲土地上
の抵当権の存在につき悪意であったときは,甲土地の所有権を時効取得することができない。
ウ.Aが甲土地を賃借したが,その対抗要件を具備しない間に,甲土地にBのための抵当権が設
定されてその登記がされた。Aは,この登記がされた後,賃借権の時効取得に必要とされる期
間,甲土地を継続的に用益したとしても,競売により甲土地を買い受けたCに対し,賃借権を
時効により取得したと主張して,これを対抗することができない。
エ.AがB所有の甲土地を占有して取得時効が完成した後,所有権移転登記がされることのない
まま,甲土地にCのための抵当権が設定されてその登記がされた。Aがその後引き続き時効取
得に必要とされる期間,甲土地の占有を継続し,その期間の経過後に取得時効を援用した場合
は,AがCの抵当権の存在を容認していたときであっても,Cの抵当権は消滅する。
オ.債務の弁済と,当該債務の担保として設定された抵当権の設定登記の抹消登記手続とは,同
時履行の関係に立つ。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ
正答は1のアウです。ええ、間違いました(笑)なんと5にしてました。
アイウを×にしているようですが、アは〇ですよね。なぜ×にしたのかは今となっては謎です。
ウを×にしていますがこれも改めて考えると〇って判断しますね。。。ウについては判例がどうなっているのかはそもそも知りませんが、売買は賃貸借を破るという格言から仮に賃借権を時効取得しても結局負けちゃうんじゃね、という理屈です。多分現場では時効取得した=主張できる、みたいな感じでしょうね。
改めて解いていて躓いたのがエの肢です。勿論、判例は知りません(笑)その時点でダメじゃん、という事で終わらせず法的思考とやらでなんとかならないものか、というのがこのブログのテーマの一つです。
現場ではこの肢を〇にしたのは、時効取得は原始取得だからと考えたからです。権利がまっさらになって自分のものになるから抵当権も消えるだろうさ。
しかし、実は条文があったんですね(笑)
(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
第三百九十七条 債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。
だったらやっぱりエは〇ではないか?そこで判例なんですね。
抵当権が設定されている不動産につき、抵当権の存在を承認して占有を継続して、当該不動産の所有権を時効取得するに至ったときも、当該抵当権は消滅しない。(大判昭13.2.12)
とは言え、判例知らないと解けないかと言うとそうでもありません。
そもそも時効取得する際の善意とか悪意とかって所有権そのものについてのものなので、その土地に抵当権がついていると知ってたからと言って時効取得に直接影響ないわけです。だからこそわざわざ397条で抵当権が消滅すると断りを入れているとも言えます(あくまで個人的見解です)。
そうすると、抵当権つきだと知らない場合はともかく、抵当権を承認している場合はわざわざ消滅させるまでもないとしても特段おかしくはないですよね。
もっとも、仮にこの判例がない場合にこんなこと論文とかでのたまわっていたら減点されそうですが(笑)
いずれにしろ、司法試験委員会としては判例の趣旨を問うという形でそういった事を理解しておきなさいと言っているのかもしれません。
しかし、オを〇にしてるんですよね。。。アイウを×にしてエオを〇にしてるんだから箸にも棒にも掛からない。。。。おあとがよろしいようで
※追記
取得時効期間経過後の再取得時効期間経過後
抵当権を承認していた場合は消滅しない
→397は初回の取得時効に適用、ということなのだろう