第三者のためにする契約と履行引き受け、更改

更改について改正された点を勉強していて第三者のためにする契約について改めてぼやーーーっと理解している事に気付く。否、ぼやーーーっとしているのだから理解していないわけだが。

更改についての気づき備忘録

債務者が交替する場合と債権者が交替する場合という規定がある。この点についてほとんど思考実験をしたことがなかった。

債権者の交替

債権者が交替する場合って債権譲渡と何が違うのか?要するに債務者までまきこんだ三面契約でなければならない点と、前の債務は消滅してしまうという点にあるだろう。

債務者の交替

債務者が変わる場合はどうなるか。
債権者と新たな債務者の契約によってできる。
前の債務は消滅するから、新たな債務者は更改前の旧債務者に対して求償権もない。

第三者のためにする契約

旧司短答で履行引き受けと第三者の為にする契約の問題があったことが記憶に残っている。勿論おぼろげながらなのでよく理解していないわけだが。
一番の問題点はこういう類の問題を付焼刃の丸暗記的対応をしていたという点にある。つまり、履行引き受けも第三者の為にする契約についても、本質を何も理解していないということである。
①免責的債務引受
②併存的債務引受
③履行引き受け
端的に言えば上の3つで第三者の為にする契約と言えるもの言えないものを答えさせるものである。

第三者のためにする契約の法的構造

一般的には法的性質などと言われるが、敢えて法的構造と呼びたい。
一番のキモは受益者と諾約者の間に契約関係を生じさせる点だろう。
   要約者
家屋移転
  ↙
諾約者 お金支払い →  受益者  基本法コンメンタール債権各論ⅠP47 
受益者が受益の意思表示をすれば諾約者に直接請求できる。

第三者のためにする契約は、要約者が元々受益者に対して何らかの債務を負っている場合に便宜的な制度である。
いわゆる為替に似ているが、受益者が諾約者に対して直接請求できてしまうのがやはり重要である。
また、受益の意思表示後は勝手に要約者は勝手に契約(第三者のためにする契約)を解除できない。

債務の引き受けと第三者のためにする契約

改めて債務の引き受けについてみてみよう。
上の相関図を書き直すと以下のようになる。
 要約者(旧債務者) 

  ↙
諾約者 (新債務者) →  受益者(債権者)

旧法下
①は第三者のためにする契約とは言えない。元の債務者と新債務者の契約で免責的債務引受をなすには債権者の承諾、同意が必要である(あくまで二面契約で成立する)。また、契約が成立すれば債権者は旧債権を失う一面がある。旧債権を失う面を重視して第三者のためにする契約ではないという解釈のようだが、基本法コンメンタール債権各論ⅠP49 この点、負担付でも有効なので私見では契約の成立には債権者の承諾ないし同意が必要である点を重視したい。第三者のためにする契約は要約者と諾約者の間のみで成立し、同意などは不要。受益の意思表示は権利発生要件で一種の形成権と捉える。
※免責的債務引受は新債務者が履行の義務だけ負う。旧債務者は履行義務は負わない。

②は第三者のためにする契約と言える場合がある。併存的債務引受は元の債務者と新債務者の契約でなすことができる。債権者は受益の意思表示をすれば新債務者に対しても直接請求できる。

③は第三者のためにする契約ではない。履行を引き受けた者に対して債権者が直接請求権を持つものではないからである。

これを結論だけ暗記しようとしていたわけであるが、そんな事をしても意味がない。問い方を変えられたり、理由付けや事案をちょっと変えられるだけですぐに馬脚をあらわす。これが短答常連落ちである。

債務者の交替と免責的債務引受、債務者の意思に反してなど改正点

更改における債務者の交替と免責的債務引受は一見すると同じように見えるが、一体どこがどう違うのか。
形式的には更改の場合は以前の債務は消滅、免責的債務引受は債務はそのままだが、旧債務者が新債務者に入れ替わるということだろうが、要はそれが一体どのような法的効果として現れるのかだろう。
そして改正があったためにまた微妙に変わっている点もある。また、債務引受についても条文がつくられている。
ここらへん実はかなり錯綜していて、争いも多いので問題として作りやすいのだろう。マイナー論点ではあるものの過去問などを見ると関連問題も多い。
質が悪いのは、昔の短答問題では判例に照らし、などという前提がないので通説とか判例とか、そういうものをある程度推測して判断を下さねばいけない点である。
業界でそういう風に言われているだけで、実はたいした根拠もなかったりする事が試験問題の回答としては正解だったりするわけだ。こんな事を覚えさせられているのも本当にバカバカしい。
改正になって、そういうおかしな点とか紛らわしい点とか、今まで判例が言っていたことでさえバッサリと切り捨てられてしているのを見て、今までの勉強って一体なんだったのだろうかと呆れてしまう。
逆に言えば、やはりある種の割り切りが必要なのだ。法律の論理なんか100人いれば1万通りくらいあってもおかしくないし、それがある程度の論理的整合性をもっている事もあるはずだ。
従って、なんだかおかしいなと思ってもそれを飲み込んでそういうものだとしなければならないが、更に始末が悪いのが論文ではそれをサラッと飲み込まずに吐き出せときたもんだ。吐き出したはいいが論理的整合性を保てる問題ではないため結局自爆することになりかねない。よって、無難な答案を書くのだ。
試験委員は受験生の質が悪いと嘆くかもしれないが、それが結局は合格の近道だ。みんなが天才、秀才ではない。
もっとも、国家はそういう天才、秀才を集めたいのだろうが、もはや法曹には集まってこない。問題をいくら難しくしたところでそれは本末転倒。

債務引受の改正点

併存的債務引受と免責的債務引受について470条から規定された

〇併存的債務
 連帯債務になる 470①
 債権者と引受人の二面契約で成立 470②
 債務者と引受人の二面契約でも成立。但し、債権者が引受人に承諾したときに効力発生。470③ ※以前は受益の意思表示  と言っていた。承諾、あるいは同意とどういう違いがあるのだろうか?
 債務者と引受人の契約の場合は第三者のためにする契約になる 470④
 債務者の抗弁を主張できるが、債務者の取消権、解除権は援用できず、当該限度で履行を拒める 471①②

〇免責的債務引受
 債権者と引受人の二面契約で成立。債権者が債務者に通知したときに効力発生。 472② ※少なくとも債務者の意思に反してはできないとされていたが、不要になったようである。新債権法の論点と解釈P224 この点、514債務者の交替による更改も債務者の意思に反しては削除されている。かわりに通知要件が追加。
 債務者と引受人が契約し、債権者が引受人に承諾することでも可能。472③ ※承諾は成立要件なのか、効力発生要件なのかは条文からは分からない。そもそも、旧法下では承認、同意が必要がデフォではあるもののそれはそういう解釈論にすぎない。従って、二面契約で成立するものの、少なくとも効力は発生していないと考えたほうがいいと思われる。新債権法の論点と解釈P224では承諾は必須であり有効要件になると書いてある。

短答過去問

司法試験短答式試験過去試験問題 民法 S44-4
甲、乙間の契約により、乙はその建物の諸流権を丙に移転し、代金は甲が支払う事を約束した場合に関する次の記述のうち正しいのはどれか。

肢⑸ 丙は、建物に隠れた瑕疵があったことを知らなかった場合でも、甲がこれを知っていたときは、乙に対して損害賠償の請求をすることができない。

正解 〇
この肢は判例がある。大判大14.7.10民集4.623 しかし、肢を素直に読むと、甲が知らなかったら丙は乙に損害賠償請求ができそうである。
もっとも、第三者は契約の当事者ではない。従って、第三者はみずから解除権や取消権を取得しない。また、法律行為の相手方の善意悪意過失無過失などが問題とされるときにはもっぱら要約者について考えるべき。基本法コンメンタール債権各論ⅠP51
とあるので、いずれにしろ丙は損害賠償の請求自体ができないと考えたほうがよさそうである。そういう意味で紛らわしい問題と言える。
次の問題がさらに混乱を招く。
S47-74
第三者に所有権を取得させることを目的とする売買契約をした場合について、次の記述のうち誤りはどれか。
肢⑵受益の意思表示をした第三者は売り主が債務を履行しない場合は損害賠償の請求ができる。

正解は〇
これは要するに履行請求権を直接もつ、という意味で履行遅滞に伴う損害賠償の請求ができる、という意味だと思われる。
従って、要約者と諾約者間の契約関係に基づく損害賠償を請求できる、という意味ではないだろう、と思う、多分。
そういう意味では紛らわしい。

H16〔No.33〕 Aは,BのCに対する借入金債務につき,これを引き受ける契約を締結した。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち,誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。

ア Aが免責的債務引受をした場合,免責的債務引受では債務が同一性を維持したまま旧債務者から新債務者に移転するから,AはCに対して,引受け当時にBが有していた債務の発生原因たる契約の解除権を行使することができる。

イ 併存的債務引受は債権の担保力を強化するという保証と同じ作用を有するから,Aは,Bの意思に反してもCとの間で併存的債務引受をすることができる。

ウ 債務者の交替による更改が債務者の意思に反してはできないとされているのと同じ理由により,AがCとの間で免責的債務引受をするには,Bの同意が必要である。

エ Aが免責的債務引受をした場合,引受け時までに債務の一部弁済があったことをAがCに主張できるのと同じ理由により,引受け時にBがCに対して相殺適状にある債権を有していれば,Aは,同債権をもって自己に対するCの債権と相殺することができる。

オ Aが併存的債務引受をした場合にAとBの関係が連帯債務になるとの見解に対しては,連帯債務は債務者の一人に生じた事由が他に影響を及ぼす場合が多いことから,債権者の予期に反する不都合を生ずる場合があるとの批判がある。

1.ア イ 2.ア エ 3.イ ウ 4.ウ オ 5.エ オ

ア× イ〇 ウ× エ× オ〇

条文

(更改)

第五百十三条 当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は、更改によって消滅する。
一 従前の給付の内容について重要な変更をするもの
二 従前の債務者が第三者と交替するもの
三 従前の債権者が第三者と交替するもの
(債務者の交替による更改)
第五百十四条 債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができる。この場合において、更改は、債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
2 債務者の交替による更改後の債務者は、更改前の債務者に対して求償権を取得しない。
(債権者の交替による更改)
第五百十五条 債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によってすることができる。
2 債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができない。
第五百十六条 削除
第五百十七条 削除
(更改後の債務への担保の移転)
第五百十八条 債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができる。ただし、第三者がこれを設定した場合には、その承諾を得なければならない。
2 前項の質権又は抵当権の移転は、あらかじめ又は同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならない。

(第三者のためにする契約)

第五百三十七条 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
(第三者の権利の確定)
第五百三十八条 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
(債務者の抗弁)
第五百三十九条 債務者は、第五百三十七条第一項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。

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