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平成20年
民事系問題
会社法と民訴の総合問題として民事系第2問、そのうち設問3,4が民訴の対象のようだ。
出題趣旨
受験生が知っているべき事項の範囲については,出題に当たって十分配慮している。例えば,文書提出命令不遵守の効果に関する四説の内容については,立証責任の転換,真実擬制,自由心証といった基本的な用語の理解があれば分かるように誘導しており,これらの説に関して,学説上論じられていることの詳細については知らないという前提に立っている ← 知らなくてよいということか
出題趣旨には各説からの立場で論ずることが前提となっているが?問題文の記載から読み取れということらしい。
心証説とかそんなもんは基本書にも書いてない。
設問3
取締役解任の訴えが,被告側の固有必要的共同訴訟である
主観的追加的併合が理論的に許容されるか否かは,民事訴訟法の著名な論点の一つであるが、主観的追加的併合が許容されるべきことを示すことが必要になる。
具体的には,取締役解任の訴えが被告側の固有必要的共同訴訟であって,訴訟共同と合一確定が要請される場面であることを考慮すべきであることはもとより,取締役解任の訴えにおいては,出訴期間が法定されており,本件においては,改めて再訴を提起する方法によっては期間徒過により対応できないということ,そして被告追加の申立てがされたのが,訴訟の極めて初期段階にあること,といった本件固有の事情を的確に抽出し,それを最高裁判決摘示の理由に対する反論の形で展開していくことが求められる。
設問4
民事訴訟法第224条の具体的な適用(特に効果)については,さほど言及されていない
その場で考え,解決に導く応用能力を試すべく出題したものである(出題に当たって,詳細な誘導を施したのはそのためである
小問(1)
裁判所が,必要性及び要件充足を認めて発出した文書提出命令に当事者が従わない場合に,民事訴訟においてどのような「不都合」が生じるのかを考えながら,その解決手段としての民事訴訟法第224条第3項の効果を論じるもの
各説の長所短所を,同項が定める要件(特に,同条第1項の要件との違い)や同条第3項の効果に関する「真実と認めることができる。」という規定の文言に留意しながら,多角的に検討することが求められる
小問(2)
文書提出命令の申立てに「証明すべき事実」を記載すべきものとされていることの意義や,本件において申立書に証明すべき事実として実際に記載されている各事項が,本件訴訟における立証命題との関係でどのように位置付けられるか(主要事実又は間接事実のいずれであるのか,法的評価であるのか等)を考えながら,検討
小問(3)
心証説以外の立場からは固有必要的共同訴訟という合一確定が要請される場面における民事訴訟法第224条第3項の効果を考えさせるもの共同被告のうちの一人による文書の不提出という態度の訴訟法上の位置付け(民事訴訟法第40条第1項との関係)
心証説の立場からは特に証拠共通の原則との関係を,両被告の実質的関係を考慮
採点実感
未知の問題に出会った場合には,基本的な概念に掘り下げてそこから考えていくほかない
考えるための前提となる基本的な事項をきちんと理解し,身に付いていることが必要
転換説の方が,擬制説よりも,相手方の反論の余地が小さいとする答案
設問3
定時株主総会や役員Aの解任を求める訴えの提起の日時,甲社を被告として加える旨の申立書が送達された日,甲社からの答弁書を原告Jが受領した日が問題文に記載されていることの意味を想起すべき
会社法第854条の提訴要件の関係や,問題とされている甲社を被告として加える申立てが訴訟の極めて初期段階でされていることに着目してもらうための時系列の記載である
原告Jの代理人としての立場からの主張が求められている
主観的追加的併合ではなく,訴状の補正(訂正)と解されるから最高裁判決の射程外であるという主張のみに終始するとすれば,原告代理人Jの態度として得策かどうか,想起されるべき
判例が当該事例に当てはまらないことを主張させるという問題に対しては,全く対応できない答案も散見された
設問3では固有必要的共同訴訟としながら,設問4(3)で民事訴訟法第224条第3項が甲社に適用になっても,他方被告Bには適用にならないとしたまま疑問が示されていない答案
設問4
転換説の問題点として,相手方の反証の余地があることを挙げながら,心証説を採用することにまったくちゅうちょのない答案が相当あったが,論理の一貫性の観点から問題
民事訴訟法第224条第1項と第3項の要件の違い等に気付かない答案が多い ※?
主観的追加的併合についての雑感
まず、この問題にあたる前まで主観的追加的併合が著名な論点だという認識がなかった。
62年判例の事案の具体的内容がよく分からないが、主観的追加的併合を認めない理由の一つに訴訟が複雑化するという事が学説などでも言われている。
その観点からすれば、本問のような被告側の固有必要的共同訴訟の場合はむしろ追加して併合したほうがいいと言える。
そもそも、判例が言うような訴訟の複雑化や訴訟不経済というのは確かに別訴と言えるようなものまで併合してしまう場合はそう言えるし、判例のケースもそうかもしれない。
必要的共同訴訟の場合は必ずしもそうとは言えないので、判例や学説などの言う理由で主観的追加的併合を認めないのなら必要的共同訴訟の場合はそれにあたらないと言えるのではないか。
証明妨害の法理とは
この論点については知っていなくても書けるように誘導してくれているという。
証明妨害の法理を勉強したときに,証明妨害の効果として主張されている考え方としては,証明責任が転換されるという考え方(転換説),証明度が軽減されるという考え方(軽減説 ,真実が擬制されるという考え方(擬制説 ,裁判所の自由心証にゆだねら ) )れるという考え方(心証説)
4つの説が紹介されている。
224条1項と3項の要件の違いとは
採点実感に書いてある意味がよく分からなかったのは、おっしゃるように条文自体の意味を全く理解していなかったからである。
単に文書提出命令に従わないと真実擬制が働くくらいとしか理解していない・・・
224条の条文構造
1項は当該文書の記載に関する相手方の主張(文書提出命令申し立ての手続きにおける221①1文書の表示2文書の趣旨)を真実と認めることができるほか、
さらに三項所定の要件の下で当該文書により証明すべき事実(221①4証明すべき事実)に関する相手方の主張を真実と認めることがができる。基本法コンメンタール民事訴訟法2P245
〇1項は要するに文書の記載内容が真実として扱われる。
〇3項はその文書で証明しようとしている事実が真実として扱われる。
1項の場合は不提出のみで該当するが、3項はさらにその文書に関して具体的な主張及びその文書で証明しようとした事実を他の証拠で証明する事が著しく困難なときに真実擬制が働く。
確かに別物ですね(笑)
文書提出命令の「証明すべき事実」とは
出題の趣旨には「本件訴訟における立証命題との関係でどのように位置付けられるか(主要事実又は間接事実のいずれであるのか,法的評価であるのか等)」とあるが、そもそも221条①4の証明すべき事実とは何なのか?
224条①の相手方の主張から224③の証明すべき事実を推論する
224条1項にいう「当該文書の記載に関する相手方の主張」とは、当該文書によって証明しようとする事実ではなく、文書の性質、趣旨、成立に関する主張である。例えば、金銭消費貸借の事実を証明すべき事実として借用証書の提出命令が発せられた場合には、消費貸借契約成立の事実ではなく、①借用証書が存在する事、②その文書を申立人が作成者であると主張する者が作成した事及び③その文書に、誰から誰あて、金額、弁済期、利息その他申立人が主張する通りの記載がされていることを意味する。基本法コンメンタール民事訴訟法2P223
仮に文書が提出されず、上記の①②③が主張できなければ(主張しても証拠(当該文書)がない)結果として224①②も適用できないことになり、文書を提出しない方が得となる。その為③項があると言えよう。
そうすると、224条③にいう証明すべき事実とは、上記①②③が真実だと認められることによって証明しようとする事実ということになる。従って、221条①4号に記載されているものすべてがその対象となるものではないと言えよう。
この点、判例や学説がどういっているのか知らない(笑)
よって確認せねばなるまい。そして、余計に混乱するだろう(笑)
旧法下の判例では東京高判昭54.10.18下民335巻5-8.1031頁。このときは現224③のような規定がなく、学説判例ともに真実と認めることができるのは文書の記載に関する主張であるとしていたものを、当該文書によって証明すべき事実とした。
よって現224条3項の証明すべき事実とは、当該文書を証拠原因として認定される要証事実ということになる。判例講義民事訴訟法P190
とは言え、その要証事実が良く分かっていないのだが(笑)
もっとも、本問では「甲社との関係で「真実と認めることができる」Kの主張は何か,⑴で採用した考え方を前提に論じなさい」とあるので証明妨害の法理から真実と認めることができる事実を確定させる必要がある。
とは言え、これはあくまでこの問題特有の話なのでとりあえずスルーしよう。
共同被告がいる場合の文書不提出の効果
39条 共同訴訟人独立の原則
もっとも証拠共通の原則 判例通説 ※主張共通ナシ
必要的共同訴訟の場合は
40条① 他の共同訴訟人の利益になる場合には、全員のために効力を生じる
※他の共同訴訟人に不利益になる場合には、他の共同訴訟人に対する関係は勿論、訴訟行為をした共同訴訟人についても効力を生じない http://hounokiso.blog97.fc2.com/blog-entry-569.html
本問は固有必要的共同訴訟にあたる。
証拠共通の趣旨から言って、必要的共同訴訟においても証拠は共通である。
文書は証拠であり、証拠を提出しなかった効果(制裁)も共同被告に及ぶのか。
必要的共同訴訟の場合、訴訟行為は他の共同訴訟人に利益になるときは効力を生じるので、不利益になる時は効果が及ばず、文書提出命令に従わなかった場合の制裁は不利益なので共同訴訟人には及ばないようにも考えられる。しかし、そうだとするとわざわざ制裁規定を置いた意味がなくなってしまう。
証拠共通という意味は証拠が有利にも不利にもなるという意味も含まれており、証拠を提出する、提出しない、また、提出しなかった効果も共通のものであると考える。
そうすると共同訴訟人にも証拠不提出の効果は及ぶと考えられる。
と思うが、判例や学説がどういっているのか知らないので後程確認せねばなるまい。