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出題の趣旨
設問1
取消訴訟の訴訟要件のうち,原告適格を論じさせる問題
いかなる判断枠組みにより,いわゆる行政処分の第三者の原告適格を判断すべきか
「処分の根拠となる法令の規定」として,モーターボート競争法第5条及びその委任を受けた同法施行規則第12条,第11条の規定を確認し,
次に,「当該法令の趣旨及び目的」として同法第1条等からうかがわれる同法の趣旨・目的を検討し,
さらに,同法と目的を共通にする関連法令が存在するならば,その趣旨・目的を参酌することが不可欠
場外発売場内の秩序や競走の公正・安全以外には,具体的に保護法益を特定していない
同法施行規則は,文教上の利益を保護しているが,個別の文教施設を保護する趣旨を明確にしていない
一定の距離内の文教施設を許可の申請書類に記載することを求める同法施行規則の規定
様々な内容の関係通達が,原告適格を認める根拠又は手掛かりにならないか<という点も,検討する必要がある
設問2(1)
取消措置の可能性を除去するというAの目的を最も直接的に実現する訴えは,本件許可を取り消す処分の差止めを求める抗告訴訟と考えられる。
もう一つ,要求措置を対象にする何らかの当事者訴訟又は抗告訴訟を候補として具体的に挙げて,訴訟要件が満たされるか,及びAの目的を実現するために適切な請求かという点を,比較しながら検討すること
設問2(2)
法令の文言や,刑法上の違法性を阻却するという許可の性質などを考慮して,国土交通大臣による許可・不許可の判断に裁量が認められるかを検討
本件の通達の法的効果は何か,行政手続法上は何に当たるかを示すことが求められる。
通達に定められている地元同意を許可申請に際して求める裁量が,関係法令に照らして認められるかどの範囲で認められるかが論点であることを確認する
地元同意の意義と問題点を,コミュニケーションと手続参加の促進,手続の公正性・透明性・明確性などの観点から具体的に検討する
地元同意を行政指導として求め得るにとどまるのか,
地元との十分な協議を経なければ許可を拒否できるか,
十分な協議を経ても同意がなければ許可を拒否できるか,
協議の不十分さや同意の不存在が許可を拒否する一つの考慮要素になるか
本件における許可の取消しの公益性及びAの信頼の要保護性の程度を考慮した場合に,本件許可の取消しが適法か
設問3
が場外舟券売場の設置許可制を条例で定める場合に,配慮すべき点を指摘させる問題
第一に,許可後の是正命令,罰則などを条例に定めて実効性を確保する必要性,
第二に,住民,利害関係者,専門家などが参加して周辺環境との調和について判断する手続を構築する必要性,
第三に,モーターボート競走法や建築基準法など国の法律と条例とが抵触しないか,検討する必要性など
設問1
用語に関する基本的な誤解
①行政処分の根拠法令に属する省令の規定をも,行政事件訴訟法第9条第2項にいう「関係法令」の一つに挙げる答案,
②法科大学院が,「文教施設」ないしは学校教育法第1条にいう「大学」に属さないと述べる答案
法令(すなわちモーターボート競走法及び同法施行規則)と通達の違いを考慮せずに,通達について当然に規則と同様に関係法令に該当するとして論じる答案
通達が法や規則の合理的な解釈を前提として発出されているものである限り,根拠法令の解釈の参考となることは当然であるにもかかわらず,「法令」ではないから一切考慮しないとする答案が比較的多く見られた
設問2(1)
訴えの候補例を二つ挙げての比較を求められた場合において,一つは合理的な例でも,もう一方に解答者自身も直ちに消極評価するような例を持ち出して,当然に前者を良しとするのは,一般的に言って適切ではない。
設問2(2)
自治会の同意について申請時の許可要件とすることができるかという観点からの検討自体が全くなされていない
取消措置が他事考慮だから違法とするだけで,国土交通大臣がいかなる措置を執り得るのかについて検討されていない
省令の基準以外の理由で許可を拒否することができるかという問題と,職権取消の可否,行政指導の限界という三つの問題の相互関係
許可不許可の裁量を認める根拠がどこにあるのか,その限界についてどう考えるのか
周辺自治会等の同意を求める行政手法について検討した答案は少数
申請に係る許可を拒否する処分が行政手続法上の「不利益処分」に当たるとの前提に立つ答案が見られた(同法第2条第4号ロ参照)
設問3
自主条例(独自条例)と委任条例との相違を十分に理解できていない
「法律は許可をしない行政裁量を認めている」,
「通達は直接には外部に対し拘束力をもたない」,
「行政指導には限界がある」といった諸命題を,どの程度まで適切に関係付けて論じることができているか
通達には外部に対する拘束力がないので,行政庁が通達に従うように求めるには行政指導しかできないところ,行政指導に従わない者に対し不許可処分ないし許可取消処分を行うことは違法である。」と帰結するにとどまる答案は,一応の水準の答案 ※赤字部分の文言がないだけで一応の水準になってしまうのか。
原告適格と通達
場外車券発売施設設置許可処分取消請求事件
採点実感にあるように通達は法令とは違うが、原告適格を考える際に当然考慮される。
また、法分上個々の法律上の利益を保護しているようには読めなくても通達や、添付書類などから法律上の利益があると認められる場合がある。
通達の法的効果は何か,行政手続法上は何に当たるか
通達に法的拘束力はない、というのは誰でも分かるだろう。しかし、行政手続法上は何にあたるかと改めて問われると分からない。
ネットで検索してみても行手法上何にあたるのか明確な回答は見つけられなかったが、実際には通達は行政機関内部だけの話ではなく、民間企業にも発出されることがあるという。
そこで思いついたのは、行政機関内部の通達と、民間に発出される通達とを考えた時、民間に発出される通達はいわゆる行政指導の類にあたるということだろう。出題の趣旨の観点はこういうことを言っているに違いない、そうだそうに違いない。
もっとも、本問では通達自体は行政機関内部のものであり、直接的に民間に向けて通達されているものではない。しかし、結果として民間に地元同意を求めるという言わば行政指導が行われていることになる。
モーターボート競走法第5条2項をみると、
2 国土交通大臣は,前項の許可の申請があつたときは,申請に係る施設の位置,構造及び設備が
国土交通省令で定める基準に適合する場合に限り,その許可をすることができる。
基準に合致したものに限り許可する事ができるとなっており、許可しなければいけないわけではなく、この点裁量があるように読める。
基準に合致しないものについては許可することができないのは勿論だが、基準に合致しても必ずしも許可の必要はないことになる。従って、許可の基準にさらに上乗せして条件などを付加することも可能ではないのか?
個人的には納得いかない結論となってしまうのだが(笑)
ある意味、付款的なものとも言えるのではないか。 行政行為の附款 要綱と付款と通達と裁量と
やはり参考答案を見よう。
概ね同じような事が書いてあった。
許可の裁量を認めるとしてもその限界についてどう考えるか?と採点実感にはある。
答案練習
こちらにない。
いずれにしろ設問2の訴訟選択は実質的当事者訴訟であることが分かった。
しかし、「合意書の再提出義務の不存在確認」と「本件施設を設置することができる地位にあることを確認」するものに分かれている。
取り消し処分と職権取消
本問は一度出した許可を取り消そうとしているが、いわゆる取り消し処分とは違う。
取消措置の理由が地元の同意が元々なかったという許可基準(基準と言えるかは問題だが)を充足していなかったからである。
本問の場合は職権取消にあたるだろう。「職権取消しの必要条件は、原処分に違法または不当(以下「違法等」という)の瑕疵があることであり 」 職権取消の可否
許可処分に違法性があるかどうかが問題だが、少なくとも一般的な取り消し処分ではない。
採点実感に「省令の基準以外の理由で許可を拒否することができるかという問題と,職権取消の可否,行政指導の限界という三つの問題の相互関係」とある。
本問は「受益的処分の職権取消し」にあたるらしい。法的安定性を考慮してもなお取り消すべき特別の公益上の理由がある場合だけ、取消しできるとするのが通説参考答案①
実質的当事者訴訟は要するに民事訴訟であって、行訴法などに規定されていない穴を埋めるもの
ここでハタと気付く。職権取消そのものが違法とされれば取消措置が認められないから、取消措置を取り消す(本問の場合は取消措置を受けるおそれを除去するための訴えなので差止めになるが)訴えで問題ないはずである。
また、出題の趣旨を改めてみて気づく。取消措置と要求措置で別の訴訟形態なんだと。そもそも要求措置自体をやめさせるということを想定していなかったのだが(笑)
確かに、そう考えると要求措置そのものに対する取消だとか差止訴訟は訴訟形態としておかしい事に気付く。だから実質的当事者訴訟がでてくるのだと。