抵当権 まとめ

抵当権侵害

通常の使用収益を超える行為によって目的物の交換価値が減少した場合に、物権的請求権を行使することにより侵害を排除でき、また、それによって損害が生じた場合は不法行為にもとづく損害賠償を請求できる。

被担保債権額について優先弁済を受けることができれば基本的に損害はないと言える。※物権的請求権の場合は価値の減少だけで認められる場合がある。

物権的請求権 侵害行為の禁止
抵当権の物権としての効力に基づいて伐木の搬出を禁止する事ができる。
※山林上の伐木は抵当権の効力が及んでいる。立木の伐採、搬出は交換価値の減少を招くことになり、設定者に許されている通常の利用行為を超えるから、伐採、搬出禁止の妨害予防請求権が行使できる。短答S57-29肢1
逆に抵当土地上に設定者が建物を築造することは通常の利用行為と言え、禁止することはできない。

侵害があって被担保債権を上回る価値がある場合でも抵当権不可分の原則により物権的請求権を認めるのが通説のようである基本法コンメンタール物権第三版P205上記山林の立木に見られる

不法行為に基づく損害賠償
被担保債権を十分に担保できなくなった事が必要。
〇損害賠償請求の時期
実行前でも弁済期後であれば抵当権の実行が可能であるから訴訟時の目的物の時価を基準にして損害賠償が請求できる。

抵当権のおよぶ範囲

この問題は370条の抵当権の効力は目的不動産に付加してこれと一体をなす物におよぶとする規定に争いがあるからである。

付合物
242条の付合物がこれに含まれる事は争いナシ

従物 ※従物のようにみえるものでも第三者の所有に属する物はそもそも従物には含まれない
設定当時の従物には及ぶ

従たる権利
建物の敷地利用権は従物に準じる基本法コンメンタール物権第三版P197
※建物と土地が同一所有者に属している場合は法定地上権388条

何度やっても間違える問題(笑)

令和3年予備短答民法第6問抵当権と時効取得
久しぶりにこの問題解いていたら、さっぱり分からない(笑)
結局何も理解していないどころか、覚えてもいないという事になる。
なぜ、間違えていたのかというと抵当権がからんでおり、抵当権がついていると何か特別な効果が発生するのではないかと勝手に妄想して問題にあたっていたからである。
従って、問題を解くたびに妄想があらたに湧き、その妄想自体が間違っているのだから勿論間違えるに決まっている。
また、答え自体も覚えていないのは妄想によるロジックが前提にあって肢を見ているので間違って理解しているので間違いを覚えているということになる。
短答の過去問にあたる際に、間違った肢を正しい肢に直せと言わる事があるが、これは間違った肢をそのまま記憶してしまうと間違って覚えてしまうことがあるからだろう。まさにそういう事なのだ。
とは言え、なぜこのような妄想(笑)が出てくるのかと言えば、それは突き詰めると抵当権が良く分かっていないからに他ならない。
抵当権はこれこれこういう権利だ、抵当権の効果はこういうものだ、という表面的な知識があっても、抵当権そのものが問われるのではなく、法的効果を横断的に問うような問題だとその浅い知識が一気に露呈する。
そういう意味ではこの問題は抵当権の問題だと割り切れないことになる。

体系的理解、横断的知識

これは論文にも言えるが、体系別にカテゴライズして、一つの権利の問題だと言い切れないものが多々ある。
民法は特に体系的な理解が重要で、体系的に理解していないと正解にたどり着かない場合が多い。
法律の勉強をするときはまず全体像を把握してから、とよく言われる。最初はよく分からない部分があってもとにかく前に進んで一通り勉強を終わらせろと。
そして、過去問を解きまくれと。
しかし、今になって思うがこれは一面しか見ていない、誤解を招く言い方だろう。

土地に設定された抵当権と建物の関係

法定地上権388 
要件 抵当権設定時 建物あり 土地建物同一所有者 ※設定後の築造 成立せず

土地建物の一括競売389
要件 抵当権設定後 建物築造 ※優先弁済は土地のみ

抵当権の消滅

次の場合確定的に抵当権が消滅するか ※他の抵当権者なし
H4-30
肢ウ 乙が残存元本ののほか、最後の2年分の利息及び遅延損害金を支払った場合
375 旧374 はあくまで後順位抵当権者や一般債権者の利益を考慮したものであるから、抵当権設定者たる債務者または物上保証人に対する関係では本条1項の制限を受けない。大判昭9..10裁判例8民事53頁 すなわたい他の債権者がいないときは全部について弁済を受けることができる。基本法コンメンタール物権P208

正解 ×

(抵当権の消滅時効)
第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

本条の反対解釈により、例えば当該不動産を買い受けた者に対しては債権とは別に独立して時効消滅することがある。基本法コンメンタール民法総則P254

(抵当不動産の時効取得による抵当権の消滅)
第三百九十七条 債務者又は抵当権設定者でない者が抵当不動産について取得時効に必要な要件を具備する占有をしたときは、抵当権は、これによって消滅する。

(抵当権の目的である地上権等の放棄)
第三百九十八条 地上権又は永小作権を抵当権の目的とした地上権者又は永小作人は、その権利を放棄しても、これをもって抵当権者に対抗することができない。

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