平成24 民訴 採点の実感 

出題の趣旨

XがXC間での保証契約の締結という第2の請求原因を追加することを検討しているという事案を基に,書証による証明(設問1・小問(1)),当事者からの主張の要否(同・小問(2)),訴訟告知の効力(設問2)及び同時審判申出共同訴訟の機能(設問3)について論じること

〔設問1〕の小問(1)
連帯保証債務の履行を求める訴えである訴訟1
書証である本件連帯保証契約書,特に同契約書中にBの印章による印影が顕出されていることが持つ意味を説明することを求める問題
本件連帯保証契約書の連帯保証人欄の作成者とされるのが誰であるのかと関連付け
処分証書や二段の推定の意義及び訴訟上の機能を明確にして論じる

『本件連帯保証契約書は,当初の請求原因②の事実(XB間における連帯保証契約の締結)の存在を直接証明するための証
拠となるが,第2の請求原因③の事実(BのCに対する代理権授与)を直接的に証明する証拠となることはない。』

『XB間における連帯保証契約の締結』という要証事実を立証する場合
本件連帯保証契約書の連帯保証人欄には連帯保証をする旨のBの意思が表現されていることになる
その成立の真正が認められれば,直ちに『XB間における連帯保証契約の締結』の事実が証明されることになる
文書の成立の真正を認定する際には,いわゆる二段の推定が働く
二段の推定の意味内容も含めて丁寧に説明していけば,処分証書や二段
の推定の意義や訴訟上の機能を正確に理解し表現するという課題に応えたことになり,また,二段の推定の意味内容を説明すれば,その中でBを作成者と見る趣旨との関連がおのずから明確にされることになる

『BのCに対する代理権授与』という要証事実を立証する場合
本件連帯保証契約書の連帯保証人欄の作成者をCと見る前提に立つ以上
BのCに対する代理権授与の意思が表現されていることはなく,本件連帯保証契約書が『BのCに対する代理権授与』の事実を直接的に証明する証拠となることもない
Bの印章による印影が顕出されていることをもって,『BのCに対する代理権授与』という要証事実との関係で間接証拠となることを論じることは考えられるが,その場合には,それがどのような意味で間接証拠になり得るのか丁寧に説明する必要がある

〔設問1〕の小問(2)
司法修習生Pの見解を批判的に検討することを求める問題
この見解は,最判昭和33年7月8日民集12巻11号1740頁〔百選第4版・47〕の説示する内容に沿うもの
裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の資料としてはならないという弁論主義の命題題が主要事実について働くものであることや,代理権の発生原因事実等は主要事実であることを確認しつつ,論じること
〔設問2〕
(訴訟2)において原告Bが,請求原因として主張した,①Cの顕名及び法律行為,②Cの無権代理の各事実をCが否認することの可否を検討することを求める問題
訴訟1においてBがした訴訟告知に基づく判決の効力を受けることを回避するための理論構成を被告Cの立場から検討すること
訴訟告知に基づく判決効によってCが①②の事実を争えなくなるという帰結に至る可能性を示した上で
被告知者であるCが受けることとなる効力の性質,効力を制限するための論拠と本件事案への当てはめといったことを明確に論じること
訴訟告知を専ら告知者の利益保護のための制度であり,第三者に判決効を及ぼすための手段であると見る考え方もある
被告知者Cに対する効力が全く制限されないという結論を採りつつ説得力のある論述をすることは容易でない
仙台高判昭和55年1月28日高裁民集33巻1号1頁〔百選第2版・111〕,最判平成14年1月22日集民205号93頁〔百選第4版・105〕参照

参加的効力を制限する論拠としては,大きくとらえれば,
被告知者と告知者との利害対立の可能性に着目することと,
参加的効力の及ぶ客観的範囲に着目すること
の二つが考えられる

前者の観点から
参加的効力の趣旨は,補助参加人と被参加人との間で被参加人敗訴の責任の分担を図ることにある以上,被告知者が参加的効力を受ける場合とは,被告知者が告知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害の一致があり,そうすることを期待できる立場にあるときに限られる
BC間にそのような利害の一致はない こ と からすれば,①②の事実ともにCには参加的効力が及ばない

後者の観点から
参加的効力が及ぶ客観的範囲は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断のほか,
その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶが,
判決理由中の判断については,いわゆる傍論が拘束力を持つ理由は乏しく,判決主文中の判断を導き出すために必要かつ十分なものに限られる
訴訟1においてB敗訴の判決で表見代理の成立が認定されているものの,そのためにCの無権代理の判断が必要であるわけではないこのような論拠からは,参加的効力の客観的範囲に含まれるのは①の事実(Cの顕名及び法律行為)だけであり,②の事実(Cの無権代理)はこれに含まれない

〔設問3〕
同時審判申出共同訴訟はに実体
法上併存し得ない請求について,実体法上あり得ないはずの両負けを避けるために設けられたものであり,弁論及び裁判の分離が禁止され(民事訴訟法第41条第1項),同一手続で審理及び判決がされることによって事実上裁判の統一が図られることが期待できる

同時審判共同訴訟の性質はあくまでも通常共同訴訟であり,共同訴訟人独立の原則が妥当する(同法第39条)

共同被告の一方の上訴又は一方に対する上訴の提起があっても,その余の部分は確定してしまい,移審もしないと解されている上訴のあった当事者間の請求についてしか確定遮断と移審の効果が生じず,上訴審の審判対象となるのもその範囲のみである
ことから,移審する部分と移審しない部分とで審
判の統一が図られない可能性があり,①Cのみが控訴した場合には,控訴審での両負けがあり得る。これに対し,②双方が控訴した場合には,弁論及び裁判の併合が要求され(同法第41条第3項),第一審段階と同様に事実上裁判の統一が図られることが期待できる

採点の実感

設問1(1)
書証とは,文書に記載されている作成者の意思や認識を裁判所が閲読して,その意味内容を係争事実の認定のための資料とする証拠調べをいう
文書は,公文書と私文書,処分証書と報告文書といった幾つかの観点から分類することができる
処分証書とは,証明しようとする法律行為が記載されている文書
それ以外の作成者の経験を記載したり意見を述べたりした文書を報告文書という

書証は文書の作成者の意思や認識などの意味内容を証拠資料に用いる証拠調べであるから,
まず,挙証者が作成者であると主張する特定人(作成名義人)によってその文書が実際に作成されたということを確かめる必要があり,この点が肯定されることを文書が真正に成立したといい
文書の形式的証拠力が備わる
以上の事柄は,司法試験の受験者であれば正しく理解し,習得していなければならない基礎的知識である
「作成者」,「間接証拠」と「間接事実」,「認定」と「推認」等の概念について理解が怪しいと思われる答案が目立った

二段の推定とは,私文書を客体とする書証につき成立の真正を認定する場面において立証を簡便にするための法理である

「処分証書」の意義に言及していない答案や「処分証書」という用語への言及すらない答案が相当数存在した

設問1(2)
この問題で求められているのは,
『裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の基礎とすることができない』
という弁論主義の主張責任に関する原則は,主要事実について適用されるところ,
主要事実とは,法律関係の発生等に直接必要なものとして法律が定める要件に該当する具体的事実であり,
代理との関係でいえば,授権及び顕名は,民法第99条によれば,本人BではなくCが締結した保証契約上の権利義務がBに帰属するために直接必要な事実であるから,先の定義上,主要事実に当たり,そうすると,効果が同じであるから主張がなくとも代理に関する事実を判決の基礎にすることができるという判例の考え方はこれと相容れない
という論証である。

①主張責任の原則は,法律関係の発生等に直接必要な主要事実に適用される
②代理の要件事実は,代理人による契約締結,顕名及び授権である
③したがって,Pの見解は弁論主義に反するとするのみで,①と②が論理的に結び付いていない答案が多く見られた
②の部分は,代理の要件事実を丸暗記して再現しただけで,なぜそれが主要事実なのかを自分の頭の中で整理した上で答案を構成しているとは評価し難く,むしろ,知識が血や肉となって身に付いていない

弁論主義の主張責任の原則が主要事実に適用されることと代理権の授与が主要事実であることの具体的な検討を欠いた答案は非常に多かった
代理権授与の事実は間接事実に過ぎないが,不意打ち防止の観点から当事者の主張が必要であるとの答案もわずかながら存在した。いずれも,法曹を目指す者の答案としては評価できない

設問2
前訴においてXが勝訴した理由は表見代理
表見代理の要件事実は,民法第110条によれば,
CがBのためにすることを明らかにして契約を締結したこと,
基本代理権の存在,
Xが代理権ありと信じたこと及びそのように信じたことについての正当な理由
BのCに対する授権の『不存在』は表見代理の要件事実ではない
この知識さえあれば,
参加的効力が判決理由中の判断にも生ずるとしても,要件事実でないものについては,たとえ判決理由中で判断が示さ
れていたとしても,それは傍論であって,主文を導き出すために必要な理由ではなく,
ひいては,判決理由中で判断が示されることを被告知者において当然に予測すべきものでもないことからすれば,
授権がなかったことについて参加的効力は生じないという答案が書けてよいはずである

参加的効力の趣旨が敗訴責任の分担にあり,理由中の判断にも及ぶという論述は,ほぼ全ての答案においてされていたものの設問の事例において参加的効力が及ぶこととなる理由中の判断とは何であるかについて具体的に思考できていることが表現されていなければ,優秀な答案とは評価できない

要件事実は要件事実,参加的効力は参加的効力といった形で,各論点を相互に無関係な断片として習得する段階にとどまっているのではないかと思われる

論述の順序についていえば,関係条文を形式的に当てはめた場合の帰結が妥当性に欠けることを示した上,制度趣旨等に遡って解釈をし,妥当な結論を導いていくという手順を踏んでほしい

訴訟告知を受けたのに手続に参加しない以上は参加的効力を受けてもやむを得ないという価値判断に基づいて,Cの利益に沿わない結論を述べている答案がことのほか多いことには驚いた

設問3
客観的併合における上訴不可分の原則主観的併合における共同訴訟人独立の原則の上訴への適用について,言葉は知っていても,その内容が正しく理解できていない
同時審判申出共同訴訟は,共同訴訟人独立の原則が適用される通常共同訴訟であると一般論として論じておきながら,
Cのみが控訴した場合に控訴審でXの「両負け」が生じ得る原因を不利益変更禁止の原則に求めたり「両負け」を避けるためにXは附帯控訴をする必要があると論じたりする答案が見られる
客観的併合では,併合審判された判決の一つに対し適法な控訴があると,全体について確定遮断及び移審の効力(そもそも控訴提起の効力が確定遮断と移審であることを踏まえている答案は1割にも満たない。)が生じるのに対し
主観的併合では,共同訴訟人独立の原則により,Cの控訴による確定遮断及び移審の効力は,XのBに対する請求棄却の部分には及ばず,この部分はXが控訴しないことにより確定する。移審せずに確定している原判決に対し,附帯控訴による不服の定立や,控訴裁判所による変更を論じる余地はない

同時審判申出共同訴訟がそもそもどういうものであるかをきちんと書いてある答案は少なく,特にそれが実体法上あり得ないような両負けを避けるためのものであることを的確に述べている答案は更に少なかった

問題

参考答案

前提事実

訴訟1
Xは、Aの連帯保証人であるBを、連帯保証債務を履行せよと訴えた
Bは保証契約を否定
Xは書証として、連帯保証人欄にBの記名及び印影のある金銭消費貸借契約書兼連帯保証契約書を提出
Bは印章を娘婿Cに預けており押印の経緯は分からないと主張

弁護士Lと修習生Pの会話
連帯保証契約書作成の経緯
「主債務者AがCとともにX方を訪れた上,連帯保証人欄にあらかじめBの記名がされ,Bの押印のみがない状態の契約書を一旦持ち帰り,後日,AとCがBの押印のある本件連帯保証契約書を持参した」
Cを代理人とした構成
代理人が契約したとしているのではなく、保証契約書を代理人Cが本人に代わって作成。
文書に現れているのは代理人の意思であると考え、保証契約書の作成者は代理人Cと考える
第二の請求原因を追加
代理人Cが署名代理の方式で、Bのために保証契約を締結した旨の主張と追加
敗訴したときはCを無権代理人として訴えることを想定して訴訟告知をする
これに対しては追加するまでは不要ではないか(契約の締結は代理人であろうが本人であろうが関係ない)

当初の請求原因(請求を基礎付ける事実)
①XA間における貸金返還債務の発生原因事実,
②XB間における保証契約の締結,
③②の保証契約が書面によること及び
④①の貸金返還債務の弁済期の到来であり

第2の請求原因(請求を基礎付ける事実)
①XA間における貸金返還債務の発生原因事実,
②代理人Cが本人Bのためにすることを示してXとの間で保証契約を締結したこと(顕名及び法律行為),
③②の保証契約の締結に先立って,BがCに対し,同契約の締結についての代理権を授与したこと(代理権の発生原因事実),
④②の保証契約が書面によること及び
⑤①の貸金返還債務の弁済期の到来

設問1

設問1 小問⑴ 二段の推定と要証事実

当初の請求原因の②XB間における保証契約の締結
第二の請求原因の③BがCに対し,同契約の締結についての代理権を授与したこと
を立証する場合
連帯保証契約書が持つ意味
契約書のBの印影が持つ意味

出題の趣旨にほぼほぼ答えが書いてある

採点の実感にあるように、処分証書について完全に忘却(笑)
また、処分証書の定義だけ覚えても意味がないことも分かる。
出題の趣旨にもあるように、処分証書の場合「真正に成立したと認められると、その内容である意思表示又は陳述(法律行為)がなされたものと認められる。作成者がそのような法律行為をしたことが直接に証明されたことになり、この点について相手方が反証を挙げる余地はない。」民事訴訟法講義案P212
よくよく考えると恐ろしい話である(笑)
「処分証書から認められる法律行為の意思表示に瑕疵があることやその効果が消滅したことを主張立証することは当然にできる。」同上P213とあるが、法律行為はあったという前提でその形成過程に意思表示があったなどと主張するしかないとも言える。
例えば本問で言えば印章が勝手に使われたという抗弁?は意味がなく、脅迫されて保証契約を締結した、などと主張するしかないということか?
この問題は二段の推定にも通ずる問題である。改めて二段の推定を振り返ろう。
文書の成立、二段の推定を民法の話だと思っていた短答落ち常連

設問1 小問⑵ 代理と弁論主義

第二請求原因を追加しない場合
裁判所はCがBの代理人として保証契約を締結したと認定して判決の基礎とできるか

紹介判例
参考答案
 昭和33年7月8日
「民訴一八六条にいう「事項」とは訴訟物の意味に解すべきであるから、本件につき原審が当事者の申立てざる事項に基いて判決をした所論の違法はない。なお、斡旋料支払の特約が当事者本人によつてなされたか、代理人によつてなされたかは、その法律効果に変りはないのであるから、原判決が被上告人と上告人代理人Dとの間に本件契約がなされた旨判示したからといつて弁論主義に反するところはなく」
換言すると代理人による契約締結というのは申し立て事項の範囲内。
申し立て事項というのは訴訟物をいう。最判昭33.5.10民集11.5.715、最判昭33.7.8民集12.11.1740基本法コンメンタール民事訴訟法2P270
訴訟物との関連から言えば確かに代理権の授与や顕名を主張立証しなくてもいいのかもしれない。
この判例をそのまま踏襲したような論証をしてしまうと評価を下げるのかもしれない。
出題の趣旨にはっきりと「司法修習生Pの見解を批判的に検討することを求める問題」とあるからである。
これはいわゆる隠された題意とでも言うべきものだが、これはいささかやり過ぎの感を否めない。
司法試験論文あるあるの判例を鵜呑みにせず批判的に読めというやづだろう。言わんとすることは分かるものの、学者ではないので深い考察をしている暇はない。
題意というのは結局のところ試験委員の問いたいことであり、試験委員の問題意識と言ってもいいかもしれない。人によって問題意識は違う場合もありえる。それが論理的整合性を持って論じられれば一応の水準は貰えるかもしれない。
しかし、仮に題意に答える事が必須となれば的外れな論証だと評価されかねない。その題意とやらがいかに独善的なものであろうとも。
本問も批判的に論ずる事を求めているが、批判的に論ずることを求めていない場合だってあるはずである。こういうのは問題文に明示するなり、なんらかの誘導、ヒントがあって然るべきだろう。
 (笑)
Pの見解の問題点を述べろということであれば答えは簡単だろう。
とは言え、この判例は事案が細かく書かれていないのでよく分からないが代理権授与、顕名の主張がなくても代理人による契約を認定したということなのだろう。
とりあえず保留。

設問2 訴訟告知

前提事実
第2の請求原因として,被告Bではなくその代理人Cが署名代理の方式によりBのために保証契約を締結した旨の主張を追加
B代理権授与を否認 顕名及び法律行為は知らない
第3の請求原因としてXは,Cには保証契約を締結することについての代理権があるものと信じ,そのように信じたことについて正当な理由があるから,民法第110条の表見代理が成立する旨の主張を追加
Bは,表見代理の成立の要件となる事実のうち,基本代理権の授与として主張されている事実は認め,その余の事実を否認
Xは,Cに対し,訴訟告知をし,その後,BもCに対して訴訟告知をした
X及びBのいずれの側にも参加しなかった
XのBに対する請求を認容する判決確定
BはCを不法行為で提訴※訴訟2

①CがBのためにすることを示してXとの間で保証契約を締結したこと
②①の保証契約の締結に先立って,Cが同契約の締結についての代理権をBから授与されたことはなかったこと
Cは,Bが訴訟2で主張した①又は②の各事実を否認することができるか

問題文には「できるか」とあるが、出題の趣旨には「Bがした訴訟告知に基づく判決の効力を受けることを回避するための理論構成を被告Cの立場から検討すること」とあるのでできるかできないかの論証だと評価はのびないようだ。

①②の主張を否認できないということは訴訟告知の効力が及んでいるということになるだろう。
そもそも訴訟告知の敗訴責任はどの範囲なのか?というのを知らない(笑)
しかし、採点の実感によればそれがどうであれなんとかなるようだ。
確かに仮に判決理由にまで訴訟告知の効力が及んだとしても、①は表見代理の成立に関係がないので否認できる。
これらの点についても出題の趣旨にほぼほぼ書いてある。

訴訟告知の効力はどの部分について後訴に及ぶのか

紹介判例最判平成14年1月22日集民205号93頁の中の引用判例が(最高裁昭和45年(オ)第166号同年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1583頁参照),

【要旨】この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは,
判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などをいうものであって,これに当たらない事実又は論点について示された認定や法律判断を含むものではないと解される。
けだし,ここでいう判決の理由とは,判決の主文に掲げる結論を導き出した判断過程を明らかにする部分をいい,これは主要事実に係る認定と法律判断などをもって必要にして十分なものと解されるからである。そして,その他,旧民訴法70条所定の効力が,判決の結論に影響のない傍論において示された事実の認定や法律判断に及ぶものと解すべき理由はない

告知者敗訴後、告知の基礎となった実体関係に基づく被告知者との後訴において告知者が前訴判決を援用することにより、前訴判決の論理的前提となった事実関係、法律関係に対する判断に反する主張を被告知者は出来なくなる。基本法コンメンタール民事訴訟法1P150

ここでふと疑問に思う。
そもそも訴訟告知の制度は結局敗訴責任を分担させるような告知者と被告知者の法律的、実体的な関係性がある事が前提となっているとも言える。訴訟に参加するのは要するに被参加者を勝たせるためと言っても過言ではない。※告知者が負けたたら敗訴責任を分担することになる
本問ではBとCの関係性はこのような関係性にはないからそもそも訴訟告知自体認められない(参加的効力が生じない)のではないかという疑問が湧く。この点については出題の趣旨でも述べられているが、それはそういう考え方という書き方になっている。
もっとも前訴においてBが勝てば確かに自分への火の粉は振り払えるから参加の利益、利害関係はあると言える。

他方、出題の趣旨では参加的効力の客観的な範囲から考えると
①はこれに含まれるが、②は含まれない
としている。②の主張は要するに代理権を授与していないという主張であるが、これにひっかかっていた。
表見代理は基本代理権があって、その権限外の行為をした場合の話である。
本問では基本代理権の事実を認めているのでそもそもこの主張がおかしいのではないか。
しかし、問題文を再確認すると、「Xは,Cには保証契約を締結することについての代理権があるものと信じ,そのように信じたことについて正当な理由があるから,民法第110条の表見代理が成立する旨の主張を追加した。Bは,表見代理の成立の要件となる事実のうち,基本代理権の授与として主張されている事実は認め」
基本代理権はなかったんですね(笑)

(訴訟告知)
第五十三条 当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2 訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3 訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4 訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。

(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条 補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一 前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二 前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三 被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四 被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

設問3 同時審判申出共同訴訟

前提事実
両負け防止のために
Bに対しては有権代理を前提として保証債務の履行を求め,
Cに対しては民法第117条に基づく責任を追及する請求をし,
同時審判の申出をした。
第一審においては,Cに対する代理権授与が認められないという理由で,Bに対する請求を棄却し,Cに対する請求を認容する判決がされた
①Cのみが控訴し,Xは控訴しなかった場合
②C及びXが控訴した場合
を比較し,控訴審における審判の範囲との関係で論じなさい

客観的併合136と同時審判申出共同訴訟41
客観的併合は1人の被告に対する複数の請求を併合
同時審判は複数の被告に対する併存しえない請求を同時に審判する通常共同訴訟

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