カルロスゴーンの逃走を幇助したマイケルテイラーは逃走援助罪ではない

カルロスゴーンの逃走を幇助したマイケルテイラー親子の公判が始まったと報道されていましたが改めて罪状を確認すると、
犯人隠避
出入国管理法違反ほう助
ですね。
一瞬なんで逃走援助やないねんと考えてしまうのが常連落ちというところでしょうか(笑)

(犯人蔵匿等)
第百三条 罰金以上の刑に当たる罪を犯した者又は拘禁中に逃走した者を蔵匿し、又は隠避させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
逃走援助罪って拘禁されている者が対象でした。。。。

(逃走援助)
第百条 法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、三年以下の懲役に処する。
2 前項の目的で、暴行又は脅迫をした者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

さて、肝心のカルロスゴーンさんはもちろん逃走罪ではありませんよね。保釈されてますから。

(逃走)
第九十七条 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、一年以下の懲役に処する。

では、一体どういう罪になるのか。

結局新たな罪って出入国管理法違反くらいでしょうか。保釈中に逃走しても別にどうってことないようですよ(笑)
昔保釈中に韓国に渡ってちゃんと戻ってきて裁判受けた大物フィクサーがいましたね。ま、保釈金は没収されますましたが(後述)、保釈中の逃亡についての罪って特に規定されていないということを知っておじさんびっくりです。
※保釈金の没取について 96条
ここでひとつ疑問、逃亡しても公判までに戻ってくればいいのでは?つまり、逃亡したとしてもすぐに戻ってきても保釈金は没取されるのか?
この点、保釈の取り消しが行われても保釈金の没取は裁量による(必要的没取は96条3項)。また、保釈が取り消されても収容されると没取されていなければ返還される。規91条

保釈中逃走した場合は勾留状を執行して収監するようです(98条)。ちなみに米国だと賞金稼ぎとかが代わりにやってくれそうですけど、保釈金金融から保釈金借りてない場合は使えませんね(笑)
となると逃亡者で出てきたような連邦保安官あたりがやるんでしょうかね。日本だと検察庁の職員さんがやらされるようです。
保釈中に逃亡したらどうなる?

逃走関連の罪の主体客体についての整理

逃走と名がついていても微妙にその主体客体が違うから注意が必要である。
短答問題として出題しやすいと言えよう。こんなもん覚えてもほとんど役に立たないだろうが(笑)

97条 逃走罪の主体

裁判の執行により監獄に拘禁されている者
※少年鑑別所は監獄にあたるが少年院は監獄にあたらないらしい。つまり、少年院から逃走しても逃走罪にはあたらない。

100条 逃走援助の客体

客体は法令により拘禁された者
現行犯逮捕や令状が発せられる前の緊急逮捕された者も該当する。少年院収容された者も法令により拘禁された者と解する。条解刑法P275
現行犯逮捕されて逃走してもそれだけでは罪にはならないが、その逃走を援助した者は罪に問われてしまいますね。
99条 被拘禁者奪取罪と同じ客体です。

98条 加重逃走の主体

裁判の執行により拘禁された者プラス拘引状の執行を受けた者
拘引状の執行を受けた者とは、広く身体の自由を拘束する令状の執行を受けた者
逮捕状の執行を受けた者も含まれるが、現行犯逮捕された者や令状発付前の緊急逮捕された者は含まれないという。
従って現行犯逮捕された者が器具を損壊して逃走しても加重逃走にはあたらない。そりゃ逃げるが勝ちだな(笑)

法令により拘禁された者>裁判の執行により拘禁された者
法令により拘禁された者の方が裁判の執行により拘禁された者より対象が広くなる。
条文構造をみると結局、現行犯逮捕、緊急逮捕された者が逃走する場合はその者自身は罪にならないようにしてあると言える。

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