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平成18年〔第12問〕(配点:3)
AがBに対してA所有の甲土地を売る契約を結び,Bが登記名義人となったが,Bの債務不履行を理由にAがこの売買契約を解除した。一方,BはCに甲土地を転売した。債務不履行を理由とする解除により契約が遡及的に消滅するとする考え方を直接効果説,将来に向かって失効するにすぎないとする考え方を間接効果説と呼ぶとして,次のアからオまでの記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか (解答欄は ) 。 ,[№14]
ア. 直接効果説によると,Cが解除前に登場した場合,民法第545条第1項ただし書によって解除の遡及効が制限される結果,Cは登記名義を得れば保護される。
イ. 直接効果説によると,Cが解除後に登場した場合,AとCは対抗関係に立つから,Cは登記をしなければAに対抗することができず,Bに登記名義が残っていれば,Aが優先する。
ウ. AがBとの契約を債務不履行による解除ではなく合意解除した場合 どちらの説に立っても , ,Aは,登記名義を得なければ,甲土地の所有権の復帰をCに対抗することができず,この結論は,Cの登場時期が解除の前後のいずれであっても同じである。
エ. 間接効果説によると,解除の前後を問わず,AとCは対抗関係に立ち,民法第545条第1項ただし書は注意規定としての意味しかない。
オ. 解除前に登場し登記をしたCが,Bとの間の売買契約締結時にBの債務不履行を知っていた場合,間接効果説では,原則としてCが優先するが,直接効果説では,逆にAが優先する。
1. ア イ 2. ア ウ 3. イ オ 4. ウ エ 5. エ オ
(参照条文)民法
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復さ
せる義務を負う。ただし,第三者の権利を害することはできない。
2,3 (略)
https://www.moj.go.jp/content/000006530.pdf
正答3 https://www.moj.go.jp/content/000006518.pdf
2を選択・・・(笑)
ア. 直接効果説によると,Cが解除前に登場した場合,民法第545条第1項ただし書によって解除の遡及効が制限される結果,Cは登記名義を得れば保護される。
なぜこの肢を×としたのか?
今、解いた問題の事がよく分からないときた(笑) 所有権が復帰するから対抗要件だったけ?結局うろ覚えだった。。
とりあえず旧法で整理をしよう。
そもそも第三者に該当する者と該当しない者がいる。https://www.mc-law.jp/fudousan/26148/
第三者ではない者=但し書きによっても保護されない者
契約上の債権の譲受人
契約上の債権の差押債権者
契約上の債権の転付債権者
第三者契約の受益者
借地契約解除と建物の抵当権者
基本的に債権そのものが対象となっている場合は545条1項但し書きの範疇ではないようだ。
直接効果説と間接効果説
4.解除と第三者の関係
(1) 1項ただし書の「第三者」とは、解除前に新たに独立の権利を取得した者をいう。善意であることは不要だが、第三者が保護されるためには対抗要件(権利保護要件)を具備していなければならない(大判大10.5.17、最判昭33.6.14)。
(2) 解除後の第三者については、対抗要件の具備によって処理される(最判昭35.11.29)。民法債権 第545条【解除の効果】
直接効果説は所有権が復帰し、間接効果説は所有権は復帰しない
解除前の第三者と原所有者との関係
直接効果説 対抗関係ではないが、第三者が保護されるためには登記が必要
間接効果説 対抗関係
解除後の第三者と原所有者との関係
直接効果説 対抗関係
間接効果説 対抗関係
なぜそのようになるのか
直接効果説 解除すると所有権が原所有者に復帰する
間接効果説 解除しても所有権は復帰しない
間接効果説だと解除の意味が半減するのでは?
間接効果説は解除というものを履行拒絶の抗弁権と原状回復義務を生じさせる事と捉えている
本来契約を解除すると損害賠償請求できないのではないか?
旧545③また、新545④では解除権の行使は損害賠償請求を妨げないと規定しているので解除しても損害賠償は請求できるが、問題の本質はなぜあえてこの規定がおかれているのかという点であり、そもそも解除してしまえば契約そのものがなくなってしまうのだからそれに基づく損害賠償自体どうなるの?という問題意識からわざわざおかれているのだろう。
従って、その観点から言えばこれは直接効果説に依拠した規定と言ってもいいはずで、間接効果説から言えば元の契約をベースとしたうえでの理論構成なので損害賠償請求権は問題なくあることになる。
しかし、間接効果説では契約自体がどうなるのかはよく分からない。解除しても契約自体が残るという前提であれば敢えて解除とは言わずに履行拒絶権の行使、それに伴う原状回復義務の発生などと条文に記載すればよい。
改正545は基本的に変わりないようだ。
(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
直接効果説の権利保護要件とは
545条1項但し書きは判例は直接効果説と言われている。
解除すると要するに契約したこと自体がなくなってしまうが、そうすると当該契約を基礎として新たになんらかの権利関係を取得した第三者を害することになるかもしれないから保護しよう。
ということだが、土地の場合は登記しとかないと保護されない。この結論はもう耳にタコである。が、注意深く判例をみると判例はこの登記を対抗要件としている。が、一般的には権利保護要件と言われている。
ここで腑に落ちる。これが混乱のもとだったのだ。
対抗要件と権利保護要件だとなにが違ってくるのか
権利保護要件としての対抗要件なのか、177条に言う対抗要件なのか?日本語として対抗できるとかできないとか言う場合と民法でいう対抗とは意味合いが違うが、もしかすると判例は単純な日本語のニュアンスとして対抗を使っているのではないか?いや、下手すると判例の意図とは別に、権利保護要件とか言われている真意は「判例が言う対抗は177条の対抗という意味ではない」という事を言っているのかもしれない。
もうこうなると収拾がつかない。
何が真実で何がウソなのか。基本書に書いてあることが正しいとは限らない。
こういう論点で短答問題を出されて、対抗というワードが使われると結構ひっかけることができるだろう(ここに獲物が一匹いますが)。
解除後の第三者と登記(民法545条)(最高裁昭和35年11月29日判決)
そこで肢アをみると、対抗というワードを使っていない、司法試験委員会はさすがである。
権利保護資格要件と対抗要件
※追記
要するに解除権者=前主 第三者=後主 という関係だとすると(解除前に取引に入った) 権利資格保護要件 としての登記が必要となり
そうでないと考えると対抗要件としての登記が必要
だという(笑)
元の所有者に登記は必要なのか
対抗要件だとすると、元の所有者も登記が必要となる。しかし権利保護要件だとすると、元の所有者に登記が無くても第三者にも登記がなければ第三者は少なくとも元の所有者に対して所有権を主張できないことになるが。
この点、試験的にどういう判断をしているのだろうか。もう少し他の年度の問題も分析してみよう。
合意解除の場合
平成19年〔第11問〕(配点:2)
不動産物権変動に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものはどれか (解答欄は ) 。 ,[№12]
1. AからB,BからCへ土地が順次売却された後,AB間の売買契約が合意解除された場合,Cは,所有権移転登記を経由していなくても,その所有権の取得をAに対し主張することができる。
2. Aは,Bの詐欺により,その所有する土地をBに売り渡し,所有権移転登記をした場合,Aが売買契約を取り消す意思表示をした後,BがこれをCに転売し登記を経由したとしても,Cは,Aに対し,所有権の取得を対抗することができい。
3. AがBの所有する未登記建物を買い受け,その後その建物についてB名義の所有権保存登記がなされた後,BがCにこれを売却しその旨の登記をした場合,Aは,Cに対しその所有権を取得したことを対抗することができない。
4. Aがその所有する建物をBに賃貸し,Bに引き渡した後,AがCに建物を売り渡した場合,Cがその所有権移転登記を経由しなくとも,Bは,Cからの賃料の支払請求を拒むことができない。
5. A,B及びCが土地を共有している場合,Aからその持分を譲り受けたDは,その持分の取得につき登記を経由しないでB及びCに対抗することができる。
https://www.moj.go.jp/content/000006372.pdf
正答は3 https://www.moj.go.jp/content/000006393.pdf
債務不履行解除であれ合意解除であれ登記は必要※判例によればということなので直接効果説の帰結
平成21年〔第11問〕(配点:3)
不動産の物権変動に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし正しいものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№13])
ア.AとBを共同相続人とする相続において,Aは相続財産に属する甲不動産を遺産分割協議により取得したが,当該遺産分割後その旨の登記をする前に,Bの債権者Cの代位によって法定相続分に従った相続の登記がされ,CがBの法定相続分に係る持分に対し仮差押えをし,その旨の登記がされた。この場合,Aは,Cに対し法定相続分を超える権利の取得を対抗することができない。
イ.AがBの詐欺によりBに対し甲不動産を売り渡し,甲不動産の所有権移転登記がされた。その後,AはBの詐欺を理由に当該売買契約を取り消したが,Bはその取消し後に甲不動産をCに売り渡し,その所有権移転登記がされた。この場合,Aは,登記をしなくてもCに対し,所有権の復帰を対抗することができる。
ウ.AがBに甲不動産を売り渡した後,Bの債務不履行を理由に当該売買契約を解除して甲不動産の所有権がAに復帰した場合,Aは,その旨の登記をしなければ,当該解除後にBから甲不動産を取得したCに対し,所有権の復帰を対抗することができない。
エ.Aは時効により甲不動産の所有権を取得したが,時効完成前に,旧所有者BがCに対し甲不動産を売り渡し,その所有権移転登記がされた。この場合,Aは,Cに対し所有権の取得を対抗することができる。
オ.Aは被相続人Bの相続について相続放棄をしたが,相続財産である未登記の甲不動産について,Aの債権者Cが代位によって法定相続分に従って所有権保存登記をした上,Aの持分に対する仮差押えをし,その旨の登記がされた。この場合,Aによる相続放棄は,Cに対して効力を生じない。
1.ア イ ウ 2.ア イ オ 3.ア ウ エ 4.イ エ オ 5.ウ エ オ
https://www.moj.go.jp/content/000006452.pdf
正答は3https://www.moj.go.jp/content/000006476.pdf
自信をもって肢ウを×としたが、よく読むと解除後の第三者だった。。。さすが短答落ち常連である(笑)
解除と第三者は、物権変動の一つとも捉えられるが、単なる物権変動と解除と第三者の問題が混在しているので注意が必要。
譲渡担保と登記
平成21年〔第16問〕(配点:2)
Aは,その所有する不動産を目的として,Aの債権者であるBのために譲渡担保権を設定し,所有権移転登記をした。この事例に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(解答欄は,[№18])
ア.Aが弁済期に債務を弁済しないため,Bが目的不動産を第三者に譲渡し所有権移転登記がされた場合,譲受人がいわゆる背信的悪意者であるときは,Aは残債務を弁済して目的不動産を受け戻し,譲受人に対し,所有権の回復を主張することができる。
イ.Aが弁済期に債務を弁済し,譲渡担保権が消滅した後に,Bが目的不動産を第三者に譲渡した場合,譲受人がいわゆる背信的悪意者でない限り,Aは,登記をしなければ不動産の所有権を譲受人に対抗することができない。
ウ.譲渡担保が帰属清算型の場合は,清算金の有無及びその額は,BがAに対し,清算金の支払若しくはその提供をし時,又は目的不動産の適正評価額が債務額を上回らない旨を通知した時を基準として確定される。
エ.Bが,譲渡担保権の実行として,Aに対し目的不動産の引渡しを求める訴えを提起したのに対し,Aが清算金の支払と引換えにその履行をすべき旨を主張したときは,特段の事情のある場合を除き,Bの請求は,Aへの清算金の支払と引換えにのみ認容される。
オ.目的不動産が,Aが第三者から賃借する土地上の建物であり,Bが当該建物の引渡しを受けて現実に使用収益をする場合であっても,いまだ譲渡担保権が実行されておらず,Aによる受戻権の行使が可能な状態にあれば,敷地について賃借権の譲渡又は転貸は生じていないから,土地賃貸人は,賃借権の無断譲渡又は無断転貸を理由として土地賃貸借契約の解除をすることができない。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
https://www.moj.go.jp/content/000006452.pdf
正答は2 https://www.moj.go.jp/content/000006476.pdf
単純な解除と第三者ではないが、結局解除と第三者の問題は物権変動をきちんと理解しておく必要がある。そういう意味でも民法は体系的理解が不可欠なことがわかる。解除の単語でヒットして、内容を一見してまったく分からなかったので念のため記載しておこう。
まず、譲渡担保は一旦登記を債権者へ移転する。
肢のアはちょっといやらしい。背信的悪意者という言葉が使われているので、背信的悪意者なら登記がなくても所有権主張できるよな、となりがち。しかし、既に弁済期を徒過しているのに、背信的悪意者と言う理由で受け戻しが出来てしまうのはどう考えてもおかしな話である。
肢オは注意を要する。
譲渡担保権利者は目的物の所有権を有するがその所有権を債権担保のためにしか行使しえないという義務を負う。(基本法コンメンタール物権第三版P270)
正答では肢オは×になるので、無断譲渡を理由に解除できることになる。
肢オでは権利者が実際に使用収益しているが、そもそも債権担保のためにしか行使しえない。もし何も使用収益していないとしても無断譲渡にあたるという意味なのか?
つまり、何が言いたいかと言うと設定者と権利者間の内部関係では譲渡したという一応の建前だが、外部からみたら完全に譲渡したとみていいということでそれを前提に法律関係をすすめていいのか。
譲渡担保まとめ
譲渡担保の場合は対内的問題と対外的問題にまず切り分けて考える必要があるが、いずれにしても基本的には第三者には譲渡担保の事は関係ない(設定者と取引した場合は即時取得の成否はある)という事が分かれば譲渡担保権の実行云々関係ない事がわかる。
また、前提が所有権移転登記を移したことになっているから転貸ではなく、譲渡とみていい。借地権上の建物は自由に譲渡できると理解していた私は問答無用でアウトだが(笑)
この問題は権利者から第三者への譲渡事案ではなく、言わば対内的にとどまっている。対内的には所有権が設定者に留まっているという説があるが、この点、試験的にはそれを否定しているということで良さそうである。
つづく・・・
A 直接効果説は契約したことがなかったことになる
B 間接効果説は契約したことは前提としてそのまま残る
Aはなかったことになるから 545条により 原状回復義務などが発生する。
B説からは545は注意規定と言われている。
注意規定と言われているのも厳密に考えるとすこし腑に落ちないが、この説からは元の契約に解除した場合は原状回復義務などが含まれているというふうに考えることになりそうだ。